本当は泣き虫数日前から予兆はあった。
声が少し出しにくくなってきた事
鼻が効かなくなってきた事
目眩があり、少しだるい事
でも今まで病気になんてなった事が無かったから大丈夫だと過信していた。
その結果流行りのウイルスにやられて、隔離され、今こうして一人ベッドの上で寝ている。
『はぁ…最悪だよほんと…』
いつもなら授業を受けて、ご飯食べて、ラギー追い回してってしている頃なのに…
『独りか…』
一人でいるのには慣れてるけど、独りなるのは本当に好きじゃない…
『流行りの病だから隔離するって…さびしんぼの人権〜!』
そうぼやいても返事が返ってくることはない。
『独りはやだな…』
独りになると思い出したくない事も頭によぎって来る。
父、母と二人共を目の前で看取ったあの光景
独りになったあの瞬間
『あ…やば…』
ポロッと涙が溢れた
『あー…クソ………もうやだ…』
一粒溢れるともう止められなかった
この学園に来て、ラギーや寮長、ジャック君達と出会ってから"寂しい"なんて感情は全く感じて来なかった。
きっと流行病のせいで心が弱くなってるんだ。
そうに違いない
『寂しくないし…大丈夫だし…僕強いし…』
必死に自分に言い聞かせ、心を騙す。
そうしないともっとダメになるから。
その後僕は泣き疲れて眠った。
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イズナ君が感染力の強い、流行りの風邪で暫く隔離される事になった。
正直心配しか無い。
あの子結構寂しがり屋なんスよねぇ…
先生には行くなって言われてるけど、少し顔見るくらいは許されるでしょ
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イズナ君が寝ている部屋に到着し、そっと扉を開ける。
「イズナくーん…っと…大人しく寝てるんスね…」
布団がこんもりと盛り上がっている。
頭までしっかり被っちゃってまぁ…
「息できなくなるっスよ」
頭まで被っていた布団をそっと捲ると、現れた彼の顔を見て眉をひそめた。
「泣いたんスか…」
目の下には涙を流し、擦った形跡…そして枕にもびっしょりと涙…
スラムの悪ガキが大泣きするのと変わらないくらい枕が濡れている。
何故泣いたのか…そんな事を考えていると寝言が聞こえてきた。
『んん…ラ…ギ…』
恐らく彼の発した言葉は「ラギー」。
自分の名前が呼ばれ少し嬉しくなり顔が緩んだ。
自分を探してもぞもぞと動く手をそっと握る
「ここにいるっスよ…独りにしてない」
聞こえたのか、はたまた偶然か『ん…』と一つ頷いた。
『仕方ないから先生が来るまでは、このまま居てやるっス』
そう言ってケータイを取り出し、「今日の部活は休みます。」とレオナさんにメッセージを送った。