月下美人(仮)ディナーの後、オスカーの自慢の庭園をふたりで散歩していた。
満月に照らし出された夜の庭園は真昼程も明るく、小径に敷かれた白い石が白銀の様に光を放っていた。
庭園のバラ達は夜の冷ややかな空気の下でも、その庭の主の髪の様に燃える真紅の花弁を誇らしげに開いている。
木製のパーゴラに巻き付いた、豊かなつるバラを先に立って眺めながら歩いていた所で、ふと視線を感じて振り返る。
彼と目が合った。
オスカーはリュミエールのみを真っ直ぐに見つめていたのだった。それに気付くと急に面映い様な心持ちになる。
彼は歩み寄ってリュミエールの前に立ち、胸に垂れ落ちた髪束を指で触れた。
「美しい花は数あれど比べるべくもない。俺が真実求めているのは清楚で控えめな一輪の青い花だけだ」
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