あの時の記憶---キキー!
同じ光景が何度もフラッシュバックする。
煩わしくなる位眩しい車のライトが目の奥にこびりついた。
ぼんやりしてる莇に向かって車が物凄い勢いで突っ込んでくる。
オレの目と鼻の先で。
あと少し手を伸ばしたら届く距離で。
オレが先に行かなければ。
オレがもっと速く気付いていたら。
何回も何回も思った。
あの時声をかけるのが遅れていたらどうなっていたかと思うとゾッとする。
「莇!後ろ!」
手を伸ばして無我夢中で叫んだ所で目が覚めた。
強く伸ばしたオレの手は天井に向けられ、真っ暗な空を掴む。
はぁ、はぁ...。と肩で息をしながら起き上がって先程の光景が過去の記憶を元にした夢だと理解した。
それでもなお、オレの心臓はドクドクと嫌な音を立て続けたままだ。
まるで今、目の前で事故が起こったかのようにあの時の感覚が目に、耳に。生々しく残っている。
あれからもう随分と時間が経つというのに、あの時の記憶はオレの中から簡単には消えてくれなかった。
夢見の悪かったオレの身体は汗で湿り、べったりと服が張り付いて気持ちが悪い。
今日、この部屋にオレ一人で良かった。
こんな所を見たら、優しいすみーさんはきっとオレを心配してしまう。
「大丈夫、大丈夫。」
オレしかいない部屋で一人、自分に言い聞かせるように小さく呟いた。