不意打ちのキス、ごめん 特務司書が雑誌を読んでいると5月23日はキスの日だと書かれていた。『普段伝えられない思いをキスの位置で表現してはいかがでしょうか』という文言が雑誌内のコラムに書かれており司書は神妙な面持ちになって考えていた。
「(キスか……。私がキスしたい人と思える人はあの人しかいない……)」
心を許せる大切な人……、それは司書にとっては中里介山であった。
キスの意味を雑誌で学び中里にキスしたらどんな反応するかという興味もありさっそく実行しようとした。
その日の夕方
司書が中里の部屋を訪れたが、不在であった。どこにいるんだろうも捜索していると、談話室で一人で中里はソファーに腰掛けて蓄音機でレコードを聞いていた。
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