ばれんたいんの話「本線、こちらを。」
日付もそろそろ変わるかといった頃。
恭しく差し出された赤色の小箱に、函館本線は瞳を瞬かせて、それから口を開いた。
「…思ったより普通だな。」
「いまダメ出しされました…?」
所在なさげに眉を下げる北海道新幹線の手から箱を受け取りつつ首を振る。
「いやあ、お前のことだからチョコぶっかけて、チョコレートは僕です♡とかやってくるんじゃねえかなって思ってたんだよ。」
「食べ物で遊ぶなって教えたの本線じゃないですか。」
やりませんよ…と呆れ混じりに言う北海道新幹線に、相変わらず変な所で真面目で律儀だと苦笑う。
ーー時空は易々と超えてくるくせになあ。
『気味が悪い、重い、要らん。』
1ヶ月程前に時空を超えてきたチョコは、幼馴染によってそう端的にバッサリと切り捨てられ、突き返されたのを思い出す。
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