あっやべえ、と思った時には遅かった。
殴った相手の返り血は、白い服によく目立つ。
また何か言われるかなと思いロストガーデンに戻ると、予想通り耳障りな声がきゃんきゃん喚いた。
「あーあ、シャムスくんまた汚したの〜?こないだも汚したばっかだったよなぁ!?この出来損ない」
「しょーがねーだろ、ひ弱な奴らがすぐ血を出すんだからよ」
こちらを眺めていたシリウスに尋ねる。
「なあ、白じゃねー服はねえのかよ?」
「古来、海の向こうにある日本では」
「あ?急になんの話だよ?」
「黙って聞けよ、シリウスの話を遮るんじゃねえ」
「もっとも神聖な色が白だとされていたんだ。天皇しか着れない服の色だったくらいにね」
「......で?」
「ばかばか、シリウスの話をそんな雑に流すんじゃねえよ!」
「また西洋では清廉な色だとしてウェディングドレスに使われる様になったんだね」
「......で?」
「えー!シリウスは結婚式したい派?」
「今それ関係ねえだろ...」
「逆に赤は」
「......」
「炎や太陽の色のような生命の輝きを象徴する色として扱われた」
「出た、輝き」
「君の瞳も素敵な色だね、シャムス」
「てめぇも鏡見てみればいーんじゃねーか?」
「そんな二つの色を纏っている君は素敵だよ」
「つまり、これ以外用意するつもりはねーってことか?」
「君が最も輝いてみえる色だからね」
「オレは!?オレは!?」
「シンも眩しいくらいだよ」
「シリウス〜❤️」
「目ぇおかしーんじゃねえの...」
「なんか言ったかぁ!?」
「血液は、すぐに水洗いをするといい」
「オレが洗うのかよ!?」
「嫌なら今度から喧嘩するときはエプロンでもするかい?」
「だせえ!ださすぎる!」
「ぶはははははシャムスにぴったりじゃねーか!」
「ああ!?んだとぉ!?」
「シャムス、お湯じゃないよ、水だからね。お湯だとタンパクが固まってしまうからね」
「...くそ!!今度から鼻は避けて殴ることにするぜ...」