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    #モザイクの魔術師 5中編2
    語り手・かりん

    絵を描いてる余裕がないから小説を進めることに_(:3」z)_とりあえず場所作ってちょっとづつ書き足します

    モザイクの魔術師 5中編2
    あれ、家だ。

    さっきまで消防署にいて…なんか、みんなで話し合ってたのに。
    そうだ、メジロさんがウチに泊まるって…メジロさん…?
    「おっ、目ぇ覚めたのか。具合どうだ?」ドアの向こうから師匠の声がした。
    「ししょう?」
    「入るぞ」
    師匠は緊張した顔をしてたけど、声はすごく優しかった。
    「途中で具合悪くしたから連れて帰ってきたんだ。頭ふらつくとかないか?」
    「な…ない」
    と言ったけど、さっきのことを思い出して怖くなった。
    「し、ししょう、メジロさんは…」
    「ああ、アイツなら大丈夫だ。説明するけど…聞けそうか?」
    どういう意味だろう。
    サングラスで師匠の目は見えないけど、私の方を見てるのはわかった。心配してる時に師匠がする癖だ。心配されるようなことを聞かなきゃならないんだ。
    でも、気になった。
    「う…うん」
    師匠は、じゃあ冷たいモンでも食おうと部屋を出て行った。きっと頂き物のゼリーを開けるんだ。


    ☆☆

    師匠は桃、私はキウイのゼリーを、ガラスの器に開けた。東京の有名なお店のだというゼリーは、器の中でキラキラしてた。

    話の内容は本当につらかった。水脈のことは殴っても蹴っても「刑罰」だからいいんだって。
    「……でも」
    「俺らはさ、メジロさんを煩くて何かにつけて遊びたがって食い意地がはった面倒くせぇ水脈としてしか見てねぇけどさ」
    師匠も結構ひどいことを言った。
    「けど海猫先生やヒメジさんにとってはそうじゃない。アイツは鏑矢の仲間を奪った加害者なんだ。カッとなるな、っていうのはまぁ…キツいよな」
    「…うん」
    「メジロさん…あの人たぶんリュウグウノツカイだ。ロクでもない真似したのは確かだし、傷も今頃治ってはいる。けど、たとえ理由がわかっていても、知ってる人達が憎み憎まれる姿はしんどかっただろ。逃し損ねて悪かった」
    「ううん……んん?」
    なんかサラッとすごいこと言ってた。リュウグウ? メジロさんが?
    「ああ。ほら、あの人ラムネみたいなモン食ってたろ。あれ、前に見たことあんだ。リュウグウノツカイ専用の薬の中で1番弱いやつ。単体で使ってる奴は初めて見たけど」
    「…師匠、怖くなかったの?」
    「さっきぶっ倒れた時に襲われなかったからな。多少は信頼してる」
    そうなんだ。
    ゼリーを食べようとして、やめた。師匠のゼリーもキレイなままだった。
    師匠には、師匠にだけは、言ってもいいんだろうか。
    「あのね、メジロさん、すごく料理上手な人なの」
    「へぇ」
    「おいしいものを食べる時間とよゆうがあるって、いいことだっていってた。なんか…なんかわかんないけど、すごく…うん、ってなった」
    「へぇ」
    涙が出てきた。ゼリーがキラキラ揺れた。
    「わたし…メジロさんのこと、わるいひとにおもえてない。はなしきいてからも…なんか、なんか…でもヒメジねえさんは…どうしよう…わたし、メジロさんもヒメジねえさんも、す…すきだとおもうの…どうしよう…」
    師匠は「気にすんな、俺もだ」と言った。

    ☆☆☆

    「ただいま」
    「あっ、えーっと…おじゃまします?」

    玄関が開く音と、海猫父さんとメジロさんの声がした。海猫父さんの声は怒ってなくてホッとした。

    「やぁこんばんはお嬢ちゃん、さっきはビックリしたでしょ、ごめんなさいね……っと…驚いてないトコ見ると、石目君は気づいてましたか」
    「アンタがリュウグウノツカイだってことなら、いま話してたところだ」
    居間に入ってきたメジロさんには、本当に傷一つなかった。ただ服は、薄暗い緑色のジャージに変わっていた。
    「いやゼリーはいらん、すぐ出る。…面倒なことになった」
    海猫父さんは師匠の横に座って、麦茶だけもらった。師匠は、みんなと離れて座ってるメジロさんに、魔法で麦茶のグラスとオレンジのゼリーを送った。
    「何がです?」
    「水脈の交代を申し出たんだが、却下された。代わりがいないらしい」
    「マジすか」
    「わしはともかく、ヒメジがあれではな…だから、ヒメジはしばらく外に泊まると」
    「まぁ、監視対象は俺だからな。かりんもそっちに?」
    海猫父さんは、まぁ…か、あぁ…か、聞き取れない返事をした。
    「ヒメジの奴も、アレの出現で不安定だ。ボーッとしてると思ったらシクシク泣いてる。むしろ、ヒメジから目を離さんように誰か付いていた方がいいだろう。かりん、お願いできるか」
    「あ、う、うん」
    「いや待っ…あー…俺が言える義理じゃねぇが、不安定な大人の面倒見せるなんて、ガキにやらせることじゃねぇ。しかもヒメジさんだぞ。危ねぇだろ」
    「……そうなんだが、他に付いていられるウチの人間もいないぞ」
    「…けどよ…」
    「あのう」
    メジロさんが小さく声を出した。
    「僕、リュウグウノツカイなんで、薬があるとはいえ石目君と二人きりになるのは流石に…」

    海猫父さんは、ああ…か、おお…か、聞き取れないことを言って頭を抱えた。

    ☆☆☆☆

    結局、一階に男子、二階に女子がそれぞれまとまって、トイレや食事の時は男性陣は屋根にいる、何かあれば問答無用で駆けつける(そして殴る)ということに決まった。
    ヒメジ姉さんはまず同じ屋根の下にメジロさんがいることに文句を言ったけど、師匠が犠牲者になる可能性と天秤にかけて折れた。そして、男性陣が一階なことに文句を言ったけど、男性陣に自分の部屋を使われることと天秤にかけて折れた。
    その結果、ものすごく機嫌が悪くなった。
    「誰よ敬介に変な疑いかけたバカは! おかげでこんな…ああもう、あんたの部屋めちゃくちゃじゃないの!あんな奴のせいで、あんな奴のせいで…!」
    「あ、あの、自分でやる…だ、大丈夫…」
    「アンタどうやってひっくり返ったベッド動かす気よ! 何もできないクセして一丁前に気使わないで!」
    「…は、はい、ごめんなさ…」
    「ああもう謝んないでよ、責めてんじゃないの!」
    「……うん」
    ヒメジ姉さんは私の部屋の片付けも手伝ってくれたけど、その間ずっと文句言ってた。
    ヒメジ姉さんの部屋の片付けを手伝おうとしたら断られたので、寝る準備をすることにした。一階に声をかけたら「勝手なことしないの!」とヒメジ姉さんに怒られた。
    ヒメジ姉さんを待って、一緒に下に降りた。
    誰もいなかった。ちゃぶ台に、空のガラスの器が2つと、私のキウイゼリーが入った器があって、ビスケット一包みと小さいメモが添えてあった。
    「今日はお疲れ!」
    師匠の字だった。
    「かりん、洗面台先に使いなよ」
    「あ、あの、さっきのゼリー食べたの、片付けてなかったから…先こっち片付ける…」
    「そんなの一階の奴らにやらせなよ」
    とは言ったけど、私がもう器を重ねてるのを見てヒメジ姉さんは洗面台に行った。
    ビスケットとメモをポケットに入れて、台所で急いでゼリーを食べた。ぬるくなってたけど、おいしかった。

    眠れなかった。
    ヒメジ姉さんの部屋から泣き声が、下の階から師匠が話してる声が聞こえた。メジロさんのカン高い声はしなかった。気を遣って小さい声で話してるのかもしれない。
    私は、どっちに行くこともできなかった。
    灯りの横に置いたビスケットとメモをもう一度見て、目を閉じた。
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