「終わらない」
先日攻略した特異点についてのレポートをまとめているのだがなかなか終わらない。
いつも通りのとんちきさで、ただ流れを書いただけでは何がどういうことなのか分からず、補足として色々追加しているとあれも必要なんじゃないか、これもないと話が通じないんじゃないかと気になり始めて止め時が分からなくなった。
現在は特異点での出来事の真ん中あたりまで来ている。
ここから先はどうしようか。
今までもう十分に詳しく書いたから補足などなくても分かるのではないか。
いや、あの現実を三回転くらいさせないと出てこないような解決策を補足なしで理解しろと言うのは厳しいのではないか。
両方の考えが頭をぐるぐると回って、疲れのせいか早く終わらせたくて前者に結論が傾きつつある。
もういいかな、とタブレットを手放そうとした時、向かっていたテーブルにカチャンと音を立ててコーヒーが置かれた。
「……シャルル?」
「お疲れ、マスター。レポートは進んでるかい?」
ずっとレポートと格闘しているのを見て持ってきてくれたらしい。
シャルルは何故かこういうタイミングを見るのがうまい。
スマートに自分にできる事をやってサポートしてくれる。
そうしてこんな風に気遣われると、期待に応えなければ、カッコ良くあらねばと気合を入れ直したくなる。
さっきまでもう適当でいいやと思っていたレポートもきちんと仕上げなければと思ってしまうのだ。
「あと半分くらいかな、補足入れるだけだからあとちょっとだよ」
「そうか、何かできる事があったらいってくれよ」
そう言うと軽く頭を撫でて離れて行った。
子供扱いされていると思うけれど、それでもこんな他愛もない接触が嬉しい。
にやける顔を隠しながらあと半分を急いで書き切ってしまおうと決意した。