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    ymym4989

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    ymym4989

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    ハロウィンは今年が終わるまでがハロウィンだ!

    フリートどこに行ってもオレンジ、紫、黒の色が目に入る。
    オレンジはかぼちゃ、黒と紫は猫やコウモリ、そして合間に見える白はお化けや蜘蛛の巣だ。
    都会で蜘蛛の巣はお化けのイメージなんだろうか?と疑問に思ったことがある。古く打ち捨てられたもの……ここでは吸血鬼の棺桶や古い屋敷に対するイメージということだった。得た情報から察するに人の手から離れたものへの恐れだ。
    たしかに蜘蛛の化け物といえば女郎蜘蛛や牛鬼が燐音ですら真っ先に思い浮かぶのだからなんとなく納得した記憶がある。正体のわからないものは恐ろしい。それは身をもって知っていることだ。
    燐音のお気に入りのパチンコ台より目に悪い配色の毒々しさにけらけら笑いながら同じ色味の衣装を身に纏った。おどろおどろしげかつ陽気な音楽がゆったり流れるビルの中を上に下に飛び回っていた。
    「どこの誰も祭事が好きなもんだよなァ」
    準備を手伝うなんてことは一度たりとも許されなかったあの頃を思い返せば、立っている者は親でも使えならぬ蜂でも使えの副所長にあれやこれや言いつけられている今がなんとも際立つ気がする。
    「俺っち雑用係じゃないンだけどフクショチョー」
    「暇しているなら丁度良いではありませんか!溜まりにたまったツケの分、その無駄に発達した身体能力を存分に発揮してください!」
    「やだーフクショチョーってばひでェーの!」
    「……仕事ではなくボランティアをしたいとおっしゃいました?」
    「ウソウソ!しっかりばっちり働きまァーす」
    ハロウィンにかこつけて行われるイベントはひとつではない。ESに参画しているそれぞれの事務所でも行われているし、なんなら夢ノ咲学院などの関連学校でもあるらしい。
    まさしく上に下にの大騒ぎ。それならば乗らない手はない、と参加したのだが……。蓋を開けてみればアイドルとして営業するよりも副所長の日頃の恨みつらみをここぞとばかりに晴らされているような有様だった。
    とはいえ、その隙間から耳寄りな情報も得られるのだから損して得取れを実践しているので何もかも無駄というわけではない。
    ジャック・オー・ランタンに詰め込まれたお菓子の山を両手に抱え、次の補充先に向かおうとすると声が掛けられる。
    「くださいな」
    その声の主を探して振り返ると燐音の腰くらいの高さに頭からすっぽり布を被ったこどもがひとり立っていた。
    今日の社会見学に参加するこどもたちはグループ単位で行動しているはずだが、周りを見ても誰もいない。
    迷子だ。こどもなんていくらしっかりしていようと好奇心に任せてあっちこっちにうろちょろしてしまうものだ。
    「くださいな」
    (……迷子か。まぁ、出るとは思っていたケド……?なんか、見覚えがあるような……?どこでだ?)
    他人よりちょっとばかりよろしい頭の中にある扉を開けていく。検索するための情報をもっと増やすため目線を合わせるために膝を折り、いつもの調子で話しかける。
    「ようようオバケさん!合言葉が足りねェぜ?」
    「くださいな」
    「焦らし上手かよ!ほらほらトリックオアー?」
    「くださいな」
    「あらやだ頑な。どっかの誰かさん……みてェ……」
    お化けの適当に開けられた目の穴からくりくりとしたまんまるな目がこちらをじっと見つめている。
    この高いくせに落ち着いた波の少ない話し方。それでいてどこか甘えが混じった短い言葉。
    なんとなく既視感を覚えたこども。
    「……は?」
    「にいさん、くださいな」
    今日もきょうとて元気溌剌、天真爛漫に過ごしているだろう人間の燐音が過去に見た最後の姿をしたこどもがここにはいた。
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