ラムネふわりと甘い香りがして首をかしげる、何処か懐かしいが、思い出せない
「諸菱くん香水つけてたっけ?」
「え?いや、特には?」
どうかされましたか?と首を傾げ、旬に向き合う諸菱から微かに甘いが、くどくない香りがしている。
よく見れば諸菱のくちがモゴモゴと何か咀嚼しているのか動いているので、原因はきっとソレなのだろう
「仕事中に食べてるなんて珍しいな?何食べてるんだ?」
昼休憩時は例外だが、普段就業中の諸菱は眠くなるからと飲料以外の食べ物を口にしない
それを徹底している諸菱が珍しく食べており、旬は益々気になった
「あぁ、これですか?ラムネです」
「……ラムネ?『
「はい、集中力途切れそうになった時とかに食べると結構良いんですよ、これが」
そう言いながら諸菱は、デスクの引出しからパウチタイプの小さい袋を取り出しカシャカシャと振り見せる
今は我進の副ギルドマスターとして就職しているが、元は諸菱建設の御曹司である、そんな諸菱が駄菓子のラムネを手にしている事に違和感が生じ旬は少し固まってしまう
「諸菱くんもラムネとか食べるんだ…」
「僕だってラムネぐらい食べますよー」
あ、水篠さんも食べます?なんて笑いパウチを開ける諸菱に旬は躊躇いながら手を差し出す
ラムネなんて随分と昔、葵と分けながら食べたきりで、それを、思い出し少しだけ欲しくなった
「はい、水篠さん」
「…あ、いや?諸菱くん?」
差し出した手にラムネは転がらず、諸菱が旬の前に摘んだラムネを向ける
「あの…」
「水篠さん」
あーんですよ、あー…
ニコニコと純粋に笑う姿にどう拒めば良いのか分からず、諸菱の押しに負けた旬は大人しく口をあけラムネを食べた
「…っ?」
口の中に入ってきたラムネの味は記憶のソレとなんら変わらないのに、シュワシュワと口の中で弾ける感覚に目を見開き驚く
「あれ?お口に合いませんでした?」
「ぃ、いや、…なんかシュワシュワする…」
「あぁ、それ炭酸ラムネっていいましてパチパチ弾けて面白いですよね」
コロコロとラムネを舌で転がせばシュワシュワと弾け続ける感覚に少し眉間にシワが寄る、旬にとって少し苦手な感覚だった
微妙な顔でラムネを転がしている旬に諸菱は不安そうな顔になり大丈夫かと旬に確認する
「味は、好きなんだけど…ちょっと炭酸は苦手かな…」
「あーダメでしたか…」
「うん、ごめん…う…」
転がして溶けるのを待つより噛んでのみきってしまったほうが早いか…と軽く噛みしいれば簡単に崩れ一気に口の中で炭酸が弾ける
モゴモゴとなんとも言えない顔で咀嚼していたら不意に諸菱に顔を固定されキスをされ旬は驚き固まる
「んん…っはぁ…ちょっ」
驚いている間に旬の口内に舌を入れ、かみ砕いたラムネごと一緒に嬲られ諸菱の舌と弾ける炭酸の感覚に赤くなったりしかめっ面になったりと旬は忙しい反応をする
諸菱に開放された時にはラムネの味なんてとっくになくなっていて、真っ赤になった旬がもっと欲しいと、今度は諸菱の口にかぶりついた