幸せを願う話 今、俺は気が立っている。ついさっき、任務のために発つマーヴと少し揉めたからだ。マーヴは仕事の前には決まって、自分に何かあっても俺とジェイクが困らないように色々準備してあるという旨の説明をする。金や土地のこと、マスタングやバイク等の持ち物について、自分のいない世界のことをあれこれ指図してくるのだ。三人で暮らし始めた頃は「そんなこと言うなよ」とか「心配しなくても俺達は大丈夫だよ」と答えていたが、二ヶ月前にも聞いたことをそっくり繰り返すものだから、苛ついた俺はつい口を挟んでしまった。
「あんた、何度も同じことを言ってるけど老化か?」
大変に失礼な発言だった。当然これにマーヴが怒り、「僕は君達の未来を思って言ってるんだ」とがなるから、俺はまたもやつい「勝手に思うな」と言い返してしまった。
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