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    くろいぬ

    @kuroinu_4396

    いろいろなジャンルやキャラが好きな黒い人です。

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    くろいぬ

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    北野先生と古賀くん。

    #BP

    私の星 聞いた話によると、今日は月が赤い日らしい。
     正式には皆既月食と言うらしいけれど、私は英語の教育実習生なので、理科はあまり詳しくない。だから、隣に座る古賀さんから何度も説明をしてもらっても、やっぱり月が赤いということしか分からなかった。古賀さんは私が説明を理解していないことに気付くと、月を指差した。
    「とにかく、月が赤くなってることが分かっていればそれでいいですよ」
    「それなら、私にも分かりますよ」
     数日目かの教育実習を終えた後、黄昏時に古賀さんとたまたま会って、私の自宅に招いて、一緒に夕食を食べて。そうして日が暮れて、月が昇って今に至る。教育実習生が実習先の学生さんと一緒にいるのはどうなんだろうと思ったけど、友人同士である大学生と中学生が一緒にいると考えれば、そこまでおかしいことではない、気がする。古賀さんも古賀さんで、オカルト部門にいる友人さん(九重八木七男さんと、須賀則男さんと、志賀末綱さんの三人と仲がいいらしい)のもとへ訪ねに行ったらしいから、ある意味それと同じなのかもしれない。だったらやっぱり、大学生と中学生が仲が良いのも、何らおかしくない。
    「北野先生」
    「はい」
    「先生って、星とか月とか、好きですか」
    「詳しくは分からないですが、見るのは好きですよ」
     そう答えながら、古賀さんが教室で天体の本を読んでいたことを思い出した。もしかして、星座や天体が好きなのかも。そういえば、古賀さんは理科が得意だったな。なんてことを考えていたら、古賀さんは再び私に声をかけてきた。
    「あの星が一等星といって、明るい星なんですよ」
    「わっ、本当ですね。周りの星よりもずっと明るく輝いていますね。でも、どうして星によって明るさが違うんですか?」
     そう私が尋ねると、古賀さんは赤い月の周りに浮かぶ星々を順に指差していく。ぼんやりと光ってある星もあれば、煌々と輝く星もある。古賀さんは自分の傍らに置いていた天体の本を開いて、そのページを私に見せてくれた。古賀さんが見せてくれたページには、月や火星などのポピュラーな天体から、アルタイルやベガなどの星の写真が掲載されていた。その近くに解説文が書かれているけれど、私には少し難しかった。ただ、天体や星座の名前を表す英単語ははっきりと読み取れた。
     古賀さんは、解説文を指で追いながら説明してくれた。本の解説文よりも、ずっと分かりやすかった。
    「星自体の明るさもありますけど、地球からの距離によりますよ。地球から近いと明るく見えますし、遠いと暗く見えます」
    「近ければ近いほど、明るいんですね」
    「そういうことです。ほら、これ。皆既月食の写真もありますよ」
     そう皆既月食について説明する古賀さんの目には、無邪気で明るい光が宿っている。私に皆既月食の説明をもう一度しながら、熱心に夜空の赤い月と写真の赤い月を見比べては、私にその話をしてくれる。夢中で話す古賀さんの目を見て、私はその目が、夜空と同じ、煌々とした光を宿す一等星とよく似ているなと思った。
     
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    くろいぬ

    TRAINING北野先生と古賀くん。
    私の星 聞いた話によると、今日は月が赤い日らしい。
     正式には皆既月食と言うらしいけれど、私は英語の教育実習生なので、理科はあまり詳しくない。だから、隣に座る古賀さんから何度も説明をしてもらっても、やっぱり月が赤いということしか分からなかった。古賀さんは私が説明を理解していないことに気付くと、月を指差した。
    「とにかく、月が赤くなってることが分かっていればそれでいいですよ」
    「それなら、私にも分かりますよ」
     数日目かの教育実習を終えた後、黄昏時に古賀さんとたまたま会って、私の自宅に招いて、一緒に夕食を食べて。そうして日が暮れて、月が昇って今に至る。教育実習生が実習先の学生さんと一緒にいるのはどうなんだろうと思ったけど、友人同士である大学生と中学生が一緒にいると考えれば、そこまでおかしいことではない、気がする。古賀さんも古賀さんで、オカルト部門にいる友人さん(九重八木七男さんと、須賀則男さんと、志賀末綱さんの三人と仲がいいらしい)のもとへ訪ねに行ったらしいから、ある意味それと同じなのかもしれない。だったらやっぱり、大学生と中学生が仲が良いのも、何らおかしくない。
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    くろいぬ

    TRAINING花本先生と夜の話。
    夜の鳥 空気が冷えている。日が沈んでいる。空が黒くなっている。
     日はとうに地平線の彼方に沈み、今や月が空を照らしている。自らの独壇場だと言わんばかりに、月が黒い空に浮かんではその光を灯す。星々は月に付き従うかの如く黒い空に散らばり、月の光を引き立たせるかのようにきらきらと小さく光る。強い光のもの、弱い光のものなど、その種類はさまざまである。他の人々や、ワタシの同僚たちは、とうに眠っているはずである。あるいは、眠る準備をしている最中であろうか。
     しかしながら、ワタシは眠れそうにない。
     どうしてだろうか? そう考えても分からない。ただ、稀にこのような日がある。目を閉じても、寝返りを打っても、毛布に包まっても。何をしたところで眠りに落ちることが出来なかった。身体の中に鉛が混じったかのように身体は怠い。ずっしりと何かがのしかかるかのようにずんと重い。身体は疲れている。疲れているはずなのに、目が冴える。重くなるはずの瞼は、未だに軽い。いくらベッドの上で待とうとも、眠気はまだワタシを眠りに落としてくれそうにない。代わりに、思考能力がワタシを覚醒の淵に立たせたままである。思考能力は働き、脳を働かせている。思考が巡るまま、ワタシは夜空を見上げた。
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