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    piiichiu

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    piiichiu

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    ノマチュに相談という体でノロけるミトヨヘ
    注意!かっこいいミトヨヘはいません!!

    焼酎のうまい店がある、と洋平に誘われた時に、なんか裏があると気付くべきだったのだろう。野間忠一郎の不覚だった。
    洋平は、仲間を誘う時にそんな気の利いた理由を言わない。飲もうぜー、で終わり。だからそれは釣りの餌で、野間はまんまと釣られたわけだ。

    「オレ、好きな子をイジメるタイプだったのかもしれない……」

    洋平の好きな子というのは、つまり花道だ。それは中学の頃から、当たり前の常識みたいなものだった。ポストは赤、春の次は夏、洋平は花道が好き。
    そんで、今現在洋平は花道をでろでろに甘やかしている。昔から花道を愛することにかけては右に出る者がいない男だったが、昔はまだ自制があった。多分それは、ずっと一緒にいられるわけじゃないんだからあんまり甘やかしちゃダメだ、みたいな諦めの気持ちが含まれた、寂しい自制だった。
    今の洋平にその自制はない。
    アメリカから帰ってきた花道と同居している洋平は、長年の恋が叶った反動か、10年間1万キロの別離による反動か、とにかくダメなレベルで花道を心ゆくまで甘やかしている。人をダメにするソファみたいなヤツが一時期流行ったが、普通の人間ならダメにされそうなレベルで甘やかしている。人をダメにする水戸洋平。「オレのお姫様」とか言い出しそうなレベル。実際、跪いて嬉しそうに足の爪を切るところを見た。朝から晩までなんでもやってあげたいし、なんでも好きなものを食べさせたいし、口を開けば甘ったるい声で、かわいい天才大好きはなみち。
    ところが花道のすごいところは、その甘やかしを当然のように受け入れながら、これっぽっちもダメにされないところだった。あんまり行きすぎると、花道は洋平の名前を呼んで、たったそれだけで洋平の背筋を正せるのだった。こいつら、ホントお似合いと野間は思った。しかも恐ろしいことに、花道も洋平に甘くなっていた。チョコレートのハチミツ掛けに粉砂糖ふるうって、バカ?
    バカップルって、もう死語か?
    このふたりを呼び表すのに、それ以上の言葉が思いつかない。このバカップルどもは、ふたりで毎日イチャイチャイチャイチャ幸せそうだった。

    話は戻るが、そうであるから、水戸洋平が好きな子をイジメるタイプなどというのは、どうにも納得できない話である。

    「花道さあ、この前フルマラソンを完走したんだけど」
    「へえ〜」

    フルマラソン。42.195キロ、だっけか?流石花道。元NBAスター選手、昔から体力は化け物級だったが、バスケ始めてからの花道は更に化け物度に磨きをかけている。

    「すごいよな。流石オレの花道。最高。そんでさあ、その日もたっぷりご飯食べて、ゆっくりお風呂入って、次の日は朝のロードワークはなしで軽めのストレッチにして、夕方のロードワークはいつも通り。すごくないか?」
    「すごいな」

    正直に感銘を受ける。
    30歳を超えたあたりから、正直なところ体力の衰えを感じてきている。同年代なら、多かれ少なかれ皆そうだろう。徹夜が辛い。唐揚げとポテトとピザを一生最高の食べ物として生きていくと思ってた時期が、野間にもあった。最近はあんまり揚げ物は量を食べたくない。ステーキは、サーロインより赤身がうまい。ツマミはホッケの塩焼きとか、炙ったイカとかでいい。
    花道は、この前花道と洋平の家で家飲みした時、唐揚げを4kg揚げて、それを食べ切っていた。もちろんオレらも食べたが、衰えることのない食欲はもはや見事の一言だ。

    「そんでさ、思ったわけよ。オレらのセックスってフルマラソンより過酷なんかな……って」
    「…………」

    あーーーーーまあ途中から予想していた。洋平が花道をイジメるはずない。普通の場面なら。じゃあ普通じゃない場面な訳だから。まーーーーーそういう。方面なのかなって。クソ。

    「…………おめーらのそういう話聞きたくねーんだけど」
    「そんな具体的に話さねーよ。ソコはオレだけの花道だもん」

    「だもん」じゃねーーーんだよ。
    こいつ、洋平、長年の片思いが成就して、調子乗ってる。かわいこぶるな。いつまでも若く見えるからって調子乗ってるだろ。洋平って、仲間内だと結構甘えてくるんだ。これがコイツの甘え方なのだ。オレらにはまあだいたい何言ってもいいと思ってる。ほとんど兄弟みたいな、手放しの信頼。しかもオレらは花道がいなくて寂しくて何年もしょぼくれてた洋平を見てるから、余計に仕方ねえなってなっちまう。クソ。

    「なんかさあ、つい……かわいくって。しかも花道に触れんのがうれしくてさあ。やり過ぎちゃうんだよなあ」
    「ハア」
    「花道に触って良いんだっていうのがさあ……今でも時々信じらんねー。恋人だから、体に触って良いわけ。世界中でオレだけが、花道に。もちろん花道の意思は尊重しながらだけど」
    「ソウデショウネ」
    「多分オレ、ずっと花道に飢えてたんだよな。そこにそんな……骨つき肉を投げ込まれたら、そりゃあ……骨までしゃぶるだろ。もうやだ、もうだめって言われてもやめてやれないんだよなあ。しかもさあ、相手は花道だから。ホントのホントに嫌なら、オレなんか投げ飛ばせばいーんだから。それをしないわけだから、手加減できねーんだよな」
    「………」

    野間は目を閉じた。諸行無常。ギオンショージャの鐘の音、諸行無常の響きあり。

    「しかも花道が……かわいくって……ホントに……どこもかしこもかわいくて、素直で、……かわいくて……花道があんなにかわいいって、お前ら知ってた?」
    「…………」
    「触り心地が最高で……どことは言わないが……ホント、一日中触ってられる……いや、触っていたい……一生……」
    「…………」

    次なんだっけ?なんとかどーとか花の色、だった気がする。なんか花だった。花道。あっクソ。そっちに行くな。どこを一日中触られてるのか、考えたくない。花道。オレらの星。一生自慢だ。アメリカで活躍して、有名になって、最高にかっこいいオレらのアタマ。エトセトラは否定するけど、桜木軍団は否定したことがない。ずっと桜木軍団だ。強くってでかくってやさしい花道。中学の時、マジで負け知らずだった。アメリカまで応援に行った時、ダンク打ちかまして、オレらの座る席にガッツポーズキメた時、メチャクチャシビれた。好きな子と登下校するのが夢だった花道。ファーストキスは夕陽の丘でしたいとか言ってた花道が。

    「翌日にダルそうだったからさ、オレも心配して聞いてはみたんだよ。そしたら、どこも痛くないけど、まだ腹がゾワゾワするからって……走ると響くんだって……次の日の夜まで……かわいい」

    クソ。オレらのウブだった花道が。こんなスケベヤローにテゴメにされて。

    「ウワ、何泣いてんの」
    「テメー洋平、花道泣かせたら承知しねーからな」
    「おう」
    「オメーも幸せになんなきゃ許さねーからな」
    「何だよ突然。変な奴だな」

    変態はおめーだろと怒鳴って、野間は焼酎を煽った。
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