その日の授業、一時間目が始まるよりも早くに、イナバは職員室へと走った。道中ですれ違った教師たちから走るなと怒られもしたが、急いで確認したいことがあった。
担任であるジニアの姿を見つけると、彼のデスクまで歩み寄る。ジニアは、見ている方も気が緩みそうな柔らかい笑顔をイナバに向けた。
「イナバさんじゃないですかあ。おはようございます。早いですねえ」
「おはようございます、ジニア先生」
釣られてイナバもへらりと笑ったが、すぐにはっとして、少し周りを気にしながら耳打ちする。
「先生、人間とポケモンが交尾したら、タマゴは産まれるんですか」
まずどの授業でも触れないような範囲の質問に驚いたジニアは目を丸くした。なぜそんなことを聞くのかとでも言いたげにイナバの顔を見たが、そのイナバの表情が真剣そのものだったため、生物の教師として真面目に応えることにした。
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