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    くぼぼ

    @stm_susk

    イベント用に作成しました。
    スタミュ・フロゴナ関連を載っけていきます。

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    くぼぼ

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    ステ、千秋楽おめでとうございました!無事駆け抜けてくれて本当にありがとう。
    モブおじとたくいおです。いおたくかもしれません。もう何も分からないので円盤化よろしくお願いします。

    モブおじとたくいお個展で忙しいはずのあの人が、ここに足を運んでくれた。だから、これはその事実に浮かれた自分の失態だ。と、拓海は強く拳を握りしめた。
    一般公開の今日、作品の前には、審査の時よりさらに多くの人集りができていた。その中心にいる、作品のアーティストである彼。とある用事から戻った拓海の目に飛び込んできたのは、何より大事な灰島伊織へ手を触れている男だった。
    どんな用事でも離れるべきではなかった。奥歯を音がするほど噛み締めながら、急いで彼の元へ向かう。

    「伊織さん……!」

    不埒な男の手は伊織の肩を抱いており、拓海は頭が沸騰しそうなほどの怒りに燃えた。衝動のまま、男の手を掴み上げる。が、拓海の手は即座に弾かれた。

    「いい。やめろ」

    手を払い除けた本人は、常と変わらない笑みを浮かべていた。端的に発せられた言葉に、拓海の体は反射的に硬直する。伊織は拓海に背を向けて、状況を飲み込めていない男へと笑いかけた。その笑顔に、懲りずに男は伊織へと手を伸ばそうとする。

    「……っ!」

    伊織と男の間に拓海が体を割り込ませる。笑顔を引っ込めた伊織がため息をついた。

    「いいって言っただろ」
    「嫌です」
    「俺がいいって言ってんだ」
    「よくありません……ッ!!」

    周りで歓談していた人間が、何事かと振り返るくらいの大声だった。至近距離でそれを浴びた伊織は、珍しく目を見開いていた。固まっている伊織に、拓海はようやく彼を怒鳴りつけた事実に気づいて、顔を青ざめさせた。

    「す……みません。俺、俺は」
    「ふ、くくっ」

    伊織が横を向いて吹き出し、肩を震わせる。笑いをこらえるように小さく揺れる体を、拓海は弁明も何もできずにただ見ていた。ようやく波が引いたのか、伊織が顔を上げてまっすぐ拓海を見た。

    「他人に怒鳴られたのなんか、いつぶりだろうな」
    「す……すみません」
    「さっきの勢いはどうした?ああ、」

    拓海の背後で所在なさげにしている男に気づいた伊織が、口角を吊り上げた。先ほど男がそうしていたように、ぐい、と拓海の肩を引き寄せる。

    「え、あ、いおりさ、ん」

    少し前に怒りで沸騰しそうだった頭が、また燃えそうに熱くなる。憧れの人から感じる体温にのぼせそうな拓海へ、伊織は男に見せつけるようにさらに距離を寄せた。

    「見ての通りこいつが拗ねるので、今日はこの辺りで。では」

    くるりと背を向けて二人は歩き出す。従順にされるがままの拓海は、伊織に身を寄せたまま付いて行った。
    憧れの人の顔が、息がかかるほど近くにある。鼓動の音も聞こえる。服越しの体温も伝わる。拓海の意識は限界だった。

    「おい、ストーカー。おい……どうした、拓海」
    「っ、はい!」

    伊織の呼びかけで我に返った拓海は、慌てて彼の腕から抜け出した。そっと距離を取り、深呼吸をする。
    平静を取り戻そうとする様子に、伊織は口角を吊り上げた。

    「お前、俺の腕の中のが無害で良いな。ずっと抱いててやろうか?」
    「……からかわないでください」

    先ほどの体温を思い出して身体が勝手に熱を上げる。が、それを抑え込んで、拓海はある番号を呼び出して電話をかけた。手短に要件のみ伝えて、すぐに切る。
    電話の意図を察した伊織は、若干引いた目でそれを見ていた。

    「……ほどほどにしとけよ」
    「しません。あの男は二度と美術界に出入りできないようにします」
    「ったく……」
    「伊織さん」

    拓海が伊織へと向き直る。

    「あんな男に自分を安売りしないでください」
    「別にしてねえよ」

    鼻で笑って流そうとした伊織の目に、強い視線がぶつかる。逸らされる気配のないそれを数秒受け止めた後、伊織はため息を吐いた。

    「……分かった。またネチネチ根に持たれそうだしな」

    承諾の言葉に、拓海がほっと息をつく。
    だけど、と伊織は、またからかうような表情へ戻った。

    「お前に怒鳴られるのは、しびれたぜ。クセになっちまうかもな?」
    「っ、もうしません。すみませんでした」
    「そうか?ああいうお前も悪くないぜ?」
    「忘れてください……!」

    赤面して口元を歪める拓海に、大きく口を開けて伊織が笑い出す。遠巻きに二人を見る観衆の間を、笑い声が通り過ぎて行った。
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