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    くぼぼ

    @stm_susk

    イベント用に作成しました。
    スタミュ・フロゴナ関連を載っけていきます。

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    くぼぼ

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    ストテラ最高でしたね。の勢いで書きました。
    チーム楪とチーム漣がリアル脱出ゲームに挑む話です。CP要素はありません。以前に行ったクリスマスモチーフのリアル脱出ゲームをモデルにしました。

    スタミュ in リアル脱出ゲームこんな酷い偶然があるのだろうか。

    日々何かある度に小競り合い。
    北原が煽り、揚羽が殴りかかり、南條が火に油を注ぎ、蜂矢がそれらを止めようと間に入っては盛大に転ぶ。中小路が掴みかかり、蟻坂がそれを避け、東堂、甲本が仲裁に入り、香西、蛍灯が呆れた目で見ている。
    そんな相性最悪の2つのチームが年末に差し掛かる休日に、力を合わせてとあるゲームに挑戦しようとしていた。



    察しのいい面々は、すぐにこの状況を把握した。
    よくCMなどでも見かけるリアル脱出ゲーム。大人数で知恵を出し合い、力を合わせて部屋に散りばめられた謎を解く。今回のものは最大人数が10人で、初対面の人間とも一緒にプレイする可能性があった。
    だが、まさか同じ日、同じ回を予約し、同じ学校、同じ学年の、よりによって犬猿の仲のチームと組む羽目になるとは。

    「……サイアク」
    「あ、揚羽〜やめるですっ」

    受付の前でチーム漣の姿を認めた瞬間、揚羽は吐き捨てた。思いっきり顰められた顔で、蜂矢をじろりと睨む。

    「また、なにか仕組んだ?キミが」
    「ち、違います!確かに予約したのは僕ですけど、偶然ですよっ」
    「おい、チーム楪。なんでここにお前らがいるんだ?」

    北原が一歩前に出る。その後ろで南條はすでに状況を察していたが、面白いので黙っていた。

    「14時からの回は俺らが予約してんだよ。受付するからとっとと退け」
    「…14時の回はボクらの予約。キミたちが変えて。違う時間に」
    「ハア?何勝手なこと言ってんだ。いいから退けよ」
    「北原くん!揚羽もやめるです〜!10人まで一緒にできるゲームですのでっ、仲良くやりましょう?」

    その言葉に反応したのは、北原と同じく状況を把握できていなかった中小路だ。

    「お前らと一緒に?絶対やだね!」
    「春馬、やめなよ」

    北原に続いて飛び出していこうとする小柄な身体を、東堂が掴んで止める。
    中小路が参戦したことにより、チーム楪にも火がついた。

    「ハッ、そもそも野猿が参加していいゲームじゃない。解ける謎も解けなくなるのがオチだ」
    「蟻坂、やめろって」
    「なんだとお前!」

    東堂の制止を振り切って中小路が蟻坂に向かっていく。止めようとした甲本を尻目に、二人の諍いが始まってしまった。
    その間もリーダー同士の言い合いはヒートアップしていく。

    「キミたちと一緒なんてムリ。死んでも」
    「こっちのセリフだ。蜂矢のドジに巻き込まれて、永遠に出れなくなりそうだぜ。ハハッ」
    「〜〜バカにした。殴る!」
    「いいぜ?勝った方が時間変更でどうだ?」

    それまでずっと手元のスマホに目を落としていた香西が、静かに告げる。

    「今日は他に5人入れる回はないよ」
    「ハア?」
    「遊晴の言う通りだねー。直接確認したけど、人気だからほとんどの回、埋まってるってさ」

    いつの間にか受付にいた南條が首をすくめてみせる。
    それなら、と揚羽がさらに眼光キツく北原を睨んだ。

    「なら帰って。キミたちが」
    「ふざけんな。なんで俺らが帰らなきゃなんねーんだ。嫌ならお前らが帰れよ」
    「14時から、代表者蜂矢で予約してる5人でーす!」
    「!?」

    険悪なムードを切り裂いたのは、受付から響いた明るい声だった。全員が振り返ると、そこでは書類にサインを済ませながら、蛍灯が笑っていた。

    「時間も変えられないなら、しょうがないじゃん?俺も楽しみにしてたし!」
    「レイ…!」
    「蛍灯…」

    屈託ない蛍灯に、蜂矢と甲本はホッと力を抜いた。残りのチームメイト二人も、挙げていた手を徐々に下ろしていく。揚羽はまだ納得はしていない様子ではあるものの、フイと北原から目を逸らした。

    「ま、そうだよねー。こっちも5人、受付で」
    「おい聖!」
    「こいつらと一緒にやんのかよ!」
    「じゃあ、お前らやらないの?俺的には、創と遊晴と俺の三人でやった方が成功率高いって思うけどー?」

    南條の言葉に、ぐっ、と息を詰めて北原と中小路が黙り込んだ。それを了承と受け取った南條がサインを済ませ、正式に10人の参加が決まる。
    10人様、ご案内しますねー、と一部始終を見ていた受付の女性の顔は、かなり引き攣っていた。


    賑やかなBGMが響く部屋に、10人というなかなかの人数が揃っている。にも関わらず、全く楽しそうな盛り上がりはなく、説明役のスタッフは簡単にゲームの解説をしてそそくさと出ていった。こんな険悪なバチバチした空間には誰もいたくない。
    年末も迫る季節柄、部屋の内装はクリスマス風に飾りつけられており、さらに温度差に拍車をかけていた。

    「さーて、1時間しかないしね。さっさと解かないと」
    「キミに言われなくてもやる。ボクたちだけの力で」

    ギロリと南條を睨みつけて、揚羽が部屋の中央へ置かれた机へと向かう。机の上にはクロスワードの書かれた紙が一枚。縦横合わせて5つの番号が振られている。

    「この5つの言葉が、謎として部屋のあちこちに散らばってる感じですかね…はわわっ」
    「よく分かんねーけど、せっかくやるなら勝負しねえか?チーム楪」

    机に近づこうとして転びかけた蜂矢を、周りのチームメイトが慌てて支える。それを鼻で笑いながら、北原が紙を叩いてみせた。

    「この5つのうち、先に多く解いた方が勝ち、でどうだ?」
    「…望むところ。負けない。ボクのチームは」
    「5つの謎を取り合うって、俺的には少なすぎて効率悪いって思うけど」

    火花を散らし合うリーダーたちに、南條はため息をついた。蟻坂、中小路はやる気をみせており、残りの面々はいつものことと呆れている。
    ふと、南條の目に面白そうな輝きが光った。隠しきれない笑いを堪えながら、そっと揚羽へと近づく。

    「せっかく5つあるんだし、別のチーム同士で組んで解いてみようか」
    「…は?」
    「じゃあ俺と揚羽は1番のやつねー」

    たぶんツリーの謎だと思うから、と言いながら揚羽の腕を引いて引きずっていく。
    怒りで反応が遅れ、目を白黒させる揚羽の叫びをかき消すように、蜂矢が目を輝かせた。

    「それはいい考えです!せっかくの機会ですから、仲良くしましょう!ね、北原くん!」
    「ハ?何言ってんだ。おい聖、テメーも勝手なこと言ってんじゃ、」
    「ほら、2番の謎は…はわ、はわわ〜!」

    雪を模した白い綿に足を取られて、蜂矢が顔面から暖炉のセットへと突っ込みそうになる。すんでのところで北原の手が襟首を掴んだ。
    有罪!の怒鳴り声が響く中、残りの6人は立ち尽くしていた。
    リーダーたちがこうなった以上、自分たちも続かなければいけないことは分かっている。だが。

    「お前らと組むなんてお断りだ!」
    「こっちのセリフだ、野猿」

    いつもの二人の睨み合いが始まってしまう。なだめようとする東堂と甲本を押し退けて、二人の肩にポンッと手が置かれた。

    「じゃあこの二人で組むってことで!」
    「はぁ!?」
    「ほ、蛍灯!何を言って、」

    抗議のため掴みかかる中小路と焦る蟻坂をひらりと避けて、蛍灯が香西へと近づく。

    「俺と組もうぜ!」
    「いいよ」

    あっさり了承した香西と共に、二人は3番の謎へと向かって行ってしまう。東堂と甲本も、互いの顔を見合わせる。

    「じゃあ俺たち、かな」
    「よろしくな!」

    こちらも和やかな雰囲気で4番の謎へ。残ったのは5番の謎のみだ。
    中小路と蟻坂は、しばらく睨み合った。
    蟻坂が何度か首を振って、諦めたように机へと向かう。中小路も苛立ちを隠そうともせず、足音を鳴らしてそれに続いた。

    「こちらの足を引っ張るなよ」
    「お前こそ!」



    30分後。
    残り時間は半分となっていたが、埋まっているクロスワードは一つしかなった。
    4番を埋めた二人は、壁にもたれて残りのメンバーたちを生暖かい目で見つめていた。

    「揚羽〜、俺的には絶対それ、ヒントじゃないって思うけど」
    「うるさい!南條聖。邪魔するな」
    「ほら、早くしな?自分の力で解くんだもんな?俺は答え分かるけど、俺の力は借りたくないんだもんな〜?」
    「〜〜〜っ!殴る!」

    「あの〜北原くん…?」
    「なんだよ、今考えてるんだから邪魔すんな」
    「ご、ごめんなさいです。でも、あの、それ」
    「なんだこの英語?全然読めねーじゃねーか。有罪だろ」
    「え、えぇ〜とですね…」

    「マジで!?俺、まだその店行ったことないわ〜。このヒント、こっち?」
    「そうじゃないかな。ミーティングで使っても良さそうだったよ」
    「あっ、こっちの文字がアレかも…ミーティングとか、そっちのチームって意外と真面目だよな」
    「まあね」

    「だから、違うと言っているだろう!」
    「お前の説明、意味分かんねーんだよ!ここにサンタって書いてあるじゃんか!」
    「馬鹿か。それはこっちのヒントに決まってる。これだからお前と組むのは嫌だったんだ!」
    「俺だって嫌だ!」

    「時間、間に合うかな」
    「どうだろうな」

    東堂が呟き、甲本も気の抜けた返事を返す。元々チームの中でも真面目な方に入る二人は、この謎解きに適したコンビだった。他の組の相性の問題も、もちろんあるが。
    最初は互いにぎこちない空気があったものの、数分後には協力して謎を一番に解いた。

    「まさか俺らが一番乗りとはな」
    「聖だけならたぶん、違ってたと思う」
    「だよな。蛍灯も要領良いから早そうなんだけど」
    「あそこは二人ともマイペースだから、雑談が多いね」
    「残りの二組はまあ、うん」
    「予想通り、かな」

    あまりにも進行が悪そうな二組に、世話焼きの二人は手伝いを申し出た。
    が。北原にはうるせー、と追い払われ、蟻坂、中小路も自分たちで解くと譲らなかった。皆、意地になっているらしい。蜂矢の縋るような視線を、甲本も東堂も申し訳なく思いつつ、見なかった振りをした。
    その後も二人はざっと部屋を回ってみたが、どうにもクロスワードを解かないことには、次の謎へは進めそうになかった。
    暇を持て余した東堂と甲本が、雑談に興じ始めてから数分後。ようやく蛍灯が手を挙げてみせた。

    「解けたよー!」
    「こっちも、ほら。だいぶ時間かかっちゃったけど。なあ揚羽ー?」

    同時に立ち上がった南條も声を上げた。その後ろから揚羽が殴りかかるのを、ひょいと首をすくめて避けてみせる。
    三つのキーワードが書き込まれた紙を、六人が囲む。残りの四人がそこに加わるには、まだまだ時間がかかりそうだった。
    時計をチラチラ見ながら、東堂は焦りの表情を浮かべる。

    「どうしよう。やっぱり手伝わないと終わらないんじゃ…」
    「いや、三つ揃えばある程度予想できるよ。テーマがクリスマスって分かってるしね」

    次の謎は、とすらすら答えを出した南條に面々は目を剥いた。揚羽は変わらず、面白くなさそうにそっぽを向いていたが。

    「さて、単細胞たちにはあっちで頑張ってもらって、俺たちはせっかくだし脱出しようか」

    南條が手を叩いて、にこやかに方々へ指示を出し始める。指図するな!と食ってかかる揚羽を見ながら、甲本と蛍灯が呟いた。

    「まさか、これが目的で…?」
    「えっ、だとしたらすっごいね…」
    「口より手、動かした方が身のためだよ」

    香西の小声に、東堂も力強く頷く。日頃から南條と共にいる二人の表情を見て、チーム楪の二人はなんとなくこの状況を察した。
    南條聖の恐怖政治は他チームにも及び、残り時間は慌ただしく過ぎていった。



    所定の1時間が過ぎた、受付前のロビー。そこには無事時間内に謎を解いた10人が揃っていた。

    「結局、あの謎なんだったんだ?出られたからまあ、無罪だけどな」
    「廉は気にしなくていいよ。お疲れ〜」

    最後までクロスワードの謎を解いていた北原と中小路は、鍵が開いてからも状況が把握できずに首を捻っていた。
    対するチーム楪の真ん中では、蟻坂ががっくりと落ち込んでいた。

    「1時間ずっと野猿に国語を教えていただけだった…」
    「げ、元気出すです蟻坂!僕は英語でした!」
    「ソウ、フォローになってない」

    甲本が気の毒そうに、項垂れる肩を叩く。そこへ、スタッフを引き連れた蛍灯が受付から戻ってきた。

    「脱出成功記念に写真撮ってくれるって!ほら、並ぼ!」

    チーム漣も!
    そう誘いをかけた声に蜂矢も乗り、揚羽と北原にキラキラした目を向ける。二人は顔を見合わせ、すぐに逸らした。
    鼻を鳴らした揚羽が黙って立ち上がる。面倒くさそうな表情のまま、北原も身体を起こした。

    「チッ、まあしょうがねーか」
    「なかなかない機会だしね」

    南條が同意し、残りの三人も加わる。チーム楪の面々も、嬉しそうなサブリーダーの顔を見て笑みを浮かべた。
    こうして突如協力を強いられた脱出ゲームは無事に成功した。が、この後両チームは撮影の立ち位置で揉めに揉めて、スタッフを大層困らせることになる。

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