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    ゲニー

    ZL小説
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    POIPOI 15

    ゲニー

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    【現パロ/同棲ゾロル】
    ・ゾロルが猫を飼う話です
    ・やきもちルフィ
    ・恋人と猫のお世話が大変なゾロ氏
    ・ヌルいけど本番ヤってるのでご注意下さい
    ・べったーから移動しました

    #ゾロル
    zolu

     『ルフィと子猫と過ごす日々』



    「ニャーー!!!」
    「ニャーじゃねェよルフィ!!」

     今にも飛びかからんとしていた両者を止めたゾロは、何度目か解らないため息をつく。
     子猫と本気で喧嘩するルフィはすでに手も顔も引っかき傷だらけで、ゾロはなんだか落ち着かない。左頬の傷以外、ルフィに傷痕を作ってほしくないのかもしれない。
    「そいつを寄越せゾロ! 決着つけてやる!!」
    「いやいや、猫相手に本気になるな……」
    「だって! だってそいつゾロにばっか懐きやがって……! おれに喧嘩売ってるとしか思えねェ!! カリカリやったりしっこシート替えてんのおれだぞ!? この恩知らず!!」
     どーん。
     これがルフィの言い分である。
     世話をしている自分を差し置いて同居人に懐くとは何事か、と。
     けれどゾロはこう思っている。
     子猫が来たその日に懐いたのはゾロだったから、ルフィはゾロにヤキモチを妬いてるんだろうと……。

     一週間前、ルフィが子猫を預かってきた。
     近所のガキに少しの間だけ、と頼まれたらしいのだが、ゾロはそのガキを知らないし、もしかしたら体よく押しつけられたのではないか、と思っている。
     こいつは騙されやすいから、例え相手が子供だとしても。

    『ゾロ喜べ!! うちに子猫が来たぞ!!』

     あの日のルフィはとても嬉しそうだった。可愛い可愛いと頬擦りしては丸いほっぺを赤くして、幸せそうで。
     猫とルフィ、という組み合わせがこんなにも和む構図だと知らなかったゾロは、密かな衝撃を受けたというのに。

    「こらゴンベ!!」
     ゴンベというのが子猫の名だ。
    「あーもう〜、またゾロの背中にぶら下がってるよォ」
    「こいつおれの背中好きだよなァ」
    「母ちゃんだと思ってんのか?」
    「なんでだよ!」
    「なはははっ」
     ルフィの怒りが長く続かないのをこれ幸いと、ゾロは背中に子猫を背負ったまま傷だらけのルフィの腕を引いた。
     ん?と首を傾げる彼をソファの自分の隣へ座らせて、すっかりお馴染みになってしまった傷の手当てをしてやる。
    「あ、いいって。おれすぐ治るもん」
    「知ってっけど一応。猫の爪は毒持ってるっつーし」
     おれが落ち着かねェから、とは言わない。こいつを調子に乗せても何もいいことはない(これは教訓)。
    「ありがとなー。ゾロは猫の世話してるおれの世話する役だな」
    「なんだそりゃ、おれは猫以下か……」
    「んなわけねェじゃん。ゴンベが懐いてんのはゾロなんだぞ? あ、てことは一番下はおれか!?」
     貼られた絆創膏を撫で撫で、ルフィがあひゃひゃと笑った。ルフィは笑顔が一番よく似合う。
     ゾロは、首にぶら下がるように抱きついてきたルフィを軽々と抱きとめて、頬にすりすりしてくる同居人の黒髪を撫でた。
     同居人、と言うからにはシェアしているのだが、実情は同棲だ。
     高校のときお互い一目惚れして付き合い始め、2歳下のルフィの大学進学と共に同居を始め、その後ようやく体の関係になったので。
     付き合い始めて2年になるが、ゾロはこいつこそ猫だよなァ、と思っている。
     気分がノッたときだけ擦り寄ってきて、興味がなくなると放ったらかし。しなやかで柔らかくて抱くと気持ちよくて……と、これは物理の方か……(自重)。
     キスを強請ってきたルフィに応えながらたまにはおれの気持ちを味わえばいい、と意地の悪いことを考えているゾロだった。


     翌朝のことだった。
     ゾロにとってはちょっとした事件だった。

    「こらゴンベー!! お前またゾロ起こしたのか!? 日曜日のゾロはなァ、昼まで寝タローで夕方から酒飲んで夜中トレーニングしねェと月曜から使いモンになんねェんだぞ!?」
     休みの日ほど早朝起床のルフィよりずっと早い朝の4時に起こされたゾロの、その膝にのさばっているゴンベをルフィが抱っこして、ぷくっとほっぺを膨らませると睨み付けた。
    「待てルフィ、怒ってくれんのは嬉しいが、内容のおれがダメ人間じゃねェか」
    「違うんかよ」
    「ちが……ち……」
     と額を押さえ答えに窮しているゾロなどスルーで、ルフィとゴンベの朝の一戦が始まった。全く懲りる様子がない。
    「ニャー! ニャニャー!!」
    「だから! 猫になりきって喧嘩すんのやめろってルフィ!!」
     朝から生傷の絶えないコイビトで非常に困る。

    「だって!」
     またルフィのだってが始まった。
    「はいはい、世話してるのはルフィだよ」
    「だって! ゾロの膝はおれ専用なんだもん! おれずっと我慢してやってんだぞ!? もう無理!!」
    「……はァ?」
    「はァじゃねェ! ゾロなんかゴンベの言いなりのクセに」
    「言いなりじゃねェし……断じて。たかが猫だろうが」
    「こいつ来てからえっちしてねェじゃん」
    「おれらの間でこいつが寝てっから……」
    「ほら言いなり! ゴンベの言いなり!」
    「そ、そんなことねェ! つーか今おれが聞きてェのはそんなことじゃねェ!」
    「じゃあなんだ!」
    「お前、おれに妬いてたんじゃねェのか? ゴンベがおれに懐くから……」
    「おう、最初はな。でももう一週間だぞ? ゾロ取られて7日目……ううん、ホントは3日で無理だったんだ……でもおれは我慢した……おれスゲェ〜」
    「スゲェ……ってことはねェが」
    「ねェのか!?」
    「いやスゲェ。うんうんスゲェ」
    「テキトーに頷くな」
    「悪い、気づかなくて……」
     むすーっと唇を尖らせるルフィにゾロは素早くチュッとキスをして、
    「今日は出かけるぞルフィ」
    「昼寝はいいのか!?」
    「ビックリしすぎだろ!? いいんだよ、出かける。10時出発な」
    「お〜! お出かけ嬉しい! どこ行くんだ!?」
    「ペットショップだ。ゴンベ用のクッションを買いに行く。夜はそこで寝かせる!」
    「なるほどー!! それはいい手だ♪ そしたら今夜はえっちしような?」
    「………了解」
    「おれハラ減った〜」
     またころっとルフィの機嫌が直ったところで、とりあえずは朝飯を食べることにした。


     そんなこんなで、その夜──。

    「んっ、あ、あ……っ!」
    「大丈夫、か? ちっと久々だもんな……」
     普段からそんなに頻繁というわけではないのだが、ルフィはその辺の欲望にもとても素直な質なので、我慢なんかした日には何倍も溜まってそうな印象なのだ。
    「だ、だいじょ……ぶ、じゃ、ねェかも〜〜」
    「やっぱりか……」
     聞いたのが間違いだったかもしれない、ゾロに組み敷かれているルフィが突如ぐじぐじと泣き始め、正直ゾロはかなり参った。
     もうすぐハタチになろうって男が泣くな、といつもなら叱る場面だけれど、男を受け入れさせている時点でこれはゾロの我儘だと思っているので。
    「ちっと、じっとしてっから……」
    「う、うん、ごめんゾロ、えぐっ」
    「辛ェのか? どっか痛ェ?」
    「ぎ、ぎもぢいぃぃ」
    「……あ?」
    「久しぶりだから、す、すげ、感じ過ぎちまって……ひっく…っ」
    「なっ……! おま……! アホだろ!!」
    「あ、あほォ!? だってあんまりゾロ触れてなかったしチューも減ってたしゾロの免疫切れてたっていうかだから……あわっ!?」
     うっかり中でぐん、とデカくしてしまったゾロにルフィがビクリと体を震わせた。ゾロがチッと舌を打つ。ルフィの負担を減らしたつもりが、この体たらく。
     ホント昔っからルフィにゃ、ペース乱されっぱなしだぜ……。
     でも憎めない、やはり猫のようなヤツ。
    「ンニャー!?」
    「だから猫みてェな声出すなっつってんだろうが!!」
    「今のおれじゃねェぞ」
    「…………は? じゃあ、まさかゴン……イッ、テェーーッ!!」
    「ゾロ!?!?」
    「ゴンベが背中引っかきやがった……!」
    「えー!? ちょ、何やってんだよゴンベ! お前マカロンクッションの中で寝てたんじゃねェのか!? いっくらゾロの背中が好きでもこんな時に──」
    「違ェよルフィ、解った。そうじゃねェ」
    「はぁ? 何が……」
     ゾロがルームライトを少し明るくすると、ゾロの背中に乗っかっていたゴンベがゾロの背中をペシペシペシペシ!と高速猫パンチしているのが見えた。
    「ゴ、ゴンベ!? 何やってんだ??」
    「おれがルフィを泣かせたから……怒ってんだよ」
    「へ!? おれ!?」
    「ゴンベだってちゃんとお前が好きなんだ」
    「……ゴンベ……」
    「けど、いい加減痛ェから叩き落とす」
     ベシ、と容赦なくゾロがゴンベをクッションへ強制送還。
     その後、仕方ないので寝室にゴンベを閉じ込め、リビングのソファで致したわけだが、翌朝のルフィの機嫌はこれまでになく悪かった。
     てっきりゴンベにヤキモチを妬かせてニコニコかと思ったのに……。
     で、ご機嫌斜めの理由を聞くと。

    「だって」
    「ハイだって?」
    「ゾロのキレーな背中ひっかくのはおれだけでいいんだもん……」
     ぶちぶちぶち……とこんなアホ可愛い理由を打ち明けられたら、無意味に全面降参するしかないゾロで。
    「ズリィなァ……猫って」
     可愛い容姿と仕種でもって我儘を言っても何をしても、許されてしまう我が家の王様。
     尽くして尽くして、それでも1分後には見向きすらされなくなったとしても──


     実に愛すべき存在である。


    「よしルフィ、背中を引っかかれねェ猫グッズ買いに行くぞ」
    「そんなのあんのかァ? ゾロはおんもしれェな〜」
    「だったらずっと笑ってろよ」
    「うんうん笑ってる」
    「お前こそテキトーに頷くな」
    「もう〜、ゾロ大好き過ぎておれ困っちゃうよな〜〜」
    「………」

     案外、猫は頭の良い動物だ。



     〜追記(ゾロ談)〜

     数日後、チムニーと名乗る少女がゴンベを迎えに来てこう言った。
    『ココロばーちゃんがやっとゴンベ飼うの許してくれた!』
     そしてゴンベを嬉しそうに抱いて、連れて帰った。
     我が家から猫がいなくなった。
     ルフィは猫真似をしなくなった。
     寂しくてルフィは泣くんじゃないかとおれは思ってたんだが、意外にもケロッとしていて、しばらくの間おれの背中に貼り付いて離れなかった。
     多分、寂しく思っていたのはおれの方で、ルフィはそんなおれのために、ゴンベの代わりをしてくれてたんだと思う。



    (おわり)

    お友達のたてやさんへの捧げ物でした!
    本当はゴンベは兎だけど、パラレルだから許してね☆
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