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    赤司君(オレ)が蛇神様
    赤司君(僕)が龍神様
    黒子君がただの人間のファンタジーパロ

    そのうち続き書きます
    誤字脱字はちょこちょこ直す

    蛇神様と龍神様が人間のボクに求婚してきます!幼稚園のころ、庭で小さな蛇を見つけた。
     その蛇はお腹に傷を負っていて、赤い血を流していた。ボクはその赤い血がとても怖かったけれど、蛇が死んでしまうのが可哀想で、両親やおばあちゃんに内緒で部屋に持って帰り、どうにかして助けようと絆創膏を貼って水をあげてお世話をした。蛇は抵抗する元気もないのか、箱にティッシュを詰めた中でおとなしくじっとしていた。毎日お世話をしていたら、血は止まり二週間もすると蛇は動けるようになった。すりすりと手に擦り寄る蛇が、ボクは次第に愛らしくなった。そして、蛇は毎晩ボクのパジャマの中に潜り込んできては、暖をとるようにくっ付いてきて、一緒に眠るようになっていた。影が薄くて、友達があまりいなかったボクに出来た初めての友達だった。
     ボク達は言葉は通じないけれど、それなりに仲良く過ごしていた。けれど、それも束の間だった。ある晩、ボクは夢を見た。その夢の中で、赤い髪をして赤と金色の目を持つ男の人が、ボクにこう言った。
    『テツヤが大きくなったら迎えにくるよ』と。そして、その男の人がボクのお腹を鋭い牙で噛んだ瞬間目が覚めた。ボクは飛び起きてお腹を見ると、うっすらと血が滲む歯形が付いていて、ボクは怖くなって泣きながら両親の部屋に行き、泣きつかれてそこで眠った。
     その日から蛇は何処かへ消えてしまい、ボクのお腹の歯形もいつの間にか消えていた。
     あの蛇は夢だったのだろうか。
     ボクは狐に摘まれたような、幻を見たような不思議な気持ちを抱きながらも、いつしかその蛇の事を忘れてしまっていた。
     

     そして、時は流れ高校一年の冬。
     部活を終え学校から帰ると、庭に何か赤い紐のようなものが落ちていた。
    「ロープ……?」
     最初はヒモのような何かかと思った。だが、よくよく見れば全長一メートルくらいありそうなそれは、珍しい赤い鱗で、身体の先端の頭らしき場所についたルビーのような目玉がぎょろりとボクの方を凝視していた。
     ロープなんかじゃない。これはみまごう事なき立派な蛇だった。
    「どうしてこんなところに蛇が……あの、動けないんですか?」
     ボクはじっとその蛇を眺めていたが、舌をちろちろ動かすだけで微動だにしなかった。普段なら怖いと思うそれに気がつけば何故か懐かしさを覚え、ボクはそっと近づいた。
     触れるぐらいの距離まで来ると、蛇の体には無数の噛み傷のような物が付いていて、うっすらと血が滲んでいた。たぶん、動物か何かに襲われて、動けなくなっていたのだろう。放っておけばそのまま生き絶えるかもしれない。自然の摂理としてはそれが正しいのだが、ボクは何故かその蛇が気になって仕方がなかった。
    「あの、怪我を治せるかわからないのですが、もしよかったらボクの家に来ませんか? ここもボクの家といえば家なんですけど」
     ボクが人の言葉で蛇にそう問いかけると、蛇は首をもたげて赤い舌をちろちろと出し、ゆっくりとボクの足元にすり寄ってきたのだ。
    「人懐っこい蛇ですね。もしかしたら誰かに飼われていたのでしょうか? 今この鞄しかないので狭いし汗臭いかもですけど、ここに入ってください」
     ボクは持っていた部活用のエナメルバックの口を開いて蛇に中へ入るように促すと、蛇は言葉を理解しているのか、すんなり鞄の中に収まっていった。
    「ふふ。なんだか不思議ですね。普通なら怖いと思うのに、キミは全く怖くありません」
     触れるにはまだ勇気がないが、それでも潰えそうな命はどうにかしてやりたいと、ボクは誰にも見つからないように自宅へ持ち帰った。
     幸い祖母も母も外出していて、家の中には誰いなかった。あまり動かさないように階段を上がると、自室に連れ込むことに成功した。
     エナメルバックを床に置き、まず蛇が入れそうな衣装ケースを開けて中にタオルを敷き詰め、蛇をその中に静かに入れた。
    「あいにくキミのケースがまだないので、簡易ですがとりあえずこの中に入ってください」
     蛇は逃げることもなく、ゆっくりと辺りを見渡していた。どうやら、腹部に負った傷は出血は止まっているらしく、先ほどより動きは良くなっていた。
    「傷は塞がっているようですね。この分ならすぐに病院は必要なさそうですけど、脱走した蛇なら飼い主を探さないといけませんね」
     ひとまず病院は明日行くとして、今夜はここで落ち着いてもらわねばならない。まず何か食べさせなければと蛇の食事を調べてみると、目を覆いたくなるような写真が出てきてボクはそっとスマホの画面を消した。
    「……すみません、キミの食事を用意するのに少し時間が掛かりそうです。水は飲んだりしますかね?」
     蛇はケースの中でトグロを巻いたまま落ち着いたのだろう。時々チロチロと舌を出すだけで何かを欲している感じには思えなかった。
    「今日はゆっくり休んで、明日動物病院の先生に診て貰いましょう」
     ボクは恐る恐る手を伸ばし蛇の体にそっと触れてみると、肌は意外と柔らかく、すべすべした感触に驚きを隠せなかった。
    「とても綺麗な肌をしてますね。二号とは違ってひんやりとして、とても気持ちがいいです」
     しばらく蛇に触れていると、蛇は首を上げてボクの腕にその頭を擦り付けするすると腕に巻きついてきて、ボクは驚いた。
     野生生物がこれ程までに懐くとは到底考えられず、やはり誰かに飼われていたのだとすれば、飼い主を探さなくてはならない。そうなると家族にもバレてしまうかもしれない。きっと母や祖母は驚くだろう。どうするのが一番良いのか考えていくうちに、蛇は自らケースに戻るとトグロを巻いてもたげていた頭を下げた。ボクはその姿にやはりどこか懐かしさを感じながらも、何も思い出せず冷たい肌を撫でるだけだった。
    「……ゆっくり休んでくださいね」
     ボクはケースに蓋をしてタオルを掛けてやると、部屋の電気を消し、手を洗ってからベッドに潜り込んだ。

     その日の晩、ボクは不思議な夢を見た。
     真紅の蛇が何故か人の言葉を話せるようになっていて、ボクに感謝の意を唱えていたのだ。
    『助けてくれてありがとう。おかげで助かったよ。起きたら改めてお礼言う』
     柔らかく耳障りのいい声。蛇も声を出せたらこんな声をしているのかと思うと、少しだけ胸が高鳴った。
    『元気になったみたいで安心しました。ですが、明日ちゃんと診てもらいましょう?』
    『オレは普通の生き物ではないから無用だよ』
    『どういう事ですか?』
    『ふふ。起きたらわかるよ』
    『え?』
     蛇はボクにまとわりつくと唇にそっと触れ、やがて身体中を自由に這い回り、満足したのか離れていった。とたんにお腹の表面がちくちくと熱くなり、全身が熱を持ったような感覚に陥った。
    『それじゃあ、またね』
    『あっ、待ってください!』
     蛇は姿を消し、ボクは途端に意識が浮上した。
     目が覚めた時にはいつもの見慣れた自室が広がっていた。
    「夢……?」
     まだ耳に残る優しい声。あの声は、果たして昨日助けた蛇の声だったのだろうか?  
     ボクはまだ覚醒しない頭のまま寝返りをうとうとしたが、何故か身体が重たいことに気が付いた。この感覚は、間違いじゃなければ人の感覚。なぜ? どうして? それから、意識は次第にはっきりしてきて、変に膨らむ布団を恐る恐る上げて中を確認するとボクは悲鳴を上げた。
    「なっ、なっ……?!」
    「やぁ、目が覚めた?」
     中から出てきたのは、ボクと同じくらいの体格の赤髪の青年だった。
     しかも、裸その身体は何も身に纏っていなかった。
    「き、キミは誰ですか?」
     ボクの身体を抱き枕のように抱きついている青年の目のやり場に困りつつ、逃げようとするもの強靭な力で身動き一つ取れなかった。
    「オレは赤司征十郎だよ。昨日お前に助けてもらった」
    「赤司さん……? あの、キミはどこからこの部屋に入ったのですか?」
    「それだね」
     赤司征十郎と名乗った男は部屋の隅にあるエナメルバッグを指さす。それは、まさしく昨日助けた蛇を入れていたバッグで、不思議に思いながら眉根を寄せた。
    「あの鞄……? まさか、キミ本当に昨日行き倒れていた蛇なんですか?」
    「そう言ってるだろ? 昨日は助けてくれてありがとう。お礼にオレの妻にしてあげるよ」
    「妻?」
     蛇はしてやったりと言った顔をしていたが、ボクは全く理解が追いつかず、まだ夢を見ているんじゃないかと錯覚していた。しかし、明らかにこれは現実で、頰をつねると鈍い痛みが走った。
    「ねぇ、お前名前はなんて言うの?」
    「ボクは黒子テツヤですが……」
    「ふうん。じゃあ黒子って呼ぼうかな。黒子、オレの妻になって子供を産んでくれる?」
    「待ってください。ボク、男です。子供は産めません」
     ボクは突然の求婚に訳もわからないままひとまず拒絶した。たとえボクが女性であったとしても無理だった。
    「大丈夫、オレに任せて。性別なんて関係ないよ」
    「いえ、あの無理です。まだ結婚できる年齢じゃありません」
    「それの何が問題でも? 普通神に求婚されて拒否するやつはいないよ」
    「神? キミが?」
     ボクは蛇のセリフに首を傾げた。
    そういえば、夢の中でも神様という単語を聞いた気がしたからだ。
    「あぁ、オレはこの付近を守っている神なんだ。そんなオレの妻にはなかなかなれないんだ。これはチャンスだよ」
    「チャンスと言われましても……」
    「黒子」
    「えっ?」
     名前を呼ばれ油断した。あ、と思った時には既に蛇の美しい顔が急接近していて、ボクの唇を奪っていった。それは、ボクにとってファーストキスだった。
    「人間ってこう言うだろう? 幸せにするって。だからオレの妻になってよ、黒子」
     蛇はにっこり笑うと、赤く長い舌がちろちろと見え隠れしていて、ボクはその下を見た途端こくりと頷いていた。
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