無題嫌な音がした
金属が甲高い音を立てて弾かれた直後、何かが肉を抉って突き刺さる。
聞きたくなかった。こんな音
それもライムジュースの身体から
見るからに深手を負ったライムは、俺の方を見て力なく笑い、膝をついた
(部下or幹部(パンチ)を庇ったライムジュース)
(当たりどころ?が悪く目を覚まさない)
(やっと目が覚めたが、後遺症で足が動かない⇒足が使いものにならない、歩けない、麻痺)
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
ライムジュースが目覚めたというのに、赤髪海賊団の幹部達は一段と静かだった。
誰も医務室には近づこうとしなかった。
(ライムに足がもう動かないことを伝えるホンゴウ。)
荒れるかと思ったが
ライムジュースは見たことがないほど落ち着いていて
そうか… とポツリとこぼした。
「俺はもう、跳べないんだな」
そう言って力なく笑った。
サングラスで目元は見えなかった。
俺はライムジュースの身体を強く掻き抱いた 。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
ライムジュースの足が動かなくなって半年以上が経った。
以前の子供のような笑顔を見せることは無くなった。
ライムジュースは作り笑いが上手くなったが
最近はそれすらも見せなくなってしまった。
この時から嫌な予感はしていた
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
(戦闘員として、足を駆使して戦ってきたライムジュース)
(それが突然使い物にならなくなれば、俺はどうやって存在意義を示せばよかったんだ)
(自分の足で立てないことが、どれほど足手まといなのかを自分が1番痛感した)
(敵からは恰好の的となり、自分を守るために仲間が傷付く、耐えられるわけがなかった)
(車椅子で生活する日々)
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
波の音だけが聞こえる
夜明けまでまだ遠い
月も出ていない闇夜
甲板にはシャンクス
シャンクスの近くで車椅子の音が止まる
「お頭」
「………ライムか」
「お頭は俺が今日ここに来るって分かっていたんだろ」
「……」
「感が鋭いもんなぁ、あんたは」
「ライム、俺は」
「なぁ、お頭。今日は久しぶりに何も見えない真っ黒な夜空だなぁ」
「俺ァこの空が1番好きなんだよ」
「今日がいいなぁ、うん、今日だな」
「なぁ、シャンクス。
俺を殺してくれよ」
・
・
・
「ライムジュース、俺はお前を忘れない」
車椅子に乗せたまま、ライムジュースの背中を押す。
ドボンッと、海に何かが落ちる音が
静まり返った船に響いた。
どっちが空の色なのか海の色なのか分からない。境目のない黒だけが、シャンクスの視界に残った
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
ライムジュースが居なくなった船、1人の船医の、悲痛な叫び声で船員達は目を覚ました。
海へと飛び込もうとするホンゴウを、ガブが止めようとしたが、
ベックがガブを制した
「好きにさせてやれ」
・
・
・
深く、深く ホンゴウは潜る
キラリと光るものが見えた
岩の間に挟まった
ライムジュースの車椅子
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
(シャンクスが最後にライムジュースと交わした会話をホンゴウに伝える)
「ライムが、闇夜が好き…?
違う…あいつが、ライムジュースが好きなのは…
『ホンゴウ、俺この空すげーすき。』
『オレンジと紫が混ざって、すげー綺麗だよな…お前もそう思うだろ?』
『俺さ、多分死ぬまで忘れねーよ。お前と、お頭達と見たこの空色を』
甲板から眺める、マジックアワーだ」