愉快な本丸日記「おぁようございま〜…」
「おはようございますだろう!!!!」
「んぎゃぁ!!!!」
いつもみたいに居間に入ろうとした瞬間ものすごい大きな声が耳にクリティカルヒットした。
声の主は先日来たばかりの大包平である。
身長がかなりあるため居間で仁王立ちされるとめっちゃ圧力を感じる。
「す、すみませんおはようございます!!」
「それでいい!!おはようございます!!!」
私は彼が来るまで、なんとなーく怖いな…という印象を抱いていたのだけど(先に来ていた鶯丸からは、面白い奴だと聞いていたけども)こういう礼儀正しいところは凄く好感が持てると思う。
「主さん、おはよう!朝ごはん美味しいよ〜!」
大包平の近くで粟田口のみんなが朝ごはんを囲んでおり、乱ちゃんがこっちこっちと手を振っている。
招かれるままに粟田口朝食会に混ざると、前田くんや平野くんが私の分のご飯とお味噌汁をよそってくれる。
「お待たせ致しました。熱いので、お気をつけて」
「うん!ありがとう前田くん、平野くん!いただきます!!」
手をきちんと合わせて大きな声でそう言うと、向かいでその様子を見ていた大包平が大きくひとつ頷いた。
「…主といる時の大包平はいつにも増して面白いな」
「……え?そうなの?」
仕事を終わらせて、茜色に空が染まり始めた頃。
鶯丸がお茶セットを持って執務室に顔を出したので、縁側でお茶とお菓子を楽しんでいると、ふと鶯丸はそんなことをぼやいた。
「あぁ、あいつは元から真面目な性格だが…主に対しては特に厳しいだろう?」
手渡されたせんべいを咀嚼しながら考える。
そう言われてみれば、顕現した時にやっぱり自分より大きな体の男性を前にするとどうにも緊張してしまって…挙動不審になってしまった私は、シャキッとしろと怒られた気がする。
「ふん、ほうはも」
「悪い奴ではないんだ。主も分かってるだろうから心配はしていないが…」
思ったより一気に頬張りすぎてまともに喋れないので、鶯丸の話を聞きながらお茶を飲んでせんべいを流し込んだ。
「うん、分かってるよ。大包平の言うことは尤もだもん」
「これは俺の憶測だが、大包平は主のことを好いている」
思わずお茶を吹き出しそうになった。危ない
「すっ…好………?!」
「…ふふっ、俺が言ったのは己の主としてだが…そうだな、そういう可能性も無くはないだろう。」
何やら楽しそうな表情で鶯丸はお茶を啜っている。あ、これなんか私がひとりで恥ずかしい思いさせられてる
「……んで?」
「あぁ、だから主には何時でも自信を持って前を向いていてほしいんだろう。…私情もあるのかもしれないがな」
思い返せば、大包平はいつも私のことを正しい方へ導いてくれていた。実は心を鬼にして怒ってたり…するのかも?
「んー、そうだね。確かにいつも私のためになることを言ってくれてる訳だし…」
「……どうやら俺が口を出すまでもなかったようだな。」
ふ、と笑うと鶯丸は私が食べていたのと同じせんべいに手を伸ばした。
「おい!!鶯丸!!まもなく夕餉の時間だと言うのに間食などッ!!」
「む、まずいな。主、口を開けてくれ」
「え?!何?!」
「食べてしまえばこちらのものだ」
「ちょっむごっ」
あぁ、もうさっきまでの真面目な感じはどこへ行っちゃったんだか。
でも、これが私の愉快な本丸の日常です。
このあと、大包平に鶯丸と二人でお説教コースを受けたのはここだけの話。