「お」
「あ」
やべ、と声にせずとも伝わってくるような顔。
放課後の練習も終わって、だいぶ傾いた日は燃えるようなオレンジ色で葦人と福田の横顔を苛烈に照らし出す。クラブハウスの影になっているような場所、咥えタバコの大人はバツの悪そうにそうっと葦人から視線をずらした。
時が止まっていないことを証明するように、細い紙巻きの先からゆらゆら煙が立ち上って黄昏の空に薄くなって消えていった。
「オッチャン、タバコ吸うんや」
沈黙を破ったのは若々しく張りのある声。意外そうな、純粋な発見以外に何も内包していないそれに、福田は肩透かしを食らったように眉を上げた。
「……まぁな」
「へーぇ」
そう言ったきり興味を無くしたように行ってしまおうとした葦人。
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