キャンプ飯は下準備が大事だ。
食べる事を目的としていく時は特に気を付けている。
ほんの一手間で現地でどれほど楽に美味しいものが食べられることか……!
シャルルマーニュは過去の失敗を思い出して気合を入れ直す。
自分一人ならそんな失敗も笑ってすませられるけれど、今回はそんなわけにはいかない。
半一目惚れ状態で気になっている相手、立香とのキャンプ!
ぎこちない手つきながらひとりで頑張っているのを見てこっそり応援していたら、色々あって手を貸すことになり、最終的に一緒に食事もするくらい仲良くなった。
連絡先の交換をして何度か連絡を取っているうちに、自分が立香に惹かれていた事を自覚した。
気付いてからは連絡一つにも悩むようになり、カッコ良く、でもキメすぎないように自然に、なんてどんどん迷走しそうになりながらやっと取り付けた約束。
OKを貰えた時は一人ガッツポーズを決めて、喜びの声を上げた。うるさいと怒鳴りこまれたりもした。
さて、明日のための下準備だ。
メインは立香が作ってくれるようになっている。
シャルルが用意するのはちょっとした軽食だ。
少し悩んで、おにぎりでいいだろうと決めた。
まあ、ただのおにぎりではつまらないし、と少し手をくわえることにする。
冷蔵庫を開けて調味料と大葉を取り出す。
手早く、小腹が空いた時にちょっと食べられるような、それでいて簡単すぎないもの。
贅沢な悩みだと自分でも思ったが、何だってスマートにこなしてカッコ良いと思ってもらいたいのだ。
特に気を引きたい相手ならなおさらだ。いい所を見せて好きになって欲しい。
そのための準備なら手を抜いたり、怠るわけにはいかない。
いつも以上に丁寧に、ただ大葉を刻むだけの事すら気合が入ってしまう。
まあ、それが終われば味噌やらみりんやらと混ぜ合わせるだけだけれど。
「あ、そう言えばあのあたり温泉とかあったよな」
キャンプの事しか考えていなかったが、折角だし一緒に色々観光するのもいい。
調べるだけ調べておこう。
誘って了解を得られればちょっとだけでも長く一緒にいる時間が作れる。
好きなものは何だろうか。どんなことなら誘われてくれるだろうか。
丁寧な準備の裏側の下心は見せないように。
でも、少しだけ引っかかってくれないだろうかと罠を張ることにした。