お仕事上手くいかない🌸ちゃんとmty私は仕事がとことん出来ない。居ない方が円滑にみんな仕事が出来るのではないかと思うほど。
今日は大事な書類にコーヒーぶちまけたし、コピー機は紙詰まりを起こした、大切なデータはパソコンのどこに保存したか忘れた。ここまで言えば誰もが私は仕事が出来ない事はご理解して頂けるだろう。
「もうやだ……なんでこんなに仕事出来ないの……。」
誰もいないオフィスにひびき渡る、勿論仕事が出来ないので残業もしばしば。きっと普通の人なら定時で帰れる仕事量なのだろう。
ピコン
『仕事終わった?』
付き合っているたかちゃんからのLINEだ。仕事はまだ終わらない明日の会議で発表するパワーポイントにミスがないか何度も確認する。正直自分を信じてないので何度確認したって私の事だから見落としていてきっとどこかでミスをしてると思うと確認作業が止められない。
ブッーブッー
『着信 三ツ谷隆』
LINEを返信してなかっただからだろうか、たかちゃんから電話がかかって来てしまった。
『もしもし?』
「たかちゃんっ」
たかちゃんの声を聞いた瞬間に安心して涙ぐんでしまう。
『何?泣いてんの?』
「大丈夫!泣いてない!!元気!」
『お前のオフィス12階だっけ?』
「そ、そうだけどなんで?」
『もう12階しか電気ついてねぇよ?』
どうやらビル全体から人は帰っていて居るのは私だけだったようだ。
「あのねっ確認作業が終わらないの……ぐすっ……」
『やっぱ泣いてんじゃん。』
「確認しても確認しても不安なのっ」
『ちょっと待ってろ。』
そう言うと切れる電話。泣きながら誤字や入力ミスを探す、私はケアレスミスが多いのだ。オフィスにはすすり泣く声が響く。
「なまえ?いる?」
そう恐る恐るオフィスの扉を開けるたかちゃん。え?なんでオフィス入れたの!?と聞くと警備員のおっちゃんに話をすれば「あ〜なまえさんね!まだいると思うから連れて帰ってやんなよ彼氏!」と快く通して貰えたらしい。警備員のおっちゃんにも愛想良く挨拶しておいてよかった。
「やっぱ泣いてんじゃん。」
というと涙を親指の腹で拭うたかちゃん。
「たかちゃっ仕事ちゃんと出来てるか不安でっ……。」
「大丈夫大丈夫、なまえはちゃんと出来てるよ。な。何が分かんねぇの?」
泣きながらミスがないかずっと確認作業してたと言うとたかちゃんはパワーポイントを見てすぐに誤字を見つけてくれた。
「ここ。漢字間違ってねえ?」
「あ、本当だ……何度も確認したのに……。」
「流石に売上業績の数字とかは分かんねぇけど誤字ないか一緒に探そ。」
その後は誤字と差し込んでいるグラフを変更した。グラフは特にデザインをしてるたかちゃんだからか私が用意したグラフよりひと目で分かるデザイン性のグラフになった。
「ごめん、たかちゃん。」
「んーん。なまえはよく頑張ってるよ。」
「そんなことないよ、たかちゃんにまで手伝わせて。」
「こんな遅くまでお仕事していい子。」
「仕事出来ないだけだよ。」
「なまえは夜遅くまで仕事して頑張り屋さんいい子だよ?偉いんだよ?」
とろとろに砂糖を煮詰めたような甘い声でよしよしされる。
「ほら明日のパワーポイントは大丈夫だろ、帰んぞ。」
「たかちゃっ、ごめん……。」
「あーぁー、また泣いて大丈夫だからなら?今日なまえ頑張ったじゃん。俺も確認したし大丈夫だから。」
しゃがみこんで泣いてしまう私の背中をさするたかちゃん。さする手が温かい。
「なまえ、もう帰ろ。おうち帰って温かいお風呂に入っろ?今日はなまえの好きなシチューだよ?」
泣き止むまでずっと背中をさすってくれるたかちゃん。情けない。
「いい子いい子」
「なまえは頑張ってる」
「偉い子だねぇ一人でずっとやってたんだろ?」
「いい子はおうち帰ってぬくぬくしよくな。」
「今日はもう頑張ったよ。」
泣き止むまでずっと嗚咽で返事もできない私にずっと優しい温かい言葉をかけ続けてくれるたかちゃん。
「ん、落ち着いた?」
「ごめんたかちゃん、もう大丈夫だから。」
「んーそういう時は俺ありがとうがいいな。」
「あっごめん!たかちゃんありがとう!!」
「ぶはっまだ謝ってんじゃん。」
それからインパルスで帰るとそのまま一緒にお風呂入る。
「えったかちゃんもお風呂入るの!?」
「だってなまえ風呂で一人にしたらまた明日の仕事不安で泣くじゃん。」
うぐっそう言われれば図星なのだが、たかちゃんは気にせず服を脱いでいく。暴走族時代の筋肉はまだご健在で締まった身体が目に毒だ。
「何?なまえ入んねぇの?」
「や……入るけど。」
そう言うと私のスーツを脱がせてシャツのボタンを一つずつ外していくたかちゃん。
「やっ、自分で脱ぐよ!」
「んー?なかなか脱がないから脱がして欲しいのかなーって。ほらバンザーイ。」
そう言われてしまえばバンザイするとするすると服が脱がされてしまう。いつも甘いたかちゃんが更に甘やかしにかかってくる。これはいけない、たかちゃんに甘やかされると脳ミソがドロドロに溶けて3歳児くらいの知能しか残らないのだ。
「な、なんで今日こんなに甘いの?」
「残業頑張ったなまえちゃんは甘やかされる必要があります。」
「そんなことないです……」
「あります。いーのなまえは甘やかされとけば。」
そういうと脱衣所の棚から特別な日にしか溶かさないバスボムを持って湯船に入るたかちゃん。
「ほらこれ綺麗だろ?バラの花びらが中からでてくるんだぞ?」
「わっ綺麗!!!」
たかちゃんに後ろから抱きしめられる形で湯船に一緒に浸かる。特別広くない湯船は微妙な距離の密着を作り出し、たかちゃんの締まった身体が私の身体を包む。
俺の彼女はポンコツだ。可愛いポンコツ。ケアレスミスは多いし要領も悪い、小動物が一生懸命ジタバタ頑張っているのに近い。
今日だってなぁなぁにしてしまえば一緒に風呂だって入れちゃう。人に流されやすくて心配になる。
今も湯船の中で俺に包まれる彼女はやっとバスボムからバラの花びらが出てきて笑顔になった。
「たかちゃん!バラの花びら出てきた!」
「おー出てきたな。」
なまえはデロデロに甘やかすと少しワガママになって幼くなる。それが可愛い。いつも気が張ってて警戒してる小動物が俺の前では警戒心ゼロで身を委ねてくる優越感はたまらない。
「なまえ頭洗うぞ。」
「えっいいよ!自分で洗える!」
「だーめ。残業頑張った人は頭洗われるのです。」
そう言うと渋々俺の前に座るなまえ。シャンプーが顔に垂れないように丁寧に洗っていく。普段俺が使ってるメンズシャンプーとは違いいい匂いがするシャンプーに理性が溶かされる。
「ちゅっ」
「えったかちゃん今何した?」
「んー?明日なまえが発表頑張れるようにおまじない。」
そう言うとなまえの首筋には赤い花びらが一枚散った。今は冬だしポニーテールしなければバレないだろう。
「シャワーで流すから目瞑っとけよ。」
そう言ってシャワーでシャンプーを丁寧に流していく。その後にリンス、トリートメントしてなまえの髪をサラサラにして行く。
私もたかちゃんの髪の毛洗う!と言うなまえをなだめて湯船に浸からせて俺は自分を超特急で洗う。
お風呂から上がって脱衣所で柔軟剤でふわふわにしてたなまえをタオルで包んで拭いてやる。ここまで来るとなまえは甘やかされてデロデロになっていて羞恥心も風呂場に置いてきたのか世話したい放題だ。なまえのお気に入りのパジャマを着せてダイニングへ連れていく。
シチューを温め直してなまえはテーブルに座らせる。
「たかちゃんいい匂いするねぇ」
「おっ、それは良かったワ。」
猫舌のなまえに合わせて少し温度の低いシチューをテーブルに並べていただきます。
俺にしたらぬるいシチューだが猫舌のなまえはふーふーして食べている。これですら熱いのか?可愛すぎないかこの生き物???
それから一緒に歯磨きしてベッドへ滑り込む。冷えきったベッドは冷たく風呂で温めた体温を奪っていく。電気毛布買うか……。
「たかちゃん寒いねぇ」
「ほらもうちょっとこっちおいで。」
そういってなまえを抱きしめる。
「なまえはいい子だなぁ」
「なまえいい子?」
「うんいい子、お仕事頑張って偉い。」
「いい子かなぁ?」
「いい子だよ。」
背中をトントンしながらいい子いい子しているといつの間にか腕の中からすぅすぅと寝息が聞こえる。たくさん泣いたし疲れたのだろう。
俺は眠っているなまえに一つキスをした。
「おやすみ、なまえ」