はいはい、可愛い可愛い「魈仙人!鍾離殿!見てください!」
先程旅人に呼ばれ、行秋と共に席を離れた重雲が戻ってきた。
声の様子から察するに、何か良い事があったようだ。珍しくはしゃいでいる姿を、後ろにいる行秋が愛しいものを見る目で見守っている。
「旅人が新しい武器を貸してくれたんです……!」
見てください、と言いながらどこからともなくその武器を取り出した。
隣で茶を啜る鍾離様の顔が僅かに歪んだが、嬉しそうに笑っている重雲は気付いていない。行秋は口を押さえて笑いを噛み殺しているように見える。
嬉々として構えたその武器の見てくれに、思わず重雲を問い質した。
「……なんだ、その魚は」
どこからどう見てもただの巨大な魚だ。何故これを剣と認識しているのか。
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