「名前も知らないその人に、ひと目で惹かれてしまったんです!」
目の前の女性は顔を赤らめてそう言い放った。僕ははあ、とため息をついた。
事務所には幸か不幸か皆出払っていた為、彼女の応対は僕が一人で行っているという訳なのだが。
「…なるほど、で、あなたのご相談というのは一体何です?」
敢えて、質問する。
「…彼を探して、彼に会わせて下さい」
「その、プラチナブロンドの長髪で、ちょっとしかめた眉、挑発的な目付きで、口紅の似合う、真っ黒い服装をした背の高い例の『彼』、ですか」
「ええ、ええ、そうです。あなた方に頼むリスクは分かってるつもり。お礼だっていくらでもします。それでもいいの。彼を見て、私は分かったの。これは運命なんだって!だって、私はそう感じるの」
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