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    もゆけ

    @moyuke_

    字書き ドトランばかり。あまりこちらには載せないかも。えろは基本フォロ限の予定です

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    もゆけ

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    ラくんがドくんにお弁当作る話。
    以前ネップリとして公開していたものを公開し忘れていたのでこちらに載せておきます。印刷してくださった方々ありがとうございました!!

    #ドトラン
    doTran

    ラくんがドくんにお弁当作る話 「お兄ちゃん!」
     「アンナ...!!」
     とっとっ、と小走りに駆けてくるオレの最愛の妹アンナは今日も可愛い。
     無事イーストンに合格したアンナとは、こうやって時折談話スペースで落ち合って話をしている。この間、あまりの尊さに壁にめり込んだら周りにいた生徒が全員いなくなってアンナに怒られたので、反応は自重する。
     「元気か?」
     「うん!元気だよ!お兄ちゃんも?」
     「勿論だ」
     その後もアンナとの楽しいひと時が過ぎる。アンナのクラスの生徒の話や授業の話、魔法の話。アンナが楽しそうに話すのを見ているとランスも心から楽しい。するとアンナが、そういえば、と何か思い出したように言う。
     「どうした?」
     「お兄ちゃん、ドットさんとはちゃんと仲良し?」
     ぴた、とランスの動きが止まる。固まるランスとは裏腹に、アンナは流石女子と言ったところか、楽しそうに言葉を続ける。
     「ドットさん優しい人だし、きっと大丈夫だけど、やっぱり色々聞きたいな〜」
     「お、おい、アンナ」
     「あ、大丈夫だよお兄ちゃん!ドットさんはお兄ちゃんの彼氏さんだもん」
     「いや、そうでは無くてだな...」
     「ドットさんの、どんなところが好きなの?」
     「え、いや...い、色々...?」
     一瞬訝しむ表情を見せたかと思えば、そっかそっか、と納得したように頷いた。
     正直なところ、アイツの話をアンナとするのは少し抵抗がある。アイツは第二次性徴の権化だし、兄が付き合っている男の話を妹とするのはどうなんだ、と思う次第である。しかしアンナは楽しそうだし、聞かれたことには答えねばなるまい。お兄ちゃんだからな。
     「お兄ちゃんさ、ドットさんにプレゼントとか何かあげたことある?」
     「......無い」
     「え〜?!そうなんだ、じゃあドットさんから何か貰ったことあるの?」
     「.........たまに」
     そう、アイツは何かとオレに物を与えたがるのだ。気に入った菓子やら茶葉やら何やら。一つひとつは小さいが、貰っているという自覚はある。
     「...お兄ちゃん、」
     あぁ、皆まで言うな、アンナ。わかっている。自分が貰ってばかりで碌に返せていないことくらい。
     「...どうすれば、良いと思う」
     「うーん、お兄ちゃんはちょっと言葉が足りないときがあるし...何かやってあげられるならそれが良いかなって思うけど...」
     うんうん考えるアンナに罪悪感が凄まじい。すまない、アンナ。妹を悩ませるなんてお兄ちゃん失格かもしれない。
     「あ、そうだ!お兄ちゃん、お弁当作ってあげたら?」
     「...弁当?」
     「うん、お兄ちゃん料理上手だし、毎朝作ってるでしょ?そこでドットさんの分も作ってあげるの!どうかな?」
     確かに、それなら出来るかもしれない。それにアンナが折角考えてくれた案だ。試さない訳が無い。
     「良いな、ありがとうアンナ。早速明日試してみよう」
     「うん!頑張ってね、お兄ちゃん!」
     愛おしいアンナの笑顔が決め手となって、ランスの弁当計画は決定した。


     ぱちり、と目が覚める。むくりと上体を起こして隣のベッドを見れば、ドットはまだ寝ているようだ。ベッドから起きて立ち上がり、ランスはいつものルーティンを開始した。

     (ついに、この時が来たか...)
     部屋にある簡素なキッチンの前で立ち竦む目の前にはいつもランスが使っている弁当箱と、もう一つの箱。
     ドットには、弁当を作るとは何も言っていない。ただ、アイツはいつも昼前に購買に走ってパンを買って来ているのは知っているので、作ったものを朝のうちに渡してしまえば良いだろう。
     (...よし、作るか)
     ドットは少し前に既に起床しているが、アイツの朝の日課を考えれば、キッチンに来ることは無い。きっと洗面台で髪と格闘していることだろう。
     カチャカチャと手際良く料理道具を並べる。いつもの料理を二倍作るだけで良いのだ。もう腹を括って作ってしまおう。
     卵焼きに、ソーセージに...いつもの弁当の中身を作っていく。何度も作っている卵焼きは最初より上達して、失敗などしない。作った卵焼きを切って弁当箱に入れていると、そういえばアイツはオムライスが好きと言っていたな、と思い出す。
     (これも、美味いと...言ってくれるだろうか)
     そんなことが脳裏を過って、ぶんぶん、と頭を振る。違う違う。オレはただ、いつもの弁当を二倍作っているだけで......
     『お兄ちゃん!』
     脳内のイマジナリーアンナの声がランスに語りかけ、具材を詰める手がぴた、と止まった。
     『ドットさんのために作るんだから、ちゃんと相手の人を想って作って良いんだよ!』
     その声にハッとする。そうか、ありがとうアンナ。
     少し口元を緩ませて、弁当作りを再開した。ソーセージに切り目を入れてから焼いていく。
     (そういえば、アイツの好物、オムライス以外は知らないな...)
     購買で買うパンもいつもランダムだし、レモンの作った悍ましい食べ物すら美味しいと言って食べるから、結局何が好きなのかわからない。レモンの手作りは、流石に死にそうになっていたけれど。
     以前オムライスが好きと言っていたのは覚えているが、その他にも何か言っていただろうか...?
     うーん、と小さく唸りながら思い出そうとしていると、ふと鼻に焦げた匂いがする。
     その匂いに思考を止めて、慌ててフライパンを確認する。火を止めて、焼いていたソーセージを菜箸で確認すると、六個焼いたうち二つに焦げ目がついてしまっている。この程度なら食べられないことは無いだろう。もう一度焼き直すのも面倒だ。
     お前のせいだぞ、とその焦げた二つをドットの弁当へ詰めようとして、それらを菜箸で掴む。しかしその箸はドットの弁当へ向かうのをやめて、結局そのソーセージはランスのいつもの弁当に詰められた。

     「出来た...」
     肉も野菜も炭水化物も、全てバランス良く入った完璧な弁当の完成だ。彩りも綺麗で、いつもより気合いを入れてしまったのが完成した今となっては少し恥ずかしい。
     二つの弁当に蓋をして、シュルシュルとエプロンを脱ぐ。弁当は一旦端に置いておいて、朝のルーティンの続きを開始した。
     (......アンナ...)
     朝の支度を終え、ぱかりとペンダントを開ける。そこに映る眩しい笑顔に、ランスは背中を押してもらう。
     (渡すのが...一番難しいのかもしれないな...)
     毎朝、ランスがアンナを摂取している頃にドットが呼びに来るから、きっと今日ももうすぐ来るはずだ。袋に包んだ二つの弁当箱は既に用意してある。カチ、カチと時計が秒を刻む音が聞こえる。
     「おい、ランス、そろそろ行こうぜ」
     突然部屋に入って来た彼の声に必要以上に驚いてしまって、びく、と肩を強張らせる。顔を上げると、ドアから歩いてくるドットと目があって、そんなに驚かなくて良いだろ、と笑った。
     「ほら、行くぞ」
     そう言って、ドットはランスの手首を掴んでドアへと踵を返す。それに連れ立って出るのが常、なのだが。
     「ん?どした?」
     ドットに引かれながらも動かずに立ち竦むランスに、ドットは違和感を抱く。当のランスはうろうろと視線を彷徨わせ、何かを言いかけるように口を開いて、噤んでを繰り返す。
     (今渡さなければ、多分渡すタイミングは無い...)
     『頑張って、お兄ちゃん!』
     脳内に響くその声に励まされ、漸くランスは言葉を紡ぐ。
     「...ドット」
     「え、何だよ...?」
     「お前に、渡すものがある」
     「オレに渡すもん...?」
     ドットが手首の拘束を離し、その間にランスは机の上に用意してあった二つの袋を手に持つ。
     「...これ、やる」
     ずい、と右手を彼の方へ押し出す。妙に緊張して落ち着かなくて、彼の顔を直視できない。
     「......何、これ」
     「弁当だ」
     ドットから言葉はない。思っていたよりも薄い反応に不安になって、別に要らないなら良い、と早口に呟く。
     「要る!!」
     突然大声を出したかと思えば、ドットはガバリと両手でランスの突き出した手の弁当を受け取った。
     その声に思わず前を向けば、驚きと嬉しさを大量に詰め込んだような表情をしていて、ランスは呆気に取られる。
     「え、マジでくれんの?!もしかしてオレのために作ってくれたり...?」
     「...そうだが」
     「うわマジかよ〜!すっげえ嬉しい、ありがとなランス!」
     彼がまるで夏の太陽のような、眩しすぎるくらいの満面の笑みを浮かべるから、ランスの先程までの不安はすっかり何処かへ姿を消した。代わりに心を占めたのは、嬉しさと、愛おしさだけ。
     「ほら、さっさと行くぞ」
     「あー!ちょっと待て!まだこの余韻に浸ってっから」
     「馬鹿じゃないのか」
     「だって、お前がこんなことしてくれんの初めてじゃん!」
     「そ、れは...いつもお前が、色々くれるから...」
     今回はその一端だが、と小さく零せば、弁当を側の椅子の上に置いたドットが腕を広げてぎゅう、とランスを抱き締める。
     「別に気にしなくて良かったのによ、オレが好きでやってんだから」
     「......そうかも、しれないが...オレも、お前に何かしたかったんだ」
     「...そっか。ありがとな、ランス。すげえ嬉しい」
     「...そうか」
     優しく抱擁を解いた彼がまた柔らかに笑う。それを見るだけで心がぎゅうっと苦しくて、暖かくて、不思議な気分だ。
     「そんじゃ行くか、そろそろマジで遅れちまう」
     丁寧に弁当を持ち上げて抱えたドットがドアの方へ歩みを進める。追いかけるようにランスも続いた。
     「あー!早く昼になんねえかなぁ!」
     「ふ、そんなにか」
     こんなに喜んでくれるのなら、今度は好きな食べ物でも聞いてみよう。
     愛する彼のために何かしてやるのも、案外悪くない。
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