拍動と毒素父の職場には週に1回連れていかれた。当然学校も休みである日曜日は母は日中が仕事で、姉は友達と遊びに外に出ることが多かったから、おれを置いていくのは憚られたらしい。父につれられておおきくて静かなで、でもどこか喧騒のなかにある敷地で過ごしていた。「いい子にしてるんだぞ」と言うのはいつも父だ。「わかってる」と聞き分けのいい子供のおれはそう言って、仕事着に着替える父をじっと見ていた。家では物静かでどちらかといえば母の尻に敷かれている父の雰囲気が変わるようで、仕事着の父を見るのが好きだった。電話を胸ポケットにしまった父は仕事場に向かう。「12時過ぎにはおわるから」と言った父を見送って、おれはもう探検しつくした敷地内を闊歩するのだ。
6780