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    tis_kri_snw

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    tis_kri_snw

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    麿さに
    前書いた装丁カフェのネタ。
    色々勢いで書いたのでなんでも許せる人向け

    巡る星「本日はふたご座流星群の極大日となります!近年稀に見る好条件とのことですが___」
    つけっぱなしのテレビから女性アナウンサーの陽気な声が聞こえてきておもむろに顔を上げると三大流星群の一つであるふたご座流星群の話題と共に天気予報が流れていた。
    「もうそんな時期か…年末もすぐだなぁ」
    カレンダーに目をやるともう12月も半ばに差し掛かっている。そろそろ大掃除を始めないと年内に終わらないかもしれないとぼんやり考えていると部屋の外から聞きなれた声が聞こえてきた
    「今帰ったよ、開けていいかな?」
    どうやら遠征から帰還したようだ。いいよーと間延びした声で返事をすると静かに襖が開いて清麿が顔を見せた
    「おかえり清麿!お疲れ様。」
    「ただいま。万事滞りなく終わったよ。」
    今回の遠征は長期だったからみんな大変だったと思うけど清麿ならしっかりまとめてくれただろう
    「外寒かったでしょう?中に入っていいよ?」
    なんならコタツにも入ればいいのにと思うが清麿の困ったような笑顔に言葉は音にならずに消えた
    「ひとまず報告だけしに来たんだ。少し着替えたいからね。後ほどまた来るよ」
    そう言って彼は静かに襖を閉めた

    「…改めて、ただいま。」
    「うん、おかえり。おいで?みかんあるよ」
    内番着に着替えて私の部屋に戻ってきた清麿をこたつに招くと彼は少し戸惑いながらもこたつに入ってきた
    「今回の遠征も大変だったでしょう?」
    「いや、前回よりもスムーズに予定をこなせたよ。皆日々成長しているからね。」
    そうそう、出発して直ぐに水心子がね…と口を開いた清麿はそこで言葉を止めてテレビをじっと見つめた
    「?どうしたの清麿」
    「流星群…?というのは、さっき君がみていた時も話されていたね。」
    清麿の視線の先ではふたご座のイラストを前に放射点の説明をするアナウンサーの姿。
    「あぁ、そうだね。これは三大流星群って言って毎年決まった時期に見える有名な流れ星が見えやすい時期、というか…」
    理解していたつもりでいたが、いざ噛み砕いて説明しようとすると難しい。自分の知識の浅さが恨めしくなる
    「流れ星か。いいね、ここからでも見えるのかな」
    「…どうなんだろう。」
    審神者になってしばらく経つけど、本丸上の空が日本と同じなのかは考えたこともなかった。
    「なら、一緒に見てみようか」


    「清麿、こっちこっち」
    「…ここはいいね、特等席だ」
    私が用意した観測場所は私の部屋の近くの縁側。座り続けてもいいように座椅子と、防寒用の毛布。あと急須に暖かいお茶も用意した。
    「どのくらい見ていれば見れるのかな」
    「それは分からないなぁ。でもきっと見れると思うよ。」
    星は気まぐれだ。私たちができることなんてせめてお茶でも飲んで体を温めながらゆっくりその時を待つことだけ
    「清麿、どうぞ。」
    「ありがとう。…うん、美味しいね」
    ふぅ、と湯のみに白い息を吹きかける清麿は空を彩る星に負けないくらい美しかった
    「…どうかしたかな?」
    「あっ、いや、何も無いよ」
    あからさまに動揺しちゃった。清麿に見とれてました!なんて言えなくて誤魔化すように私もお茶を啜った
    「…そういえばね、流れ星を見たら消えるまでに3回お願いを言うと叶うって話があるんだよ」
    実際の星が流れる時間など瞬きをすれば見逃すほど短いのでなかなかできないけど。だからこそ、それが出来れば叶うということだろうか
    「…へぇ、面白い話だね」
    「昔から挑戦しているけど、なかなか言えた試しがないんだよね」
    「3回言わなくても、1回を心を込めて願えば叶うかもしれないよ?」
    「清麿の考え、素敵だね」
    素直に褒めるとそこで褒められると思っていなかったのか清麿は少し目を見開いて照れくさそうにお茶を啜った
    「…ここから見る星は綺麗だね」
    私の元いた時代では自然の星の明かりは発達した文明の光にかなりかき消されてしまっていた。
    ここにはあまりそれがなくて、空を埋め尽くさんとするような数の星々が私たちを静かに見守っている。
    「うん…確か、星は僕達より長生きなんだっけ」
    「そうだね、星にもよるけど、私の人生なんて星からすれば一瞬かも」
    そう思うと、なんだか小さなことで悩むのが馬鹿馬鹿しく思えてきて心が落ち着く。だから昔から星を眺めるのは好きだった。
    「…そんな星からすると一瞬の君の人生に関われた僕は幸せ者だね」
    「清麿?!」
    清麿からそんなことを言われるなんて思ってなかった私は手に持っていた湯呑みを落としかけた。何とか持ちこたえたけど…
    「ほらほら、しっかり見ていないと見落としてしまうよ?」
    少し口角を上げて笑う清麿。なんて策士だ。
    「もう…」
    ぬるくなったお茶を一口飲んでどこまでも広がる星空に視線を戻すと、すっと光の線が視界を過った
    「あ!!!流れ星!!清麿見た?!見た?!」
    「どこに?…見えなかったな」
    まるで子供に戻ったようにはしゃぐ私を清麿は優しい瞳で見つめてくる
    「えっとね、あの辺…ほら!また!」
    「あぁ、今のは見えたよ。とても綺麗だね」
    ひとつ見つけるとまたひとつ、またひとつと数は増えてやがて雨のように星が線を描き始める。
    「わ、すごい…!!お、お願いしなきゃ!!」
    手を合わせて必死に心で願いを唱える
    「…」
    視線だけをちらっと清麿に移すと清麿も私を真似て両手を合わせ願い事をしているようだった
    「君は何をお願いしたの?」
    清麿はとても楽しそうに私に尋ねてきた
    「えっと…秘密。清麿は…?」
    顔を横に向けて彼を見ると綺麗な指を口元に当ててこう言った
    「…願いというものは、人に言っては叶わないと言うからね。秘密だよ」
    白い息を一つ吐いていたずらっ子のように彼は笑った

    「にしても凄いね、こんなに流れ星が見られる日があるなんて思わなかったよ。」
    「こんな好条件で見られるのはそうそうないんだって。次のチャンスもまた見られるかなぁ…」
    冷えきった湯呑みを置いて膝の上で手を擦り合わせた
    「きっと見られるよ、また2人でね」
    そんな私の手に清麿の手が重なる。少し冷えてはいるけど、私よりほんのり暖かい手になんだか少しほっとする
    「…すごく冷えているね、君がいいなら、こちらにおいで」
    両手を広げて私を呼ぶ清麿。本当にずるい。私に選択権を与えているようで与えていないんだから。
    「…お邪魔します」
    あぁ、とっても安心する。ひとりじゃないって感じられて、すごく心地いい。
    「あぁ、すごく冷えているね。もう少ししたら中に入ろうか?」
    「うん…」
    背に温もりを感じながら目を閉じ、静かに願う。
    どうかこの幸せな時が、少しでも長く続きますように。

    腕の中で君は静かに微睡んでいる。
    星の命も長いけれど、僕たちの命もヒトに比べれば遥かに長い。たくさんの人のもとを渡ってきた仲間だっている。そんなかつての主たちに会いたいと願う者も多いだろう。
    でも僕はきっとこの流れる星々を見る度願うだろうね。
    君とまた巡り会う日その日まで、ずっと。
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