テーブルをはさんだ向かいの椅子に座ってしゃりしゃりと白い氷の粒が落ちていくのをじっと眺めているシャルルが微笑ましくて、実家に帰った時にこれを持って帰ってきた自分をこっそり褒めた。
倉庫の片づけをしていたら出てきた荷物があるから必要なものがあるか見て欲しい。そう言われて先週末は実家に戻っていた。
姉は先に、たまたま休みだった平日に帰ってきて既に荷物を確認済。後は自分が見てしまえば、残ったものはすべて捨ててしまうと言って両親にこの場を任された。
庭には段ボール箱が一つ、二つ、三つ……片手では足りない程に積まれているうえに、その横には化粧箱に入ったままの子供用のおもちゃや古いゲームなどもいくつか。
とりあえず一番手前にあった段ボールを開けてみれば、もう使わないであろう小学校の頃の教科書とノートがぎっしり詰まっている。こんなものまで残っていたのかと、自分の家の収納が足りない理由の一部を理解した気がした。
適当に中を見る限り、教科書やノート、プリントなどもう必要のない物ばかりなのは間違いない。一枚一枚確認していたのでは何日かかるか分からない、もしかしたら他の物も混じっているかもしれないけれど諦める事にしよう。
そう考えて、段ボールのふたを閉じると次の箱を開ける。今度は子供の頃に遊んだヒーローの変身セットや魔法少女のステッキのような玩具が雑に詰め込まれていた。懐かしくはあるけれど、取っておいたところで使う事はもうないものだ。これも捨てると適当に中を探ってからふたを閉じた。
全ての段ボールを同じように確認して、次は別に積まれていた箱を見る。大体どれも必要ないものだったけれど、そのうちの一つが気になった。
かき氷機。
箱はきれいでやけたり色褪せたりもない。開けてみれば商品はビニール袋の中に入ったままで、出された様子もない。
他に気になる物もないので、その箱だけ持って家の中に入る。母親もこんなものあったかしらと首をひねる程度には忘れられていたようだ。
一応開けて中身が問題ないのを確認して、これだけ貰って帰ることにした。
持って帰った理由は、まあ、恋人が喜びそうだ、だけだ。
家に帰って氷を準備して、食後のデザートついでに作ってみると案の定氷が削られる様子を楽しそうに眺めている。これが見れただけでもう満足だ。
自然に込み上げてくる喜びに浮かれていると、「あ」とシャルルが声を上げた。驚いて手が止まり、シャルルが見ていた氷の削られて出てくる部分を見ると、器の氷の山が崩れて大半を外に零していた。
「うわ、やりすぎた」
恋人の笑顔に見惚れて、なんて理由で失敗したのかと思うと少し恥ずかしくなる。
器をどけて零れた氷を捨てていると、いつの間にかシャルルは氷みつをかけて作ったかき氷を食べていた。
いやまあ、器に残ったものなら食べても問題はないのだけれど、どうせならちゃんと山になったかき氷を食べさせてあげたかった。
それでもやっぱりおいしそうに食べている姿を見ると、まあいいかと思ってしまう。
好きってそんなものだよねと考えている俺の横で、シャルルがアイスクリーム頭痛に苦しみ始めた。