Recent Search
    Create an account to secretly follow the author.
    Sign Up, Sign In

    mina

    @mina_bw18

    CPはブレトワ
    20220831〜書きたいままに
    ブレリンの世界にトワリンが来てる
    R18は18歳未満の方は見ないでください

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 🌿 🐺
    POIPOI 30

    mina

    ☆quiet follow

    ブレトワ/トワさんに嫉妬してほしくて書いた話

    ------


    俺が嫉妬なんて、するはずがない


    「トワさん」
    「いやだ」
    「オレ、まだなにも言ってないんですけど」
     きょうはいつもより早くハテノ村の自宅に戻り、俺はブレの家の片付けをしていた。乱雑に置かれた武器の整理、食材の管理、床の掃除など。いつもしているわけではない。じっとしていても落ち着かなくて、身体を動かしたかったからだ。
    「きょうのトワさん、いつもとちょっと違う?」
    「そうか? いつもと一緒だろ」
     たまにしているから、珍しい事ではない。なのにブレは、俺を覗き込んでくる。俺の事を尋ねられたが、変わりないと思う。それより、せっかく早く帰ってきたんだ。俺に構わず、身体を休ませてやればいいのに。不思議そうな表情で、なにを思っているんだ。
    「うーん、抱きしてもいい?」
    「いいけど」
    「よかった、ありがとう」
     首を傾げて唸った後、唐突に抱きしめたいと言われた。脈絡がないのは今更なので気にならない。ここが家の中なので了承すれば、即座に腰に腕を回された。されるがままもあれなので、俺もブレの背中に腕を伸ばしてやる。それがよかったのか、ぎゅっと力を込められた。
     触れ合う身体は温かく、ざわついていた心が落ち着いていく気がする。なぜかは分からないが。
    「トワさん、お願いがあるんだけど」
    「それは聞かない」
     ブレは時々困ったお願いをしてくる。甘いと思いつつ、大抵は聞いてやっている。断った後のこいつが寂しそうで、ほっとけなくなるからだ。それでも、きょうは叶えてやる気にならなくて、内容も聞かずに断った。
    「きょうはもう、狼の姿にはならない」
    「なんでわかったの……」
    「時々言うから、そんな気がしたんだよ」
     家の中で抱きついてきた後、されるお願いに予想を立てたら当たったようだ。
     がばりと顔を上げ、ブレの驚きから大きくなった瞳と視線が合った。それは次第に細められ、にこりと緩んだ表情を浮かべている。断ったのに喜んでるのは、当てたからなのか。
    「少しだけだから、ダメ?」
     あ、こいつ全然諦めてなかった。唇を尖らせ、可愛らしくねだるな。そうすれば、俺が聞くと思ってるのか。
     俺はくすぐったいだけだが、ブレは狼姿の俺を撫でるのが好きらしい。お腹に顔を擦り付けられることもあるが、あれは撫でるに入るのか。いや、考えるのはよそう。ふわふわでもふもふで、手触りがいいとか何とか言っていた。
     言葉通りに少しだとしても、きょうは頷く気にならない。だってそうだろう。
    「きょうは十分、撫でてただろ。だからいやだ」
    「えっ?」
     意外そうな声を上げるな。撫でてただろうが、立ち寄った馬宿の犬を。
     俺は狼姿では馬宿協会の者や、他の客に怖がられるので、隅に座って待っていた。その間、犬のはしゃぐ声があまりにうるさくて目を向ければ、ブレが一緒にいた。急いで済ませてくると言っていたのに、懐く犬にリンゴを与えて構っていたんだ。しかも食べ終わるまで、触って撫でていただろうが。
     覚えてないのかよ、と言い掛けて慌てて口を噤んだ。ちょっと待て。俺はいま、何を考えていた。
    「トワさん?」
    「なんでもない、気にするな」
    「その顔、なんでもないって顔じゃないんだけど」
     俺の気が立っていたのも、ブレのお願いを聞く耳持たなかったのも、原因はこれなのか。繋がって導き出された答えに、いたたまれない。理由が恥ずかしすぎて、尖った耳の先まで顔が熱い。気づかないでくれという俺の願いも虚しく、逃さないとばかりに抱きしめる力が強くなる。
     物珍しそうに俺を見上げるな。構わなくていいと言っているのに、首を傾げて考えるな。
    「オレがトワさんを撫でたの、待っててくれたお礼に頭を撫でたくらいだよ」
    「そうだな。だからもう気にしなくていい」
    「だって覚えがないから、気になる」
     どうしてごまかされてくれないんだ。顔に集まった熱のせいなら、さっさと引いてくれ。
    「オレが撫でたのは、馬宿の犬くらいだけど」
     なのに俺の願いは聞き入れられず、正解に近づいている音がする。これはブレに答えを当てられるより、自分からバラした方が楽になれるのだろうか。どちらにしろ恥ずかしいが、少しでも減らせるなら減らしたい。なのに選びたくない選択肢しかないので、心が決まらない。
     そうして俺が迷っていると、ブレの表情がまたたく間に明るくなっていく。にんまりと笑うな、くそ。憎らしいほどの笑顔を向けられる。これは答えに辿り着かれたのだろう、大きなため息を吐き出して肩を落とした。
    「トワさん、オレが馬宿のーー」
    「ああ、そうだよ。あの犬、ブレのこと好き好きうるさかったんだよ。それにお前も、満更でもない感じでいちゃついてただろ」
     楽しそうな声色で名を呼ぶから、これ以上よけいな事は言うなとばかりに白状した。皮を一枚ずつ剥がすように、ネチネチと暴かれては俺の身がもたない。
     俺はブレが他の犬と仲良くしていたのが気に入らなかった。だから機嫌が悪くなり、狼姿になるのを拒んだ。
     言葉にするとよけいに恥ずかしい。しかも道中や馬宿ですれ違った女性ではなく、犬が相手なのだから。俺のブレに対し、好きだ好きだとうるさく吠える様に、苛立ちを覚えたなんて。苛立ったのが騒がしいだけならよかったのに。
     動物の声が聞こえるのは便利だが、何でも拾うのは考えものだ。
    「オレはいちゃつくなら、トワさんがいい」
     満面の笑みを浮かべ、ブレは俺が喜ぶ言葉をくれる。
    「だってオレが好きなのは、トワさんだし」
     視線はまだ合わせたくないので、思い切り髪を掻き混ぜて返事にする。硬くて、決して触り心地がいいとは言えないが、ブレの髪だからか触っていたくなる。
    「ト〜ワさん」
    「なんだよ」
    「ん、なんでもない」
     用がないなら呼ぶな。と思いつつ、この意味のないやりとりに付き合うのも悪くない。いまのブレの頭の中は、俺のことだけで埋まってるだろうから。
     しかし一向に腕の力が弱まる気配がしない。ブレは相当浮かれているが、そうさせたのが俺なら、まあいいか。俺は恥ずかしいので、早く記憶から消してほしい。この件で弄らないように、後で忘れず念を押しておこう。
    「ねえ、狼姿のトワさんといちゃついていいなら、するよ」
    「なんのためにするんだよ」
    「馬宿の犬に、オレはこの狼さんが好きなんだよって見せるため」
     ブレの場合、本気でやりそうだと思ったが、俺の口は止める言葉を紡がない。馬鹿げた提案に、俺たちは顔を見合わせて吹き出した。


    ------
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    🐺✋🐺✋🐺✋🐺✋🐺✋🐺✋🐺💞🐺💞🐺💞🐺💞🐺💞
    Let's send reactions!
    Replies from the creator