また推しカプができる話その日、あの時と同じくいい事が起こる予感がした。
「んもーーー!イズナ君!!」
バサッといつもと同じようにマットレスごとひっくり返される
ゴンッ
『ギャンッ‼︎』
*
*
*
*
『いらっしゃいませ〜』
「おや、今日はちゃんと離れて仕事をしているのですね」
『あ、ジェイド君〜そうなんだよ〜朝からラギーに釘刺されてるからさ』
「ふふ…それはいい事ですね。」
そう言えば今日呼ばれたのって確か…フロイド君がお休みなんだっけ…
一般公開の最終日にお休み取るなんて…
「今日は別にフロイド君休みじゃねぇっスよ」
『あれ!ラギー!そうなの?でもずっと居ないよ?』
「あそこ見て」
ラギーに言われてラウンジの一番奥。
もっとも人目につかない客席にセミロングの女性客と話をしているフロイド君が居た。
『あれは…もしや…』
「あの方はフロイドの恋人、セレーナさんですよ」
『ゔぁ!びっくりした…ジェイド君気配し消して来ないでよぉ…』
「あまりいつもの調子で行くと痛い目を見ますよ」
そんな怖いこと言わないでよ…
まぁでも今回はフロイド君がすっごいガードしてる感じあるし…
全然見えない…
「ほーら!余所見しない!今日までは時給高いんスから!しっかり働く!」
『はーい』
*
*
*
「ねぇ、凄く視線を感じるのだけど」
「んー?あぁ…アレは見ちゃダメぇ」
ひと段落着いたところで休憩がもらえた。
好奇心でフロイド君とその恋人、セレーナさんが座る席の近くにラギーと座った。
「なんでオレまで…」
『いーじゃん、気になるでしょ!僕が❤︎』
「ほんとイズナ君ってネジ取れてるっスよねぇ…」
ため息混じりに馬鹿にされた気がするけど気にしない。
だってあんなに綺麗な女性初めて見たんだもん!
セミロングで少しウェーブのかかった髪、少し吊り目でハッキリとした顔立ち。
そして何より
『でかい…凄い…うーん踏まれたい』
「俺が踏んであげよっかぁ?」
ヒェッ っとラギーの声と同時に頭を誰かに鷲掴みにされた
『イダダダダダ!ごめんて!!』
「見過ぎなんだよ沈めんぞ…」
フロイド君ガチじゃん!どうせなら女の子かラギーがよかった!!
彼女の方を見ると僕を締め上げてるフロイド君を見てコロコロ笑ってる…
ふと僕と目が合った
「ふふっ…私はセレーナ・セイグリッド。よろしくね」
そう言って笑う彼女はとても綺麗だった
『え!よろしくしていいんですか⁉︎是非踏んでください』
「は?」
「良いわけねぇだろっ」
ギューっと僕の首を締め上げている腕にさらに力が込められる
『ゴメンって!ゴメンって!』
「貴方、なかなか頭がお花畑なのね」
フッと煽るような笑顔で彼女は言った
『たんぽぽが満開です‼︎』
彼女は何を言っているのか分からないとでも言いたげな表情を浮かべ「フロイド、私そろそろ帰るわ」と言った。
「えーセナもう帰えんの?」
「また来るから…ね?」
そっか〜 としぶしぶ承諾したフロイド君は僕の首から腕を外し、彼女の腰を抱いた。
うーん。絵になる…
彼女は帰る時にこちらを振り返り、僕を見て煽るようにまた笑って店を後にした。
『……ラギー』
「なんスか?」
『僕新しい扉開きそう…』
「ダメダメダメ!その扉はダメ閉めて閉めて」
また一つ…推しカプができてしまった…。