春コミ新刊サンプル カツン、カツン、と廊下を歩く自分の向こう側から誰かが向かってくる気配に、シライは視線を向けた。その瞬間、まさに雷が落ちたかのような衝撃がシライを襲った。息も忘れ、自分の方へ向かってくる女性から視線が離せない。長い水色の髪に、右側につけた眼帯は巻戻士の証だ。かっちりとしたスーツではなく、柔らかな曲線を描くワンピースを着ているからきっと非番だったのだろう。
その姿に何か不審な点があったわけではない。ただ、ただ、突如被雷した衝撃に動けなくなった。
走ってもいないのにドクドクと高鳴る心拍数を抑えつけて、シライは呆然と呟いていた。
「かわいい……」
隣に浮かぶクロホンが「はぁ!?」と驚愕の声を上げたのも耳に入らないまま、シライはその女性を見つめた。その一瞬一瞬がスローモーションのように動き、蛍光灯に照らされた廊下が眩しいくらいに輝いて見える。
5094