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    rocca

    @xe_msiaccor

    mdzs中心(CP忘羨・その他好きキャラ)にイラストや漫画を描いてます

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    rocca

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    診断メーカーお題で書いて限定公開していたものです

    #魔道祖師
    GrandmasterOfDemonicCultivation

    影踏み 石蒜(=彼岸花)は血を吸って赤くなるのだと子供の頃に教えられた。
     墓の周りによく咲いているので真実味がある。実際は花の持つ毒性を利用して、墓の下に眠る死者の身体を鼠やモグラに食い荒らされないようにと植えられている。
     そして毒性がある花に子どもを近づけないために不穏な印象を植え付けたのだろう。
      
      妖艶で燃え盛る炎のような群花。
     あれから何度目かのこの花が咲く季節が訪れた。
     季節が巡れば咲いてまた枯れ果てていく数多の草花のうちの一つに過ぎないが、今はこの花を見かけると目が離せなくなる。 
      その吸い込まれるような赤を見て、確かに血を吸っているのかもしれない、と藍忘機は呟いた。
    「含光君?」
     隣に並び歩く藍思追が聞き返したが
    「何でもない」
     とだけ返し、花から目を逸らした。
     艶やかな赤。その身に毒を纏い、人々から怖れられながらもその場に留められている。
     彼の肉体が本当に消滅してしまったのであればこの花に血肉を吸われたのかもしれない、むしろこの鮮やかに目を奪う花自体が彼なのではないだろうか、と一瞬馬鹿げたことを考えた自分に呆れてふっと笑みが漏れた。
     彼と出会う前ならこんなくだらないことを考えること自体あり得なかった。
     
     
     世に存在する大方のことはくだらない。
     
     規律の中で心を乱すことなく己を研鑽し続け、藍氏双璧の片割れとして驕ることなく常に高みを目指し世の平和を守っていく、それが自分に与えられた全てだと思っていたのに。
     彼に出会い、くだらないと思っていたささやかな戯れが、他愛もない会話が、十年余り経った今も色褪せることなく脳裏に焼きついている。
     ふと、目をやると思追がちらちらと自分を見ているのに気がついた。
    「思追。」
    「はい、含光君。」
     見てはいけないものを見てしまったような気がして、思追はできるだけ平静を装って返事をした。
    「この花をどう思う。」
    「石蒜…ですか。」
     普段とは雰囲気が違う藍忘機から予想だにしなかった質問をされてついには動揺が隠せなくなった。
    「美しい花…だと思います。でも…」
     言い淀んだ思追はじっと花を見つめている。
    「でも、こんなに華やかに咲いているのに近づくことを拒まれているような…そんな気がします。」
     藍忘機は何も言わない。
     緊張しながら見上げると、瞳に赤を映しながら柔らかな表情を見せていた。
     花と葉が永遠に出会う事がない花。花言葉の「再会」は皮肉か希望か。
     月明かりに石蒜の影が伸び、藍氏二人の影と重なりながら暗闇に溶けていった。
     
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    sgm

    DONEジェイド・ダイナスティの冒頭の御剣の術を見てたら、あれ、割と剣の上でいろいろできるでは?てなりました。
    夜空でかち合う曦澄。
     思い立ってしまってから行動に移すのは自分でも驚くほどに早かった。それほどまでに切羽詰まっていたということか、と三毒の先を姑蘇の方面へと向け、空高く飛びながら江澄は自嘲した。
     ここのところ忙しくて、三か月ほど藍曦臣に会えていない。仕事でも私事でも。文は交わしているし、三か月会えないことなど珍しくもない。そもそも金丹の力によって加齢は一般の人間よりも緩やかなのだから高々三か月会えない程度大したことではない。けれど、色々と重なった結果、江澄は疲れてしまった。
     金凌が蓮花塢に訪れていないため、手軽な癒しである仙子も吸えない。かといって仙子で癒しを取りたいから蓮花塢まで来い、などと金凌を呼び出すわけにもいかない。
     ならばせめて、顔見知りの商家で飼っている犬で癒しを得ようと視察ついでによれば、ちょうど今発情期で誰彼構わず足にしがみついて腰を振るので、頼むからそっとしてやってくれ。宗主の足に自分の犬がしがみついているのなど申し訳なくて見ていられない、と泣きつかれてしまっては無理に近づいて撫で繰り回すわけにはいかない。
     手頃な癒しを取り上げられ、仕事は山済みで、ついでに今日の夕餉で愛用の茶杯 3687