見守る者 屋敷に帰宅した少年は、傍から見てもわかる程に気落ちしていた。
廊下ですれ違う門下の者への挨拶もそこそこに真っ直ぐ自室へと向かう。何かお持ちしましょうか、と心配そうにかけられる声にもただ一言、「何もいらない」とだけ返事をして部屋に篭もってしまう。
――方士であれば普通、剣や札を用いるものだろう。依頼人に言われたことが脳裏に蘇る。
提示された問題は解決できる。しかし、怪異は去ったとどれだけ口で説明しても、傍から見れば何もしていないのだ、実績も無い駆け出しの言葉を信じる人は多くない。
内に渦巻く何とも言えない感情、それらを鎮める為の瞑想も鍛錬も、今は何もする気が起きない。
悔しさに任せて声を上げ泣いてしまいたい衝動すらも堪え、机に突っ伏しぎゅっと目を閉じた。
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