誓いのキスに立会人はいらない 世紀末も同然だったメトロシティの治安を剛腕で以て建て直したという名物市長、マイク・ハガー。その偉業を称える巨大な立像が、藍色の夜空を背負って誇らしげに佇んでいる。普段なら像の足元には、像と揃いのポーズを決めて記念写真を撮る観光客や、彼らを相手に似顔絵やら土産物やらを商う露天商たちが集まって賑わうはずなのだが、どういうわけだか、今はほとんど姿が見当たらない。暇を潰す地元の住人や、この近くを根城にする不良集団の下っ端が数人屯している程度だ。
まるで、俺たちのために「そうあるべし」と誂えられた舞台みたいだ……なんて。逆上せたことを大真面目に考えてしまうくらいには、今夜のアーバンパークは静かだった。
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