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    hico2号

    @hico2go

    ※腐向け/轟出とか

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    hico2号

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    tdiz×ハロパロ×魔法学校
    あの学校とは限りませんが、雰囲気で読んで頂けると…w ファンタジー世界観っぽくなるかな?という雰囲気の文章にしてみた、つもり…
    ラブコメ未満なつもりで書きました。暫定カカオ55%くらい。こいつらこれでつきあってないんだぜ🐍

    真夜中のパンケーキ この魔法学校の図書館は、その蔵書数とそれをおさめるだけの異次元空間が有名だ。
     カウンター、新刊コーナー、開放的な勉強スペースと通り過ぎれば、天井より遥か上を見上げるほどうずたかい本棚に囲われた円形のアトリウムに出る。
     どこに何の本が収まっているのか把握するまでに、大分類だけでたっぷり半年はかかった。それでも、ここの本棚はことあるごとに移動するから結局検索機と司書さんのお世話になっている。

     今日は数日ぶりに、放課後ひとりで訪れた。
     薬草学の図鑑は大きくてとても寮の部屋に持ち帰る気になれないから、課題で必要なところだけメモして済ませるつもりだ。
     大きな一冊を両手に抱えて机に向かおうとすると、ヒソヒソ話し合いながら新刊コーナー付近に固まっている集団が目に入る。
     自分とは色違いのネクタイを認めて、そっと距離をとった。彼らの視界に入らない位置の椅子を引く。

     僕の所属する寮ときみの所属する寮は、僕らが入学するずっとずっと前から、仲が悪い。どうしたって共にいることができない。一緒にいるのを見られれば、おかしいって、どうしてつるんでるんだって、双方の『仲間』から叩かれる。
     それはこの学校に入学すればまもなくわかる自明で、暗黙で、不思議な伝統だった。
     きみと会う時はいつも人目を避けて、廊下ですれ違う時だって気軽にあいさつ一つできやしない。それを悲しいとも思うし、何より不便で仕方なかった。有限の時間を、好きに使えないことへのフラストレーション。でも僕のせいできみが人から悪意を向けられるのは嫌だったし、きみも同じ気持ちだ。それで結局穏便な保守体制をとってしまっている。

     寮が違う。クラスが違う。授業が違う。そして何より種族が違う。
     それだけ共通点がなければ、関わり合いがなくても不思議じゃないだろう。
     それでも、僕らは友人だった。一緒に授業を受けたいし、並んで昼食をとりたいし、放課後は他愛ない話をしながら復習をしたりしたかった。
     僕らはもうすぐ学年が上がる。後輩が出来るんだ。そうしたら、いい加減僕らの代から改革をすすめていくべきなんじゃないだろうか。
     あの寮と仲良くするのはおかしい、って言われる後輩がいたら、でも緑谷先輩と轟先輩の例があるじゃないですかって、言ってもらえるような前例になりたい。
     
     図鑑を開いて、必要な箇所のメモと簡単なスケッチをする。身体の右側に差し込む光があたたかい。
     大きく縦に伸びた窓から、本棚を避けて勉強机付近だけに午後の光が落ちるように設計されていた。時折手元から顔を上げて、木漏れ日を纏う広葉樹で目を休めることもできる。
     この場所は気の進まない課題をやるときの、僕のお気に入りだ。けれど、今は長居をするべきじゃないなと予感があった。
     ここではきみに会えないと知っている。
     荷物をまとめて、音を立てないよう椅子を引いて立ち上がった。
     図鑑を戻して身軽になり、アトリウムの底を目指して薄暗い書庫へ下りていく。古く特殊な文献や、貸出不可の稀覯本が収められているエリアだ。
     ここにある本はどれも、ページをめくるたび黴や埃のすえた匂いがする。
     ここ黴くせぇな、と以前きみが呟いたのを聞いて、これがカビの匂いだと初めて思い至った。僕にとっては古書の匂いだった。
     螺旋階段を下りて陣魔法の本棚辺りを通り過ぎた時、眼の前に現れた長身の影にすぐさま気付いた。
     やっぱり。ここにいた。
     こつこつと靴底を鳴らして、きみに近づく。きみも足を前に進める。
     吸血鬼のきみは、陽が当たる場所には留まれない。
     陽が当たらない廊下の半分、窓のない図書館の中、それぞれの寮に分かれる前の談話室。
     僕は少し特殊な力があるだけのただの人間だから、きみと会えそうなそういった場所へ赴いた。そして自然とすれ違う度に、なんとなく互いの場所がわかるようになった。
     さり気なく目線を上げると、針のように伸びた前髪の隙間から切れ長の美しい瞳が覗いていた。暗闇でたまに光っているように見えるオッドアイ。きみはまるで興味がないだろうけど、その神秘的な魅力に女の子たちが遠目にきゃあきゃあ噂しているのを知っている。
     僕は赤いネクタイ。きみは緑色。
     言葉を一つも交わさないまま、僕らは本棚の間を通り過ぎようとした。
     そのすれ違い様、耳元に潜められたテノールが滑り込む。
    「……今夜九時、西側の窓」
     ぞくりとするほどの美声にも、慣れた今は動揺はしない。
     うん。僕はまっすぐ本棚を見たまま頷いた。
     うん。わかった。頷いて、内緒の約束を胸に刻む。後ろを振り返ることはせず、きっときみも、振り返って僕を見てなんかいないだろうけど。


     その夜、長針が九時を指す十分前。部屋の明かりは最低限に落として、西側の窓を大きく開け放った。ほとんど風はない。それでも念の為、はためかないようカーテンを両脇に縛って来訪者を待つ。
     ばさりと、鳥でも風でもない音が耳を打った。
     吸血鬼は夜闇に紛れるのが上手い。
     長く黒い外套を身に着け、羽のようにそれを翻して空を歩く。
     月光を背にした姿はどんな幻想動物よりも美しかった。
     けれど、そんなきみも種族の遺伝子には逆らえず、招かれないと部屋の中に入れないと言うのだから知った時はなんだかかわいくて笑ってしまった。
     そして、やっていることは立派な校則違反だ。きみのことだから、誰にも見つかってはいないだろうけど。
     僕の数倍夜目がきくらしい瞳が妖しく光る。ふわっと風に煽られた外套を上手に体に巻き付けて、どこへも引っ掛けることなく細い窓辺に下り立った。
     羽を畳んだ大きな大きなコウモリへ僕が両手を伸ばすより早く、その上体がこちらに向かって傾く。
     迷わずその手を引いて、室内へ招き入れた。
    「いらっしゃい。こんばんは、轟くん」
     爪先が床に着くと同時に、そのまま抱きしめられた。
    「……緑谷……!」
     はぁ、と肩に溜め息が落ちる。
    「会いたかった」
     こんなに直截な言葉で、面映いことを言う人だっただろうか。少なくとも出会った当初は、触れるものみな傷付けそうな厳しく冷めた目付きをしていた。それを今言うと拗ねるから話題には出さないけれど。
     触れたところの温度が、急に熱く感じた。
     同じ学校にいて、同じ学年で、友人なのに。本当に会えるのは二人きりの場所だけだった。
    「うん、僕も。やっぱり、一緒に図書館で勉強したかったなぁ」
     固まって小声で囁きあいながら課題を広げるきみの寮の彼らが、本当は羨ましかった。
    「図書館で、せっかく会えたのにな」
     きみからも同意が返る。すれ違い様に夜の約束を交わせただけでも僥倖だった。けれど、本当はもっと一緒にいられたのに、とどうしたって思わずにいられない。きみも同じ気持ちだとわかって、少し嬉しい。
    「今日は他にも、何度か緑谷を見たんだ。クソ……普通なら移動の合間に話しかけられたのに」
     きみは不機嫌そうに、昼間と違って今は降りている右側の前髪を掻き上げた。
    「えっ、いつ?」
    「朝、教室入る前の廊下と……三限の薬草学ん時。中庭で草摘んでたろ。二階の窓から見えてた」
    「え〜、そうだったんだ……なんか恥ずかしい」
     声は届かなかったとは思うが、ブツブツ言いながら両手を泥まみれにしていた記憶しかない。
    「窓際、大丈夫だったの?」
    「ああ。それに、緑谷だってすぐわかったから」
     まるで僕を見るためにわざわざ日光の危険がある窓際へ移ったように聞こえて、勘違いでも勝手に顔が熱くなった。
    「お前は特に眩しいから、すぐわかる」
     口元が小さく笑みの形を作った。至近距離で見ると、きみの犬歯が僕よりとがっているのが目に入る。
     眩しいと言われて、自分の髪の色を思い起こした。緑色のせいだろうか。でも庭の木より暗い色では太陽光を反射さえしないだろう。そんな魔法も使った覚えがない。
    「発光してるって意味じゃねぇぞ。何だ……雰囲気、つーか……」
     首を傾げていると意外なことを言われた。
    「ええ? 僕、地味クソナードとか言われてるんだけど」
    「だれだそんなこと言う奴」
     僕と並んでベッドに腰掛けたきみが、爪を強調するように指を鉤形に折り曲げる。
    「噛んでやろうか」
     どきりとした。冗談だとわかっても、その袖の中に鋭い牙の蛇を隠して連れてきているのではないかと注視してしまう。
     これも、かっこいいきみが周りから遠巻きにされている理由だった。
     蛇、カラス、コウモリ。先天的に備わった、不吉なものを操る能力。吸血鬼の眷属たりうる動物はこの世界に複数存在している。
    「だっ、だめだよ」
     生き血を糧として、暗がりに棲む吸血鬼は何かと誤解されやすい。と思う。
     きみと少し話せば、人に害をなすような人ではないとすぐにわかるけれど。
    「やらねぇよ」
     笑いを含んだ声で、悪戯っぽくきみは身体を傾けた。静かなテノール。からかわれた、と不満に思うどころかなんだかどきどきする。きみはそんな冗談を言う人だったっけ。
     わざわざ校則を破ってまで会いに来てくれた友人をもてなすため、僕は用意しておいた紅茶を淹れた。
     ティーカップを手渡す時、どこかうっとりと目を細めて「甘い匂いがする」ときみが言う。
    「え? 普通のお茶だけど……」
     並んでこくこくと飲み干した。遅い時間だから少し薄めに淹れたけど、わずかに紅茶らしい香りは残っている。
     空になったティーカップを受け取る時、もう中身は無い筈なのにきみはまたいい匂いだと目を細めた。吸血鬼は嗅覚も人間より大分優れているのかもしれない。
     紅茶もお茶請けも早々にないけれど、僕の口は淀みなく回る。
     昼間一緒にいられない分、話したいこと、見せたいもの、やりたいことは山ほどあった。
     時間が経つのはあっという間だ。腰掛けた位置から月が見えなくなって、僕は時間の経過をいやいやながら察した。
    「……ねぇ、あの、今日はさ」
    「うん?」
    「泊まっていっちゃえば」
     どうかな、と尻すぼみな提案をする。
     朝、同じ寮の部屋から出てくるのを見られるのはちょっとアレだけど。早起きして一緒に自習してましたって言えばいいし。
     そうしたらもう、否でも応でも、僕らが友達だって皆いい加減理解してくれるんじゃないかな。
     こうやって会うのも好きだよ。夜中にこっそり食べるおやつみたいに、楽しみとしあわせはあったけれど。
     もう真夜中に君を見送ったあと、一人ベッドに入って次の夜を待つのが寂しくなってしまった。
     今のままでは満足できなくなってしまったんだ。
     そんなことを告げると、目を丸くしたきみはしばらくじっとこちらを見ていた。
     後ろ手をついたきみと視線を合わせるように、僕も後ろに上体を倒してごろんとベッドに横になる。
    「俺は」
     二人してぱたりと仰向けに上体が倒れ、足をぷらぷらさせたままベッドの上で向き合った。
    「とっくになってた」
     しろい手が伸びてくる。僕よりも鋭いその爪が、僕の皮膚を突き破ることはないと知っている。
    「……お前がいいなら」
     そうしようかな、と呟いて、戯れのように肩に頭の重みがかかった。
     うん。うん。いいよ。頷きながら、相好がどんどん崩れていく。嬉しさが声に滲んでしまう。恥ずかしいから気付かれたくないなと思った。顔を隠すようにきみの頭をゆるく抱きしめる。
     ふと、きみは夜目がきくことを思い出した。この部屋の中も、いつも夜会う時も、僕よりもかなり見えていたのは確かだろう。昼間たまに眠そうにしているのを見るけれど、会わない日も夜眠るのは遅いのだろうか。今夜、ベッド一台しかないけど平気かな。
     そんなことを考えていると、僕の首筋に顔を埋めたきみが深く息を吸った。そのまま深呼吸したと思ったら、また甘い匂いがすると零すのを聞いて、僕は初めてぎくりとした。
     あっ、待って。ちょっと待って。さっきから言ってた、その匂いってもしかして。
     気付けば寝転がった僕の上にきみの影が落ちていた。見下ろしてくるオッドアイがやっぱりすごく綺麗だ。瞳孔が大きい気がするのは、夜だからだろうか。
    「轟くん?」
     まさかまさか、僕のをほしがったりしないよね。友達を噛んだりしないよね?
     そんな動揺を込めて見上げれば、
    「どうなっても知らねぇぞ」
     愉しげに持ち上がった唇から、尖った犬歯がちらりと覗いた。



    ーーーーー−
    吸血鬼の轟くんは招かれないと緑谷くんの寮の部屋に夜這いに行けないというネタは、祥さんから頂きました!ありがとうございます。
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    hico2号

    DOODLE高校生轟出。診断メーカーで『初夢に互いが出てきた無自覚両片思いtdizは二人とも好きな人の名前を全力で叫ばないと出れない部屋に入れられました』と出たので、フワーッと浮かんだのをお題を少し改変して短いのを書きました🎍ほんとは初夢って大晦日じゃなくて1日に寝て見る夢だけどもまぁ…目を瞑って!
    好きな人の名前を全力で叫ばないと出られない部屋に入れられた付き合ってない無自覚の高校生轟出「あれ……」
     眠いような、重いような頭を揺らして、ぼんやりした視界でなんとか像を結ぶ。けれど何もなかった。どこか、白一色の空間に佇んでいる。
     何をしてるところだったっけ?
     ぐるりと周囲を見回すと、見知った友人が思いの外近くにいて思わず声を上げた。
    「えっ、轟くん!」
    「……緑谷……?」
     僕の顔を認めた後、さっきまでの僕と同じようにこめかみを押さえて、周囲を見回している。
    「どこだ、ここ?」
    「わかんない……僕ら閉じ込められたのかな?」
     床も天井も、四方全てが白い簡素な空間で、ドアも窓も見当たらないことは一目瞭然だ。
    「ここに来るまでの記憶あるか?」
    「それが、何も……」
    「そうか。原因はわからねぇが、立ったまま寝てたとは……考えたくねェな」
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