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    aoino_a0

    手を動かせ

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    POIPOI 15

    aoino_a0

    MOURNING筆が乗ってしまったので書いた地雷。あり得ない時空のあり得ない未来のあり得ない話。
    うちの新司令×うちの新3号。名前があるので注意。
    朝ご飯を食べる「よしっ」
     魚焼きグリルで焼いただけのトースト。二つ一気に割り入れてフライ返しで切り分けた目玉焼き。一袋全部フライパンに放り込んだウィンナー。冷凍野菜とコンソメキューブを煮ただけの野菜スープ。全てを器に盛り終えたところで思わず声が漏れる。大したものではないが、たまに作るには十分な料理である。二往復して運んで、折りたたみテーブルの上に並べていく。ちゃちい机は食器を四つ置いただけでギチギチになってしまった。
    「……シャワーありがと」
     金属の小さな音とふて腐れたような小さな声。視線をやると、水場に続くドアの向こう側から黄色い頭が覗いていた。ぱちりとあった青い目はすぐにふぃと逸れる。シャワーを終えて帰ってきたコイビトは、わざとらしく背中を向けながら部屋に入って戸を閉め、俯きがちに歩んでテーブルの前に座った。いつも通り――昨晩の情事が忘れられず、昨晩の自分の痴態が忘れられず、それでも普段通りに過ごさねばならないと思い込んでいる、いつまで経っても変わらない姿である。可愛らしくて仕方が無い。
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    aoino_a0

    DONEパトロール帰りのシェリーさんとDDさんの話。

    『OZONEのジャケの話を』というリクエストをいただき仕上げさせていただきました。この二人の関係性が好きなので楽しく書けました。エアスケブご依頼ありがとうございました。
    走り行く街街 ガラスの向こう側に街並みが流れゆく。広いネメシスの世界は、普段よりもずっと早足に去っていった。
     抱えた紙袋に手を入れ、パッケージに入ったフライドポテトを探し出す。高速道路に乗る直前に買ったそれは少しだけ萎びていた。ふにゃりと柔らかなポテトを一本つまみ、口へと運ぶ。なめらかな白い歯で長い黄色を噛み切ると、すぐさま塩気と油気が口内に広がった。食べ慣れた味をどんどんと口に放り込みながら、シェリーは身体のすぐ隣、車の窓の外を眺める。透明なガラス越しの街並みは、相変わらず速度を出して後方へと流れていった。
     視線を街から運転席へと移す。ちらりと見た横顔は落ち着いたものだ。合成革のカバーで保護されたハンドルを操作する手付きはブレなど無い。スラリとした長い足はヒールの高い窮屈な靴に包まれているというのにアクセルペダルを器用に操っている。外装に反して古い型式のメーターは法定速度内であることを静かに示していた。安全運転そのものだ。開け放した窓に腕をかけ、片手でハンドルを操る姿勢は『安全』の文字には程遠いが。
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    aoino_a0

    DONEかなりの文字数を投稿できるようになったと聞いたので令和三年三月四日に発行した同人誌『おにいちゃん!!』より全文掲載。4.6万字。
    ニアノアちゃんが男性陣のことを『オニイチャン』と呼んで回っていたずらする話。呼称等GW参照捏造過多。
    おにいちゃんat.高等部教室棟廊下

     ぱたり、ぱたり、と靴底が力無く床を打つ音が空間に響いては消えていく。放課後、人気の無い広い廊下では、その音がいやに大きく聞こえた。
     靴音の軽さに反し、その主の足取りは非常に重い。普段は走るなと窘められるほど軽快なそれは、今はまるで枷でも括り付けられているかのように鈍いものだ。いつもの倍近くの時間をかけ、少年は一歩一歩廊下を進む。はぁ、と足取りと同じほど重苦しい溜め息が磨かれた床に落ちて消えた。
     行きたくねぇ、と雷刀は心の内で叫ぶ。音になるはずなどない慟哭は、ただ少年の胸を痛めつけるだけだ。
     今日の放課後、追試対象者限定の補習授業が行われる。追試の常習犯として教師間で有名な自分は、もちろん参加対象者だ。絶対参加、うっかり忘れようものなら後日説教と追加の個人補習が待っているのだから、対象者は参加する他ない。完全に記憶から抜け落ちうっかり参加し忘れてしまった回、一度だけ受けた個人補習は、厳しいと言う言葉では済まされないほど苛烈なものだったのだから尚更だ。あんなもん二度と受けたくねぇ、と経験者は口を揃えて言う。あれをもう一度受ける気概など、勉学を厭う少年には無い。与えられた選択肢は一つしかなかった。
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