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    かほる(輝海)

    @kahoru1010

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    シティーハンター(獠香)
    逆転裁判(ナルマヨ)

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    かほる(輝海)

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    シティーハンター
    冴羽獠×槇村香
    原作終了後だけど、関係性はプラトニックでも一線超えてても、どちらでも可。

    香ちゃんが編むマフラーにソワソワする裏世界ナンバーワンの男😂

    #シティーハンター
    cityHunter
    #cityhunter
    #冴羽獠
    saeha
    #槇村香
    makiMurakami
    #小説
    novel
    #掌編
    conte
    ##CH

    ある日、散歩から帰ってくると、香がリビングで編み物をしていた。平面で長方形の形をしたそれは、マフラーに見えた。

     香は、手芸が得意だ。俺を模したマスコットやストレス解消用の人形なんかも作っている。服やズボンに穴が開いたとしても、縫って修理をしては使い続けている。そういや槇村も、穴の開いた靴下を繕って履いていたっけな……。いくら俺が「貧乏くさいから止めろ」と言っても、「直せばまだ履ける」と、頑なに言って聞かなかった。兄妹揃って、ものを大切に使うと言うことは、身に染み付いているらしい。

     そんな香のことだから、別にマフラーを編んでいても驚くことはないのだが、問題はその色とサイズだ。太めの毛糸でザクザクと編まれたマフラーは、やや幅が広い。しかも、色が鶯色と来たもんだ。……これ、どう見ても男物のマフラーだろ。
     だが、残念なことに俺はマフラーを使わない。首の辺りがチクチクするから嫌いなんだ。一体お前は、誰にマフラーを編んでいるんだ……?
    「あ。おかえり」
     香が手元から顔を上げて、俺に声をかけた。今、俺に気づいたわけでもねぇのに、わざとらしく言うところが何とも腹立たしい。
    「……おぅ」
     そのマフラーを、どうするつもりなのか。それを聞きたいのに、どうしても言えない。答えを聞くのが、怖い。別に香が誰に手編みのマフラーをプレゼントしたって構わないのだし、俺に止める権利はねぇ。そもそも、誰のために編んでいるのか、俺が知る必要はねぇし、香だって話す必要はない。まさか、俺がつけないのを承知で俺に……ってことはねぇよな。それはさすがに申し訳ない。
    「それ……」
     これだけ考えて口から出てきたのは、その一言だけだった。
    「あぁ。あんたのじゃないから。安心して」
     香はぶっきらぼうにそう答えると、また針先を見つめ、黙々と編み出した。
    「……そうか」
     香は一目一目、毛糸を針に掛けては引き抜いていく。それの繰り返し。マフラーなんて買えばいいのに、わざわざこんな手間をかけて編むなんて、よほど思い入れがあるらしい。そうなると、いったい誰にプレゼントするつもりなのか、余計に気になってしまう。俺はズボンのポケットに両手を突っ込んだまま、香の作業を見つめていた。
     一段編み終わり、軽く目を扱いて均すと、香は針を持ちかえた。
    「今までずっと、辛いときも悲しいときも、あたしと一緒にいてくれた人にね。あげるの」
     香はまた毛糸を指に掛け、新しい段を編み始めた。

     辛いときも、悲しいときも、香と一緒にいた男……? 俺以外に、そんな男がいたと言うのか……? 一体誰なんだよ! そいつは!
     俺が問い詰めれば、きっと香は答えてくれるだろう。だが、香も、送る相手をはっきりと言いたくはなさそうだった。
     編み終わったところを眺めては満足そうに微笑み、その男が身につけているところを思い浮かべながら、編み終わった長さを測っている香を見ていたら、俺は何も言えなくなってしまった。

     数日も経てば、マフラーは着々と長くなって行った。マフラーが長くなるに連れ、俺のイライラは募る一方だった。あれが完成したら、香はその男にマフラーを届けに行くのだろう。もしかしたら、そのままその男と一発なんてことも……。俺はブルブルブルと頭を振り、最悪な妄想を頭から追い出した。女が男へ手編みのマフラーをやるなんて、よほど好きじゃないとできねぇよ。だから逆に、それを受け取る男の立場なら、その気持ちに応えたいと思うのは当然のことだろう。少なくとも、俺ならそうする。「その日」がどうしても来てほしくなかった俺は、針を片方だけ隠してみたり、編みかけのマフラーが入っていたカゴを移動させてみたりした。だが、香はどこからかきちんと見つけてきては、マフラーを編み進めていた。

     そんな俺と香の攻防も、すぐに終わりを告げた。ベランダの物干し竿に、編み終わったマフラーが吊り下げられていたのだ。今すぐこのマフラーを毟り取って捨てちまえば、相手の手に届くことはない。そんな最悪なことを思いながら、干されていたマフラーへ手を伸ばすが、すんでのところで俺の手が止まった。あれだけの手間と時間をかけて、しかも俺の妨害工作を乗り越えてまで香が仕上げたマフラーだ。結婚式の時の海坊主じゃねぇが、「ひと目ひと目、指が突き刺されるような思い」が伝わってきちまうのだろう。そんな、俺以外の誰かへ向けられた想いなんて、触れたくもねぇ。俺は手を引っ込めた。
     ……そうなると、後は香が届けに行くところを尾行するしかねぇ。俺は香の様子に細心の注意を払っていた。だが、マフラーが物干し竿から回収された後も、香は動く気配を見せなかった。まさか、俺の目を盗んでもう届けちまったのか……⁉

     悶々としながら、俺は数日過ごしていたが、ひょんなきっかけでその心配は杞憂だったと知った。香のプレゼント相手を偶然見つけちまったんだ。……それも、香の部屋で。
     俺を模して作られた、ストレス解消用の獠ちゃん人形に、香の編んだマフラーが巻かれていた。人形だから表情なんて変わるはずはねぇのだが、どこか嬉しそうに見えやがる。確かにお前は、香が辛いときも、悲しいときもそばにいたな。
     俺は、マフラーを手に取った。柔らかな毛糸で編まれたマフラーは、しっとりと俺の肌へ馴染んでくる。触れているだけで、指先がじんわりと温まって行くような気さえする。
    「今度、俺に貸してくれよな」
     果たして、袖捲りをしたヨレヨレのコート姿に、このマフラーは合うのかどうか……。いきなり俺がこのマフラーを巻いて現れたら、香も驚くだろう。その瞬間を楽しみにして、俺は香の部屋を後にした。

       了
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