翼をください『エントランスに飾るからよろしくね』と色画用紙を短冊にしたものを渡された審神者や刀剣男士たちが、筆ペンを持って机に向かっている。
村雲江の横を通るとき「おなかが痛くなりませんように」と書いているのが見えた。
そんななか、配られた短冊を二つ折りにしてクセをつけてから開き、飛行機を作り始めた青竹を見つけて「おい」と声をかける。
「願い事書かねえのかよ」
「うーん……そういうのあんまりわかんないんですよね」
そう言いながら紙飛行機を顔の前に構えて、ちょいちょい、と翼の角度を整える青竹。
すっと腕を伸ばすと紙飛行機はまっすぐに飛び、壁にぶつかって落ちた。
地面に墜落した紙飛行機を見つめていた青竹が「僕たちっていつまでここでこうやっているんでしょうね」と呟く。
会議室が急に閉塞感を帯びるものだから、おれは思わず顔を顰めた。
戦争が終わるまで、おれが折れるまで、こいつが死ぬまで。
「いつまでだろうな」
こうやって、適当な相槌をうって。どこにもいけないままで。
「あ!」
「なんだよ」
「みんなのお願い事が叶いますようにって書けばよかったんですよ」
盲点でしたというような顔をする青竹におれは苦虫を嚙み潰したような表情をした、と思う。
「肥前さんは、どんなお願い事をしたんですか?」
「知らねえ」
吐き捨てるように返してから、紙飛行機を拾い上げて窓に向かう。
おれが何をするのか察した青竹が後ろからやってきて、閉められていた窓を開けた。
「せーの!」
何が『せーの!』だと思いながらも、青竹の声に合わせて紙飛行機を空に放った。
おれの手を離れた紙飛行機はまっすぐに飛んで、ゆるやかに降下していく。
今だけは脇差である己が嫌だった。夜目が利かなければこれが落ちる瞬間を見ずに済むだろう。
「ねえ肥前さん、あれ天の川じゃないですか!?」
「……天の川にしちゃまばらすぎんだろ」
青竹の指の先の、星々を見上げてから、ああ、こいつもあの紙飛行機の行方を見たくなかったのかもしれないと気づいた。