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    moutairiku9

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    moutairiku9

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    起承転結の承の部分っぽい⏮のシラクロ🍠🐳小説です。
    CP小説なのに🐳くんがミリも出てこないんですけど、私はこういう話が好きです。

    リメンバー・リセット・リトライ_2 腹一杯に詰め込まれた味噌汁を撫でさすりながら、シライは本部の廊下をふらふらと歩く。
    「ウプ……本当に限界まで味噌汁を食わせる奴がいるかよ」 
     それでも好きな子のあーんという欲望に負けて限界まで味噌汁を飲んだのは自分自身だ。自業自得としか言いようがない。
     二日酔いとは違う理由でグロッキーになりながらも、意識をしなければ自然と頬が上がってしまいそうになる。
     あのままクロノに付きっきりで看病をされていたらクロホンに通報を頼むところだった。なんとか、二日酔いは治ったと言いくるめて追い出すことができたが、勘違いが加速しかねなかった。本当に危うかった。
     優秀で頼もしい相棒ならば、その前に通報してくれそうだが。
     
     そんなことをツラツラと考えながら、シライは本部の廊下を歩く。
     片手に握っている有給申請の紙を見やりながら、シライはため息をついた。
     体調不良で有給を取ったが、口頭での申請のみだった為、正式な書類を事務室に持って行かなくてはならない。それは別にいい。次の出勤日に持って行っても問題はないのだが、どうせ休んだところでやることはない。それよりも、早めに出して欲しいと言われている書類を提出する方が降ってわいた休日の時間潰しになる。
     シライは有能な巻戻士社会人であった為に、一日休んだくらいで他の業務に支障が出るほど仕事を溜めていない。むしろ、普段からもっと休めとせっつかれているくらいだった。以前有給を申請した際にも、事務員から「これで有休消化率が上がる!」と感涙されたくらいだ。
     きっと、今回もそんな感じだろう。
     ……と、思っていたのだが。

     事務室に入った途端、バタバタバタと書類の山が雪崩れ落ちた。
    「あ、シ、シ、シライさん!?」
    「有給の申請に来たんだが……タイミング悪かったか?」
    慌てたように引き攣った笑みを浮かべる事務員が、ブンブンと勢いよく首を横に振る。その勢いはまさに高速と言わんばかりに早く、残像が見えた。
    ──NOと言うためだけに脳を揺らしすぎてはいないだろうか。
     シライが心配するのをよそに、事務員は愛想笑いを浮かべた。
    「あ、い、いえ!そんなことは〜……ははっ、それよりいいんですか?」
    「? なにがだ」
     要領の得ない事務員の質問にシライは首を傾げた。それに驚いたのは事務員の方だった。
    「え!? いや、その……ホラ!折角の休みなんですから!書類の提出なんて明日でも良かったんですよ!朝イチで連絡くれてましたし!」
    「事前の申請じゃなかったんだ。早めに出した方がせいせいするだろ」
    「うん!? そ、そうですね!?」
     シライとしては、ごくたまに休む時と同じ感覚でいたが、何か事務員の様子がおかしい。こいつも体調が悪いんじゃないか? と心配になって辺りを見渡すと、事務室にいた他の職員はシライの視線からさっと目を逸らした。
     どこからどう見ても怪しい態度だ。何かがあることは間違いないだろう。だが、ここまでバレバレだと、違反行為だの不正だのを疑うのがバカらしくなる。
     ──何か俺にドッキリでも仕掛けようとしていたのか? こういうのを察しても目を瞑るのが大人の対応ってやつか……
     そう判断したシライは奇妙な対応を気にした風もなく手にしていた書類を事務員に差し出した。
    「申請書だ。確認してくれ。不備があって迷惑をかけたら不憫だからな」
    「あ、アハハ……心遣いありがとうございます」
     一瞬で白けた空気に、事務員は乾いた笑い声を上げる。そのまま、ブリキのようにぎこちない動きで書類を受け取り視線を落とした。
     その間に事務室の様子を伺うが、やはり誰もシライと視線を合わそうとしない。だが、シライが気がついている事に気がついていないのだろう。好奇の視線がチラホラと向けられていることは確かだった。
    ──ドッキリを仕掛けるだけでこんなに見られることってあるか?
     僅かに生まれた疑問に思考を向けようとした瞬間、事務員は書類に目を通し終わったのか、シライに顔を向けた。
    「流石シライさんですね。不備はないです」
     話が終わることに安心したのだろう。事務員は露骨にホッと息を吐きながら、歪な営業スマイルを浮かべた。
    「じゃ、じゃあ受け取りましたんで……末永くお幸せに……」
    「は?」
    思わず言ったのだろう。しまったと言わんばかりにあ、と口の開いた顔を真っ直ぐに見ながらシライは思い切り首を傾げた。
    「あっ! コラッ! この馬鹿ッ!」
    「あ、あっ! あっ!」
     他の事務員が慌てて対応していた事務員の頭を思い切り叩くが、シライにはいまいちの要領が掴めずにてんやわんやとしてる事務員たちを眺めた。
    「おい、さっきのって……」
    「あ! 本当に気にしないでください! ハハハ! プライベートとか俺達首突っ込まないんで!」
    「そうですそうです! そうだ! シライさん折角の休暇を取ったんですからこのままどこか遊びに行ったらどうですか!? 時間がもったいないですよ!」
    「え? あ、おい!」
     背中をグイグイと押され、わけも分からずそのまま部屋を追い出される。
     ピシャリ、と閉じられたドアにシライはしばし呆然とした。
    「何だったんだ?」
     釈然としない思いを抱えながらも、用事はもう終わっている。このまま扉の前にいたところで邪魔になるだけだ。そう思い踵を返しそうとしたところで、シライはわずかに動きを止めた。
    ──見られている。
     だが、それは一人や二人ではない。それは周囲の人間すべてからだった。それだけならばいつもと変わらない。むしろ慣れたものであったのだが、その視線の種類が決定的に違った。
     敵意ならまだよかった。叩きのめせばいい。尊敬の念ならうんざりするほど浴びてきた。
     だが、そのどちらでもない困惑と疑念としか言いようのない奇妙な視線。それを平静な態度を崩さない様に受け止めながら、シライは内心で首を傾げた。しかも、視線を追おうとすると皆一様にサッと顔を逸らす。
     自分の知らない間にいったいに何があったのだろうか。中には親の仇の如く睨みつけてくる女性巻戻士もいる。
     もしや、前後不覚になるまで飲んだ昨日の飲み会で何かやらかしてしまったのだろうか。確かに、前後不覚になるまで酔いつぶれたことは悪かったと思うが、それだけでここまで向けられる視線の種類が変わるとは思えない。何かあると自分の中の勘が告げていた。だが、そうだとしてもいったい何が原因だったのか見当もつかない。
    その時だ。廊下で目立つ赤髪を見つけたのは。

    「アカバ、奇遇だな」
     背後からポンと肩を叩けば、キュウリを背後に置かれた猫のようにアカバは飛び上がった。
    「シ、シシシシシシライさん!?」
     まるで幽霊に話しかけられたかのようにぎこちなくこちらを振り向くアカバに、シライはピンときた。
    ──こいつ、何か知っているな
     逃がさんとばかりに肩を掴んだ手に力を込めながら、シライは笑みを浮かべた。精一杯の爽やかさを込めたつもりの笑顔にアカバは何故か口をパクパクと鯉のように開閉している。
     問い詰めようとシライがさらに一歩、足を踏み出せば、アカバは口端を引きつらせた。
    「おっ! お、お……!」
    「お…?」
     喉に突っかかったように単語を繰り返すアカバを不自然に思い、問い詰めようとシライが口を開こうとした時だ。
    「おめでとうございまーーーーーーーす!!」
     シライに対して直角に頭を下げた後、突如アカバはそう叫びながら廊下を走り去った。
    「……はぁ?」
     アカバの謎の言動に思わず周囲を見渡すが、皆一様にシライと視線が合う前にサッと逸らされる。
     事務員だけでなく、アカバからも向けられた謎の祝福。自分がいったい何をやったというのだろうか。そもそも祝われるようなことがあったか?と、シライは首を傾げた。
     昨日までは普通だったはずだ。何事もなく、気まずそうな雰囲気を出されたこともないし、意味の分からない祝辞を述べられたこともなければ、女性巻戻士に何故が冷たい目線で睨みつけられるようなことをした覚えもない。
     ……そう、昨日までは
     ふと、そこでシライは記憶に残る酒の苦みを思い出した。
    ──まさか……まさか、まさか?
     アルコールのせいか、ところどころ霞がかかったように思い出せないが、そういえば昨日の飲み会の途中でクロノをいた気がする。
     そこからさらに思い出そうとすると記憶が怪しいが何かがあったのは間違いないだろう。
     だが、何かがあったとしてもそんな簡単にクロノが態度を変えるだろうか。
     それこそ、天変地異が起こるほど関係性を変えてしまうような衝撃的なことが起きない限りは。
    ──ひょっとして……いや、そんなこと……
     グルグルと脳みそを回る疑念にシライは愕然とした。
     自分からそんな発想が出るとは思わなかったし、もしその考えが正解だった場合だ。それは、懲戒免職で済むのか?
     理性がそれだけはないと叫んでいるが、一度浮かんでしまった考えは中々消えることはなかった。いや、むしろ今の現状を考えるとそれしかないように思えてくる。
     背中にヒヤリと嫌な冷や汗が伝って落ちた。
    ──もしかして……俺はクロノのことを襲ってしまったんじゃないか?
     
     …………クロノは赤くうるんだ目で俺を見上げた。
    「お、おじさん……俺、始めてだから……」
    「全部俺に任せておけ」
     いまだ成長途中の少年らしく、丸みを帯びた顎を掴み、くいっと持ち上げる俺。
     空いた片方の手でボタンを一つ、二つと外し、はだけた服の裾から手を差し込む。
     するりと腹から撫で上げた手をクロノの心臓の上へ滑らせれば、ドクン、ドクンと常よりも大きな鼓動が聞こえてきた。
     そのまま見つめ合う二人。
    シライおじさん、俺……もう……!」
     そして情欲に濡れた二人の距離はドンドンと縮まり……

     パァン、と自身の頬を凄まじい勢いで殴りつけた衝撃で、シライは正気に戻った。
    (あ、あ、危ねぇ――――!!)
     昨今、男子中学生でもしない好きな子クロノと自分のめくるめく薔薇色世界の妄想に、シライは頭を抱えた。
     冷静と理性が全力でそれ以上はいけないと自身を引き留めなければ、戻ってこれたか一瞬危うかった。
     冷静に考えてみれば現実でやろうものなら、問題しかない行動だ。児ポ法、未成年淫行、青少年健全育成条例違反の三単語がシライの脳をグルグルと回る。
     いくら好きでも、例え合意だとしても流石に未成年に手を出すのは曲がりなりにも警察を冠する組織の一員として不味い。非常に、とんでもなく、この上なく、不味い行動だ。しかも、自身の弟子に対してとなると輪をかけて不味い。汚職だの情報流出だの目じゃない程それだけはやってはいけない行動だ。いや、汚職もスパイ行為もやっていたら問題だが。
    「いや……ねぇよな……うん。ないない、それだけはない」
    ブンブンと首を振るシライの脳裏に、ふと、今朝のクロノの姿が思い出された。
    赤く染まった頬に潤んだ瞳、そして自分を呼ぶ声。いつもと確実に違うどこか熱を孕んだ声で『シライおじさん』と呼ぶ声。
    「ない……よな?」
    自分に言い聞かせるように呟きながら、シライは頬の痛みだけではない衝撃でフラフラと歩きだした。
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