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    ON6969

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    バニーの日、アスキラ書こうとしたけど私は変わった路線を選びバニー服を入手する准将をかくぜ。

    バニーの日8月2日
    オーブでもプラントでも世界中の国家でも祝祭日ではない。
    今年はただの平日の一日。
    だから多忙を極めるキラが非常に珍しく、おそらくコンパス設立以来初の数日間の休暇申請は無事に受理された。
    承認者のラクスもニッコニコだったし、ミレニアムのクルーたちは喜びに咽び泣いた。
    感極まりすぎた一部はどこから入手したのか。籠いっぱいに花びらを集めてきて、ミレニアムを降りるキラの頭上にフラワーシャワーを浴びせて見送った。

    大袈裟すぎるな、と思いはしたがみんなが嬉しそうに笑っているので。
    キラは穏やかに微笑みながら、手を振りタラップを下り、港へと降り立った。

    オーブでの休暇を申請したときから誰かが手配したのだろう、迎えの車に乗り込んだ。
    運転主をバックミラー越しに確認するが、残念ながら緑の双眸は映らなかった。

    静かに動き出した車の後部座席、黒い曇りガラスの向こう、小さく見えるミレニアムの甲板の喧騒がまだ伝わってくる。
    キラは静かに双眸を閉じて、見送ってくれた者たち……コノエ艦長はブリッジから離れなかったが、アーサー副長は甲板まで来て両手を振っているのを思い出した。
    シン、ルナマリア、アグネスは特に嬉しそうだった。
    誰かに言われてではない、キラが自らの意志で休みを取った、だからしっかり療養するか、出かけるとしてもプライベートを楽しむのだと、みんな信じて疑わない。
    別に嘘じゃない。
    ぱちりと、目を開ける。
    これからの自分はするべき行動を思うと、口角が片方だけあがり、ふっと笑ってしまう。

    ま、ぼくはこれからバニー衣装を買いに行くんだけどね!


    きっかけとなったのは12月24日。
    半年以上前かつ、去年である。

    世の中には祝祭日でも働かなくてはいけない職種があり、キラがまさにそうだ。
    人が多く集まるからこそ、テロや事件も多くなる。爆弾程度のテロならコンパスの出番ではないが兵器を用いた武力侵攻が起きないとは限らない。
    ミレニアムは有事に備えて宇宙空間で待機。
    キラは率先して、夜間待機の役目を負ったし、整備員たちが早く休めるように手を貸した。
    シンやルナマリアには特に時間を作ってやりたかったし、家族のいるクルーたちにも本国との通信の時間をあげたかった。
    食堂でささやかなクリスマスパーティーも開かれたが、結局キラは行かなかった。
    24日の夜を差し入れのケーキを食べながらずっとキーを叩き、武装パーツのシステムの調整に手を出して過ごしたのは、キラの恋人も似たような状況だったから。
    オーブには戻っているらしいが、キラは宇宙にいるのでどのみち会えない。
    アスランもキラと同じく恋人や家族のいる同僚たちを早く家に帰すため、色々と仕事を請け負っていた。
    ぼくらは似たものだ同士だなぁと思いながら、気分転換でもと。
    ミリアリアやサイのSNSを覗いて(家族とのパーティー写真が多い)、ミリアリアがイイね!を押した投稿がキラの目に入ってきた。

    名前欄も本名ではないから覚えはなかったがプロフィールを読んだ限り、ミリアリアのカレッジ前の学校の友人、キラとも同年代の女の子だった。
    写真は見バレ防止に首から下だけ、袖や肩ひものないビスチェのように鎖骨が丸出しの真っ赤なワンピース姿の女性が映りこんだ鏡を撮った写真だった。端末を持つ手も一緒に映っている。
    #この格好で彼氏の家で待ってるんだけど引かれないかなぁ?
    ↳絶対に大丈夫だって!サプライズ?
    ↳約束はしてるけど、このカッコはサプライズ!

    以下、永遠に続きそうなやり取りは見ないまま、キラは打ち込み途中の画面を保存して、仕事用の液晶モニターをそっと閉じた。
    キーボードから手を離し、そっと腕を組んだキラは、ひたすら端末画面に映るサンタワンピースの女性……の投稿コメントを見る。

    ……………戦場に出てばかりで、同年代の友人知人は全員が軍や政府関係者。
    遠距離恋愛中、かつワーホリ気質の自分たちは、同年代たちから取り残されている自覚がある。
    同い年の恋人たちがどんな聖夜を過ごすか、その具体例を今、キラは目にしている。
    感慨深さに浸りながら、端末のカレンダーアプリを見る。
    12月24日の日付、サンタとトナカイが描かれている。
    翌年の分には、鏡餅、初詣、2月にはバレンタイン……カレンダーの絵柄はイベントにまつわるものばかり。
    アスランとは恋人同士なのに、イベントごととは無縁なまま。
    何か一つ、一つだけでも。
    来年のうちに……


    そんな決心をして、半年以上。
    アスランと連絡を取って8月の上旬に休みを合わせることになって。
    キラはなにかイベントってあるかな?と知と虚構に満ちた電脳の海を検索して

    「バニーの日……」

    決心して半年以上、アスランと会えてもそれらしい祝祭日を一緒には過ごせなかった。

    いやバニーって……だって……ぼく男だしさぁ……
    サンタくらいなら…できる、と思うけど、さすがにバニーって……

    と悩みつつ、機会のないまま半年以上経過したことがキラの頭から離れない。
    返信にあまり時間をかけられないのでじゃあ8/2から数日間!とアスランへメッセージをお送り。
    指をサッと動かして通販サイトを開いて「バニー衣装」で検索して、いくつか商品を見てから「ミレニアムには届けてもらえないから」っと自分にツッコミをいれながらキラはウィンドウを閉じた。
    宅配ボックスの利用?キラ・ヤマトがバニー服を通販した履歴が残るのは耐えられない。
    キラのオーブの自宅とは親のいる実家のことであり、キラ・ヤマト宛 品名「魅惑のエナメルバニー服」を送れるわけない。
    万が一、親に見られたらアスランを殺してキラも死ぬ。


    だからお店で買うしかないんだよね!


    オーブに着いたのだからとカガリに挨拶をして、彼女は多忙なので時間は取れなかったが……もとから休みに入ったキラを引き留める気はなかったのだろう。
    15分もしないうちに官邸を後にすることになった。


    私服に着替えてよし、買いに行くぞ!と気合をいれて官邸から出てきたキラの前には一台の黒塗りの車と数人のSPが待ち構えていた。
    誰かVIPでも待っているのかな、あ、ぼくの後ろにいるとか?すみません、横にずれますね……っと横にステップで移動してみたが。
    「キラ様」
    あ、ぼくだった。後ろに誰もいない、キラは何もないところで突然に横ステップした准将になってしまった。
    オーブの軍服をした彼らはよく見れば、顔見知りの者たちばかりだった。
    たぶん、休暇中だから階級ではなく名前で呼ばれた。一人が後部座席の扉を恭しく開けながらキラを見てくる。
    「あの、みなさんは」
    「本日、キラ様の護衛を務めさせていただきます……」
    その後に全員分の名前と階級を教えてもらうが、キラはそれどころではない。
    「護衛なんて、そんな……大丈夫ですから」
    おかしい、頼んだ覚えはない。
    首を振りながらキラは笑顔を張り付ける、内心は冷や汗だらけだ。
    「休暇中はザラ一佐がご一緒なので護衛は不要でしょうが、本日の移動の間は我々が」
    キラ様をお守りします!と全員が気合を入れる。オーブ軍はコーディネイターもいるが人口比からしてナチュラルが多い。細身でも馬力のあるコーディネイターと違い、ナチュラルで軍人を務める彼らは筋骨隆々の大男が多い(サンプル:キサカさん)
    キラは今、マッチョ数名に囲まれている状況だ。
    「今日は寄るところもあります……単なる休暇ですから心配しないでください」
    「いいえ!キラ様の身に何かあってはいけません」
    「カガリ様にも顔向けできません!」
    馬鹿言わないで、ぼくがこれからどこに行くと思ってるの?
    身長差も横幅もえげつない君たちを連れて、バニー衣装を買いに歓楽街に行けって言うの
    なんて言い返してしまったら……、結論だけ言うとアスランを殺してキラも死ry
    「いいですから!ぼくは大丈夫です!」
    「そうはいきません!」
    「キラ様をお守りするのが我々の役目です」
    無理!無理に決まってる。
    バニー服がどこで売っているのか、調べる時間はブルーコスモスの拠点を潰している時間によって削られた。
    オーブ、オロファト島にある、最大歓楽街「カブキ」にならたぶん、売っているだろう。
    キラはこれから公共機関を乗りついて腹積もりなのに。
    『歓楽街に行くからついてきて欲しくない』と言えば……ダメだ、プロの彼らがこっそり尾行してきたらキラには気づけない。色を買いに行く噂でも立てられたら、アスランに怒られるなら……まだいい。お仕置きくらいは。
    最悪なのはカガリとラクスも出てくることだ。
    「あぁ、もう!」
    苛立った口調で、キラは荒っぽい仕草で片手で髪をかきあげる。
    慌てふためくオーブ軍人には申し訳ないが、今は無視させてもらう。
    キラは決意を決めた。本当はやる気半分、正気に戻って取りやめにする可能性もあったのに、目の前に障害が立ちふさがったせいで、燃え上がってしまった。
    やるしかない、彼らを振り切って、バニー衣装を手にしてレジに並んでやる!


    大人しく車の後部座席に収まったキラは行き先を歓楽街の隣に位置する、ターミナルステーションのある地名を告げた。
    ここは駅ビルや百貨店も多いから休日のショッピングにちょうどよく、護衛の彼らにも怪しまれなかった。

    土産や総菜でも買いに行くと思った?残念だったね、ぼくはバニー服を買いにいくんだよ!

    キラは涼しい顔して、端末を取り出した。充電させてといってケーブルで車内のポートと繋げた。
    そこから車内のシステムに侵入していく。自動運転と手動を切り替えられる黒塗りの車を手中に収めるのは難しくない。
    ナビゲーションに細工して、目的地ではない場所を目指させて……本来は護衛対象のキラは後部座席の真ん中に座るが、オーブの風景を見たいから窓際がいいとねだってなんとか了承させた。
    もはや運転手がハンドルを切るのではなく、キラがハンドルを切っている。
    さすがに土地勘のある者もいるのか、キラの真の目的地に近づくにつれて車内にいる者たちの顔つきが険しくなってきた。
    助手席に座る男がカーナビの液晶を操作しようと手を伸ばしたのが見えた。
    頃合いか。

    キラが端末を操作して、あいた路肩に車を急停止させる。ケーブルを引き抜く勢いで外し、ロックを外したドアから転がるように車外に出て、ドアを足で蹴りつけて閉める。指先一つですべてのドアと窓にロックをかける。
    キラが弄らせてもらったので車内からドアを開けることはもうできない。
    「ごめんなさい、これぼくの仕業です。襲撃ではないので安心してください」
    慌てふためく軍人たちの閉じ込められた車に頭を下げてキラは全速力で駆けだした。
    エアコンと換気システムは弄ってないから、すし詰めでも死ぬことはない、許して!
    けして振り向かず、キラは人混みを器用に避けながら駆けていき、出発寸前だった無人軌道の交通機関へ乗り込んだ。
    うん、時間通り。

    閉じたドアに背中を預けて、ほっと息をつく。
    キラは胸ポケットに入れているトリィに触れると電源を入れる。
    ひょこっと顔を出したトリィが羽ばたいて、キラの肩の定位置にとまる。
    にっこり微笑みながら、キラは目的地へ着くのを待った。





    「……冷静になると、」
    鏡に映る己の、貧相な体が纏う黒くてテカテカの光沢を放つレオタード。
    「恥ずかしな、これ……」
    勢いで行動してきたキラを冷静にさせる威力があった。
    アスランは報告や引継ぎがあり、夕方くらいに家に着く、と昨日の時点で連絡があった。
    オーブ首都内にあるアスランの家(まぁ半分キラの家でもあるが)に先に到着したキラは己の行動のきっかけとなった女性の投稿を見倣って、バニー衣装をきて帰りをまつことにした。


    購入したバニー衣装の付属セットはつけ耳としっぽだけ。
    パッケージにいるおっぱいの大きな女の子が網目のおおきいタイツを着用していたので、わざわざ別のフロアでタイツも買った。
    通販も利用できないが、対人のレジでの購入がどれほど厳しくハードルが高いかをキラは舐めていた。
    自分のサイズさえわからないまま商品を探すのも手にしてレジに向かうのもすごく恥ずかしかった。頬は熱くて、無駄に手で仰いだりした。堂々としていれば、彼女に着てほしくてバニー衣装を買う男に見えるとしても。
    しかし追われている感覚、撒いた護衛の軍人たちが「キラ様!」と叫びながら追いかけてくる可能性がずっとつき纏ってきた。
    だからこそ冷静に我に返る機会のないまま、バニー服を買うんだ!という決意が揺らぐことがないままキラは走った。
    ありがとう、セルフレジ。電子決済。


    でだ。
    投稿写真を真似して、バニー衣装に身を包んで、等身大の鏡に全身を映して、端末でぱしゃっと顔が見えないように写真を撮ったあたりで……
    キラは目が覚めた。
    「うわ……っぼくってこんな、」
    貧相というか、骨というか。
    肩出しのレオタードはキラの華奢な肩を露にし、胸当て部分はぺろりと裏返っている。
    ▲の端を掴んで戻そうとするが、キラの胸では大きな隙間ができているせいでどう頑張っても乳首が丸見えになるので諦めた。
    アスランが帰宅する寸前につければいいやとうさ耳カチューシャは机の上。
    トリィがなんだこれ?と言わんばかりに嘴でつついている。
    衣装はフリーサイズなのでお腹周りは布地があまっているし。
    「女性用なのに……」
    背面の紐でサイズを調整するのに、限界まできつく締めているのに、腰まわりがぶかぶかだ。
    わざわざ別フロアで購入した網タイツ、大きな網目のタイツに覆われた女の子の太ももはむちむちが強調されて色っぽく見えるのに。
    「違う、これじゃない感がひどい……」
    肉眼でも、端末の画面に映る写真を見ても、こう……なんていうか……

    どうしてぼくは自発的にバニー服を着ているんだ?
    アスランに着てって言われたわけでもないのに。

    キラはぺろんと裏がっている胸元の生地を指先摘まむと、裏地のないペラペラな感触だ。
    チープさがキラの頭を冷やしていく。
    フルセットで5桁には行かなかったからそれ相応だが。
    「……着替えようかな」
    でもな、せっかくここまで頑張ったんだし……


    ホームセキュリティを統括する壁に設置された端末の、玄関部分を示すランプが赤から緑へ変わるのが、視界の端に見えた。
    アスランが帰ってきたのだ。


    屁理屈の塊なので
    どうしてキラがバニー服着てくれるのかと、どこで買うかを考えないと書けなかった。
    アスキラ辺は次の8月21日に頑張ります!
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    ***

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    N県からふたつほど県境を越えたところにあるこの都市に来たのは、以前手当をした患者の経過を見るためであった。その用事を終えたときはまだ昼前であったが、帰路に着こうと大通りに出たところで急病人に行きあったのだった。
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