未開封の乾麺の消費期限は6年前だった色々あったが犬飼と無事に交際が始まり、初めて犬飼の家に遊びに来た旬は絶句した
あまりにも生活感が感じられない空間に、引っ越したばかりなのかと思い確認してみれば10数年は此処で寝泊まりしているとの回答にこめかみがズキズキと痛んでくる
ハンター協会は常に人手不足
それは理解しているし、交際の折に犬飼から時間が取れないと散々言われそれでもと了承し理解も覚悟もしていたがまさかここまでとは…
「犬飼さん…冷蔵庫開けても大丈夫ですか?」
「え、あぁ構いませんが…」
「ありがとうございます」
初回から冷蔵庫を開けるのは非常識なのは百も承知だが、あまりにも生活感がなさすぎる為に強硬する
流石に寝室を確認するよりも台所確認の方がまだハードルは低かった
台所に入りまず目に入ったのは使い古されたコーヒーメーカーがぽつんと置いてあり少し安堵するが、回りを見て固まる…1アウト
次にシンク周りを見渡し…2アウト
意を決しガパリと冷蔵庫を開けて絶句する…3アウト
開けたばかりのドアを閉めてため息がこぼれる
あまりの酷さにどうしたもんか…と頭を押さえる
「あの、大丈夫ですか…?」
中々戻ってこない旬を心配してか台所に来た犬飼につい恨めしい目を向けてしまう
「……犬飼さん」
「えっ?どうかされましたか?!」
思いの外沈んだ反応の旬に何かあったのかと寄ってくる犬飼の腕をつかみキッと見上げると、少し戸惑いながらも目を合わせてくれる犬飼の顔が良すぎてキュンとするが今は、ときめいてる場合ではない
「あの、水篠さ…」
「犬飼さん…来て早々ですけど、買い物行きましょう」
「………はい?」
調味料がなにもない、未開封の箸やテープが付いたままの片手鍋、トドメの栄養剤と水のみの冷蔵庫
このままでは犬飼さんが死んでしまう…
少しでも人らしい生活をさせるために、混乱している犬飼を引き摺り初のお家デートは買い物デートへと路線変更となった
…片手鍋と箸は自分で買ってたんですね?
その、ラーメンでも作って食べてみようかと買ったんですけどね…
コンビニって便利ですよね…
フッと黄昏る犬飼さんにこれ以上責める言葉はかけられなかった