いちさに丑の刻。虫の鳴く声と、生ぬるい風が少しだけ草木を揺らす音だけが存在する廊下を静かに歩く。
執務室を抜けて目的の部屋の前に着くと、ひとつ大きく息を吐いて襖をゆっくりと開けた。1人にしては少し大きい部屋の真ん中で、私の想い人は小さな寝息を立てていた。
「…ぐっすりと眠っておられるようですね」
その声に反応するかのように、主は私のいる方へ寝返りをうった。その際に少し緩んだ寝巻きの隙間から、主の控えめながら形の良い胸が覗いて無意識に唾を飲み込んだ。
「あぁ、寝汗が…今お拭き致しましょう」
用意してきた手ぬぐいを桶の少し冷えた水に浸して固く絞り、じんわりと汗の滲んでいる主の額を優しく撫でる。
気持ちがいいのか、眉間に寄っていた皺が消えて穏やかな表情を浮かべている。
顔の次は腕、手の先、首と主を起こさないように優しく拭き進めて行くと
「綺麗、です」
先程から覗いている胸につい目が奪われてしまう。
主は私のことを本当の兄のように思っているのか、その純粋な瞳から読み取れる私に対する感情は尊敬や家族への愛情のような綺麗なものしかないようで。
私の中に渦巻く主を独占したい、主に愛されたい、その柔らかな肌に触れて自分のものだと印をつけたい…そんな欲に塗れたような感情なんて持ち合わせていないのだろう。
そんな綺麗な彼女に触れていると、浄化されるどころか抑え込んでいた欲はふつふつと膨れ上がる一方で
「…これも、主の為ですので」
静まり返った部屋で自分にそう言い聞かせて、ゆっくりと着物の隙間から手ぬぐいと手を滑り込ませる。
胸の下のラインをなぞりながら手を動かすと、動く手に合わせてたぷりと主の胸は形を変える。
その魅惑的な光景は私には刺激の強い毒で。
しかしその毒のもたらす背徳感すらも今の私には興奮を助長させるものにしかならず、その手を止めることが出来なかった。
「ぁあ、お許しください、お許しください主」
幾らかの時間の後、主の服から引いた手で私は己のズボンを下ろし、窮屈そうになっていた私自身を晒した。
綺麗な主の顔とすぐ横にて存在を主張する私のそれの異常な光景に思わず息を飲んだ。もはや美しさすら感じられるような混乱している頭を振り、主の右手をそっと取り私の手で包みながら私自身を握る。
その瞬間だけで意識が飛びそうになった。
主の手が今、私のモノに触れている。あの純粋無垢な女主人の手が、私に。
上がる息を必死に殺してゆっくりそのまま上下に手を動かす。女性特有の柔らかい肌で包まれているという事実だけで何度も欲を吐き出してしまいそうになった。
「ふ…っ、ぅ、…ぁ…っは…ぁ……ぅっ……はぁっ……!!」
手を動かす速さは一定を保っているが、心拍はどんどん加速していく。
何かがせり上がるような感覚に下唇を噛み、それでも手を動かし続ける。
「っう…………っ!!!」
主の綺麗な黒い髪の横に白濁が飛び散る。
美しい黒と欲望の白のコントラストになんとも言えない感情を抱いた。
「………すみません、主」
謝罪の言葉を口にしながら、確かに私は満足感を覚えていた。何も知らないいたいけな少女の手が私を慰めたというその事実がどうしようもなく私の心を煽る。
まるで麻薬のように、あの光景は私の心を掴んで離さなかった。