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    マヨイさんを失うことを恐れた巽さんが暴走してマヨイさんを監禁するメリバの話の結末(ネタバレ)

    #巽マヨ
    Tatsumi x mayoi

     病棟は心が洗われるくらいに真っ白だ。廊下には明るい陽光が差し込んでいる。すれ違ったリネンの束から清潔な消毒の匂いとお日様の匂いがする。一彩と藍良は二人の先輩の病室を訪れる為来たのだが、二人の病室はもぬけの空だった。シーツを変えにきた看護師の男性に聞けば、彼らが仲良く手を繋いで出ていく所を見たという。よく日向ぼっこに出ている事から屋上ではないか、と男性は教えてくれた。
    「屋上って。大丈夫かな、マヨさんもタッツン先輩も」
    「どうしてそう思うんだ?」
    「あんな様子じゃ、いつ飛び降りるか分かんないよ」
    ギュッと服の裾を掴む藍良の不安が背中から伝わる。しかし一彩は先輩達を担当する看護師の日和見な態度から、事態が悪化してはいないだろうと判断していた。
    「もう今は大丈夫だと思うよ。少なくとも、先輩達が二人でいるうちは」
     病棟の屋上には爽やかな青空が広がっていた。少し風があって雲が千切れてほろほろ流れていく。日の光に照らされた明るい世界に巽とマヨイは居た。高い空を、風で伸びていく雲を、高い所を飛ぶ鳥を眺めているようだった。二人でぎゅっと手を繋いで、日の光に溶け込んでいた。
    「巽先輩、マヨイ先輩」
    後輩達の姿を見て振り返った二人はふわりと微笑む。その表情は以前と変わらない落ち着いて大人びた姿で、藍良は胸が熱くなった。あの惨状が脳裏に焼き付いて離れず、もう元の家族のようなユニットには戻れないと薄々覚悟していたからだ。
    「一彩さんに藍良さん。お久しぶりですね。先日はお見苦しい所を見せてしまってすみませんでした。お二人が病院に連絡してくださらなかったら、俺たちは、もう。」
    「良いんだよ。もっと先輩達の話を聞いて、ちゃんと味方になれば良かったねって、藍良と二人で後悔してたんだ。その様子だと手術はうまくいったみたいだし、本当に良かった」
    一彩は予め巽が脳の手術を受ける事を知らされていた。藍良は手術というワードに首を傾げていたが、すぐに理解する。万が一の事もあるので、ユニットリーダーとして覚悟をするようにと英智から連絡を受けていた。
    「お陰様で頭痛は良くなりました。夢も見なくなりましたし、憑き物が取れたようです」
    手術の成功は一彩の目から見ても明らかだ。晴れやかな笑顔を浮かべる巽には、もう記憶障害も幻覚も起こっていないらしい。ずっと刻まれたように残っていた隈は消えてよく眠れているのだろう。
    巽と一彩が穏やかに会話している間に藍良は、会話に参加せずニコニコ笑っているマヨイの様子を伺っていた。彼が繋いだ手と反対の腕に抱えているタオルの塊に興味が湧いた。大切そうに片腕に収めたそれを注視すると、まるで赤子を優しく包みこむおくるみのように見える。

     違う。タオルの中には赤子を模した人形が実際に収まっている。

    「えッ?」
    「藍良?」
    驚愕する藍良の声に反応して一彩もマヨイの腕に抱かれたタオルに目をやって、察した。人形は恐らく実際の子供のように扱われている。子を亡くした親がそのような方法で精神療養を行う事を聞いたことがある。元から存在しないものを“有る”と思い込んだ末路に効果があるのかは、分からない。
    胸に抱いたおくるみを見た二人が釘付けになっているのを知覚して、マヨイは無言のままニッコリと笑い掛ける。邪悪な笑みでは無い、悪戯でもない。心からの微笑みである事は間違いないのに、それは後輩達にとっては不気味でしかなくて。
    藍良は信じたくなかった。きっと元に戻れると思っていた世界が既に壊れていた事なんて。かける言葉も出ずに、ただ唇に手をやって呆然とした。一彩は兄との記憶を思い出した。
    大切な御神酒の入った器を落として割ってしまった時、幼い掌で酒をかき集めていたら“覆水盆に返らずだ”と笑われた事。割れた器は直せるが、中身は元に戻せない事。
    「巽先輩、マヨイ先輩は……」
    後輩達の間をザアっと風が駆け抜ける。巽は物憂げに、どこか遠くを見つめるようにして首を横に振った。一彩には、自らの手で壊してしまった事を深く後悔しているようにも、この結末に至った事に誇りを持っているようにも見えた。器は治せても中身は戻らない。
    「けれど、これでようやく、静かにゆっくり過ごせます。今はその事に感謝しようと思うんです」
    繋がれた手が強く握られ、巽とマヨイだけが静かに笑っている。
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