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    もっち

    @mochitto0110

    練習とかなんとか
    腐とかも投げます。

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    もっち

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    もう一枚の絵のやつ

    みかん食おうぜ!じーーーーー…

    そんな音が聞こえてきそうなくらい、先程から視線を感じている。
    いとしのまさかちゃんが目を輝かせて見つめているのは、この僕…だったらよかったのだけれども、正確には僕の手の中にあるみかん、だ。
    流石は和歌山県産の最高品質のみかんである。皮を剥くと辺りに柑橘の爽やかな香りが広がり、中の果肉は瑞々しく、まるで宝石のように輝いている。おそらく味も最高なのだろう。


    クリスマス後の、大量のお節を作らされた悪夢の様な日々のことは、正直、思い出そうとすると拒否反応からか謎の頭痛がする。そしてやっとのことで年が明けた思ったら、まさかちゃんはさっさとぴよこと初詣に行ってしまうし、その上、正月早々あの小憎たらしい兄妹にバカにされたことで、僕の繊細でやわらかい心はかなりのダメージを負ってしまったのである。

    まさに踏んだり蹴ったりだ。もうこうなったら神社の結界を閉じて一人で自堕落に過ごしてやろうと決意し、こたつに篭城する構えをとった矢先、「京風のおせちが食べたい」といきなりまさかちゃんが訪ねてきて、なんだかんだで今に至る。正直、MZRな状況である。
    だって、屋敷には僕ら以外誰もいない。
    部下達は休暇を取っているし、四聖獣も各々好きに正月を過ごしているのだろう。

    ちなみに、同じ近畿出身の太子はというと、まさかちゃんが来る前に自分達でこしらえたという大量の餅を持って来て、さっさと太宰府に行ってしまった。これからどうしん様と親友同士、楽しく過ごすのだそうだ。いや別に羨ましくないし。
    そういえば、福岡のお雑煮は具沢山で美味しいらしい。僕も今度食べさせてもらおう。

    今日の天気は晴れ。時間は昼を過ぎたあたり。
    縁側には柔らかな陽光が降り注ぎ、ぽかぽかと暖かそうだ。とはいえ、今は年始を迎えたばかりの真冬の時期、いくら日が出ているとは言え、こたつの魔力に勝つことは出来ない。
    僕らも多分に漏れず、こたつから動くことが出来ずにいる。こたつから手の届く範囲に散らばる携帯ゲーム機と雑誌、テーブルの上には飲みかけのお茶とお菓子。
    やけに時間がゆっくりに感じるのは、正月明け特有の空気のせいだろうか。

    「おい」
    「…なんですかまさかちゃん」
    「分かっておるだろう?妾もみかんが食べたい」
    「そこの箱にまだ沢山ありますよ」

    みかんの箱を指差しながら答えると、まさかちゃんは何故か少しむっと顔をしてしまった。かと思うと、かぱ。と口を開けてちらりと僕を見る。

    「……」

    そんな姿を見て、はぁ、とため息をついて小分けしたみかんを彼女の口の前に持っていく。それを、ぱく。と一口で頬張り、もぐもぐ食べるまさかちゃん。鳥の餌付けってこーゆー気分なんでしょうか。

    「うむ、美味いな」

    そしてまた口を開けて次のみかんを待っている。なんでしょうこのかわいい生き物。僕の頭の中に、どうしん様の特大の雷に打たれた様な衝撃が走る。というか、素直なまさかちゃんはかなり珍しいのでは。今年の運勢は大吉かもしれない。おもわず口の端が上がってしまう。
    ふとイタズラ心が湧いて、次の一房は自分で食べてみた。あ、本当に美味しいですねこのみかん。

    「…は?」

    みかんがもらえなかったまさかちゃんは、まるでいきなりおもちゃを取り上げられた子供みたいな表情をして…いや、ていうか結構睨んでる、こわいこわいお願いだから祟らないで。

    「失礼しました。これはお詫びの品でございますまさか様」
    あわてて新しく剥いたみかんをうやうやしく彼女に献上する。せっかくまさかちゃんが甘えてくれているのに、こんなことで怒らせたらもったいない。

    「うむ、苦しゅうない。もっと捧げるが良い」
    満足気に答えるまさかちゃん。案外簡単に機嫌が直ってよかった。

    だって、今年はまだ始まったばっかりなのだ。
    美味しい物を食べて、嬉しそうに笑うまさかちゃんが、世界でいちばんすきだ。
    きっと大変なこともあるだろうけど、彼女の笑顔がどうかずっと続きますように。

    そして僕は、太子の持ってきた餅でお汁粉でも作ったらもっと喜んでくれるかなぁと考えながら、次のみかんに手を伸ばすのであった。

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