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    ふるこ

    @OLDCROW0927

    ※NSFW🔞※ ケモナーです。ごくたまに創作など。
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    ふるこ

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    現在作業中のブラ褪の進捗。R18無。ブライヴに惹かれる褪せ人を不思議がるブライヴ視点のお話。

    #エルデンリング
    eldenRing
    #ELDENRING
    #ブライヴ
    bribe
    #褪せ人
    retiredPerson

    菫色の嘘、褪色の真 菫の花には毒がある、という事を、昔にイジ爺から教わった事がある。幼い頃の俺はその意味が何を指すのか、到底理解は出来なかった。ただ、イジ爺が俺の眼を覗き込むように視線を送る時は、決まっていつも、仄暗い影が降りているような、そんな風に見えていた。それだけは、何故だがはっきりと覚えている。
     俺の瞳の色は、その菫と瓜二つなのだと、あの褪せ人は言った。狭間の地に生えている花に、そんな名前の物は存在しない。スイレンや鈴蘭、とか言った物はあちらこちらで咲いているのは見かける事もある。一番近い色に、墓紫という花がある事も知っている。だが、決まってそういう類の物ほど、何故かその全てに毒が含まれていたり、忌み嫌われる言葉が隠されていたりする。
     見た事もない、聞いた事もない話を、褪せ人はいつも俺に伝えて来る。その話はこちらが願っていない事であればある程に、流暢に舌をまめらせて続けて行く。その意図が、理解出来なかった。その知識が、理解出来なかった。ただただ目の前の褪せ人はそう語り掛けるものだから、鬱陶しい気持ちも相まって、つい、こんな事を口走ってしまった。

    「お前は、何故そこまで花にこだわる」

     それでも初めはほんの些細な、好奇心に近いものだった。この狭間の地は、あらゆる生命の生と死が黄金律に敷かれて成り立つ世界。勝手に生えては枯れて行く草花の一つ一つに思いを馳せた所で、訪れるのは目の前に迫る自らの、死。周りの事に気を取られていたら、文字通り命が幾つあっても足りるものではない。それは、祝福に導かれたこの褪せ人にだって、分かっていた筈だ。
     それなのに、何故そこまで。

    「綺麗だから」

     ただの一言、それだけだった。血糊や燻りで煤け色落ちた銀であった鎧に、ボロ布を纏った身なりは、放浪騎士に見られる目立つ特徴もないもの。綺麗なものに目がない、という意味であるなら、その汚れた服装や武具は手入れをしないものなのか、とも尋ねた様な気がする。
     そういえば、この褪せ人は出会ってからというもの、フルプレートに全身を包んでいる姿は見慣れていたが、兜を外した所を見た事はなかった。瞳の色は、鉄の仮面の奥に微かに褪せた鈍い輝きこそ垣間見えたが、どういう面持ちをしているのだろうか、とも疑問に思った。不意に、その兜に手を伸ばしてみようと腕を上げて近付けた時に、褪せ人はぱしん、と俺の手を叩いて払った。

    「ごめん。見せたく……ないんだ」

     たどたどしい声で、微かに震えていた。触れてはいけないものが、板一枚を隔てて、そこにあるのだろうと思った。俺の瞳の色は、やれ花のようだ、とか、それらに毒やら不吉な意味合いがある事を知ってて言っているのなら、それこそ不躾だろうとも思える行為な気もした。だが、そこから先の事は、分け入って話が出来そうもない、と感じた。何かを、怖がっている。それだけが、たったその一言から、滲み出ていた。



     褪せ人がラニに仕えるという話が出てから幾日と経たない内に、巨星ラダーンが堕ちた。祭りの中で褪せ人と刃を交えて、その中で。何度も傷ついて、立ち向かって、その中でもぎ取った辛い勝利の筈であるものを、褪せ人は何の物怖じもせずに勝ち取った。こいつは、戦いへの恐怖心という物がないのだろうか、と思える程にすら、極めて無機質に戦場へと駆けて行く。命が失われる事が、痛みや苦しみを味わう事が、どれほどのものなのかを知らずに生きているのだろうかと、そう思わされる程に。
     俺には、それが理解できなかった。たとえ生と死を黄金律に縛られている身とはいえ、生きとし生けるものは須らく痛みや死を嫌悪し、恐怖するはずだと。そう、思っていたから。それに、俺にはラニの目的の為、という道標の元で生きている手前、死という概念に対して何も恐怖を抱く事はない。だが、生まれも立場も違う褪せ人はどうなのか。こいつは本当に、ラニの為に生き、ラニの為に死ぬ覚悟があって、この道を伴に歩んでいるのだろうか、という疑問が湧く。信頼関係が浅いからだとか、そんな理由では簡単に片付けられない程に。
     褪せ人の動き一つで、この世界の歯車の全てが巡り、変わって行く。ノクローンの秘宝。星の巡りが止まった理由。ラダーン祭り。俺を取り巻く物事の一つ一つが、点と点が繋がって線になるように。少しずつ、着実に、ラニの理想へと近づいて行く。運命の死というものをラニが奪い、暗月の時代をエルデの王となる伴侶と共に迎える為の、準備。俺はその影の侍従であり、一部。それだけは変わらない。喩え俺が、どんな存在であろうとも。そう、根拠も無い中で、信じ続けるしか無かった。
     だが、あの褪せ人はどうだろうか。出会った頃はカーレの気紛れか何かで紹介された事から、関わるきっかけは生まれた。俺には、というか、他の褪せ人にも見えていないであろう黄金の祝福が、彼にはきっと見えていて、それは一体どんな色や輝きをしているのだろうと、時折脳裏をよぎる。仮にそれがどう見えていたとしても、狭間の地から追放されたかつての戦士の末裔だという話が本当であるのなら、あいつは只、黄金樹の導きという不安定な目的の中で彷徨い歩いて行く迷い人になるのだろう。
     いつか、その褪せ人は言っていた。自分にはマリカの言葉を代弁する巫女が付き従っていて、円卓という場所にも連れられたのだと。そこには、自分と同じ祝福に導かれた褪せ人達が、相互不戦の盟約の下、集まっているのだと。この目で確かめてみなければ分からない話を、どこまで真に受けていい物だろうか、とも思った。
     黄金律に与するという事は、即ち律を破壊して暗月の時代を築こうとするラニの意志とは反する行いになる。そうなれば、道中は利害の一致があったとしても、行き着く先は、敵になる。その時に、きっと俺は躊躇無くこの褪せ人を、葬るだろう。かつて信頼していた猟犬騎士の、彼奴あいつのように。

     褪せ人の真意が、分からない。何を求めて、何の為に狭間の地を駆け巡っているのか。面と向かって話をすればする程に、理解出来るような気がして、それでもまだ半歩ずつどこか食い違いのような何かを感じて。空回る風車のような無機質なやり取りが、淡々と続けられているだけのような気がして。
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