プロポーズ大作戦黒を基調とした店内。テーブルは何だか高級感のあるクロスが敷かれていて、淡いオレンジ色のライトがこの二人掛けのテーブルを照らしている。如何にも高級です、という感じの飲食店。二人の知名度を考慮して個室に変更してくれた店側の気遣いも相まって世一はむず痒さを覚え、小さく座り直した。自分には日本全国何処にでもある見慣れたファミリーレストランや、周囲の声に自分達の声も掻き消されてしまいそうな程に賑やかな大衆居酒屋の方が性に合っていると思う。
「なあ凛」
「⋯⋯⋯んだよ」
一緒に来た相手が蜂楽や黒名のように気心の知れた相手であれば、この非日常感もスパイスとして楽しめたのかもしれない。でも如何せん今日は一緒に来た相手が相手だ。素直に店の雰囲気を楽しんだり、料理の味に舌鼓を打てる程世一も呑気な男ではない。今、目の前にいる男の真意を図りかねていた。
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