『毛布』 『照らす』 『キッチン』寒気に目を覚ますとまだ朝の5時だった。今日は休日なので二度寝ができそうだとグルスにほとんどとられていた毛布をかけなおそうとして隣に眠るその寝顔が目に入った。静かに眠る彼を見ているとあの生意気な台詞ばかりいう普段の彼と同一人物とは考え難い。王子の名に負けず意外と整っている顔をつついてやる。
「んん……」
少し眉根を寄せているのが可愛らしくみえるのは恋人の欲目というやつだろう。それからふあふあの髪にもふれてみる。あの特徴的な帽子に隠されているせいでわかりにくいがグルスの髪の毛はふあふあで触り心地がいいのだ。クセになる。特にドライヤー後が極上のふあふあなのだがそれを知るのはきっと私くらいだろう。ちょっとした特権だ。
「なんだよまたやってたのか」
「なんだもうだめなの」
「いいけどよォ、そんなに楽しいか?」
「たのしいよ」
「おれはそれよりも二度寝の方が楽しいと思うぜ」
「そうだった」
グルスの言葉にただ今の時刻を思い出す。
「じゃあ二度寝しよっか」
「ん。そーしようぜ」
どちらからともなく、おやすみと言い合って私たちは毛布にくるまった。
それから数時間後、顔を照らす日の光で目を覚ました。二度寝したかいあってたっぷり眠れた感覚がある。今日はいい一日になるかもしれないななんて予感さえし始めた。隣には一緒に寝たはずの彼の姿がない。その代わりにキッチンから小気味よい音が響いてきている。あれで器用なものでゴーレムちゃんたちを活用しながら器用にいくつもの料理をこなす王子を私はもう何べんも見ている。きっと今日もゴーレムちゃんたちと朝食づくりをしてくれているにちがいない。私も彼らを手伝わねば、そう張り切ってベッドから抜け出した。