idle talk in the elevator 1夏が終われば秋が来る。
四季の移り変わりは当然のようにやってくる。
この国でのアイドルにとって、季節が移り変わることは、仕事が舞い込みやすくもなるのと同義だ。
「それでは葵ゆうた、お先に失礼しま〜す!お疲れ様でした!」といまや日課になった挨拶に加えた敬礼をしながら事務所を出れば、スタッフの皆は笑いながら返礼をくれる。
「今日、ひなたくんは直帰なんだね」
「そうなんですよ。代わりに俺が今度の仕事のスケジュールやらなんやら受け取りに来たんですが……お陰様で嬉しい悲鳴ですね」
同じように外に出た事務のひとと世間話をしつつ、そのひとが呼んだエレベーターを待っていると、ピンポーンと間の抜けた音で到着を知らせた。
「お先にどうぞ〜」
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