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    moutairiku9

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    moutairiku9

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    起承転結の起の部分しか描き終わってない⏮のシラクロ🍠🐳小説です。
    全文支部に公開予定だけど、本に出来そうな文量になりそうなので本を作るかもしれん……

    リメンバー・リセット・リトライ ガンガンと頭が痛む。
     体に残ったアルコールの気配はまだ消えず、シライを苦しめた。
     大人の世界の付き合いというものは大層面倒なもので。昨夜は行きたくもない会合に付き合わされたかと思えば、強引に飲み屋に引き摺り込まれてしまい。気がつけば愚痴を肴に飲めや騒げやのどんちゃん騒ぎの中にいた。
     例え完全なる内輪の中だろうと、判断力を鈍らせるアルコールは気軽に摂取しないことにしていたのだ。それだというのに、渡された飲み物に苦味が混じっていたのに気がついた途端、アレよアレよという間に一口呑んだんだからと酒を注がれ押し付けられ飲まされ……気がつけば完全に意識を失っていた。

     舌に残るアルコールの苦味よりも苦い記憶に、シライは頭痛によるものだけはない痛みに眉間に皺を寄せた。
    「なんだシライ、二日酔いか?」
     眼前に浮かんだ相棒の姿に目を細めながら、シライは延びたことを上げる。
    「クロホンか…」
     カーテンの隙間から覗く朝日から背けるように緩慢な動作で寝返りをうつ。そんな僅かな身動きすら酷く億劫そうなシライをクロホンは心配そうに覗き込んだ。
    「お前が寒いギャグの一つも言わないだなんて絶不調だな」
    「機械に心配される機会があるなんてな」
    「熱でもあるんじゃないのか?」
     本気で身を案じる言葉と共に、医者呼ぶか?と医療機関へのコール画面をクロホンは表示させる。ひらひらと適当に手を振りながら「ただの二日酔いに医者はいらねぇだろ」とシライは拒絶した。尚も言い募ろうとするクロホンを遮るように「それより…」とシライは言葉を続ける。
    「ペットボトルの水とかねえのか?」
    「お前の部屋にそんな意識の高い物あんのか?それにあったとしてもアームがついてないから持ってこれねえよ」
    「あ~……そういえばそうだったな。自分で取りに行くしかねえか」
     そう言いながらもだらりと気力の抜けた四肢に力を入れる素振りもなく。シライは、ベッドの上から微塵も動こうとしなかった。
    「面倒がっていないで、とっとと起きろよ」
    「おいおい、随分と辛辣だな」
    「おれは止めたのに途中から調子乗って酒飲みまくってたのは誰だったか忘れたんじゃねえよな」
    「だとしても、もう少し優しくしてくれてもいいだろ。お前の声は頭に響く……」
    「なんだとぉ!?」
    「あーあ。こういう時こそ、甲斐甲斐しくしじみの味噌汁を作ってくれるような人が必要だっていうのにな」
     例えば……思わず脳裏に思い浮かんだ青髪の少年ならばきっと、心配そうにこちらを伺いながら慣れない手つきでも作ってくれるだろう。それに、きっとアイツならば聞きかじりの知識だけで別の味噌汁を作り、後から俺の言葉にキョトンとしながら気の抜けた顔を浮かべるのだ。
    「え、二日酔いに効くのはアサリじゃないのか?」
    「アサリも二日酔いに効果はあるが、ここで重要なのは貝じゃなく甲斐甲斐しく世話を焼いてくれることだ。ようは気持ちだな」
    「そっか。じゃあ無駄にならなくてよかった」
     なんて会話をしながら、アイツは味噌汁を差し出してくるのだろう。そう、今みたいに…………今みたいに?
     ベッドのすぐ横に立った人の気配に思わず目を見開き、その青が見えた瞬間。全身をゆっくりと循環していた血液が急速に駆け回る感覚とともに自身の状態も忘れシライは跳ね起きた。
    「クロノっ!?なんでお前ここに、っつ~~……!」
     身体と同じ様に跳ね上がるようにして喉奥から飛び出した言葉は、しかし、頭を締め付けるような鈍い痛みによって途切れた。
    シライおじさん、大丈夫?」
     そっと温かな掌で撫でられた背中の感触に、心臓がドキリと跳ねる。それと同時に、目の前のクロノが判断力の鈍った脳みそが生み出した幻覚ではないことを証明していた。
    「あ、あぁ、たいしたことない…?」
     あまりの事態に思わず言葉尻に疑問符をつけながら、シライは必死に冷静なフリをしていた。自身の妄想が具現化したかのような現状は、あまりにも都合が良すぎる。
     まだ夢を見ているんじゃないかと逃避しそうになる意識を躍起になりながら現実に戻す。
     そんなシライの様子をクロノはどこか心配そうに見つめた。
    「やっぱり、どこか調子悪いんじゃないか?」
    「アルコールはだいたい抜けてるし、ただの二日酔いだぜ。そんな心配する必要はねえよ」
     クロホンの辛辣な言葉に、クロノは「そうは言っても……」と言葉を切るとシライに覆いかぶさった。
    「え」
     突然の出来事に戸惑うシライを置いてけぼりにして、クロノは逆光を受けながらその顔を近づける。ギシ、と体重のかかったベッドが軋む音がやけに大きく響いた気がした。
    シライおじさん体調悪そうだし……」
     ペタリと額に当てられた手を挟んで、意志の強い黒い瞳がジッとこちらを見つめる。自分よりも余程温かい掌越しに二人の体温が混じり合う。
    「熱はないみたいだけど」
     息遣いが感じられるほど近くにいるクロノと視線が絡み合う。
    ともすれば勘違いしてしまいそうな自分を律しながら、シライは自分を落ち着かせるために目を閉じた。
     これは信頼を寄せるからこその無邪気な行動だ。そこには親愛の感情しか含まれていない。それ以外の何かがあってはいけないのだ。ましてや、自分が抱える感情をクロノに求めるなどもっての外。いつもと変わらない日常こそが正しいことだ。そう理解しながらも、こいつはきっと必要ならば自分以外にもこういうことをするのだという事実が重く圧し掛かった。
     結局、自分の感情は一方通行でしかないのだ。
     目を開けば、いつもと変わらない表情を浮かべたクロノがいる。
     そのはずだった。

    「お前な…」
     視界と共に言葉だけの文句を吐き出そうとした口は、中途半端に開かれたまま固まった。
     真っ赤に染められた頬に、先ほどまでの自分と同じように閉じられた瞳。つん、と突き出された唇の意味を思わず勘違いしそうになる。ただの瞬きの瞬間だったならば、何も問題なかった。だが、いくら待っても意思の強い瞳がこちらを見ることはない。
     ガツン、と脳味噌を殴られたかのような衝撃に、シライの時は固まった。
    (おいおい、コレって……いわゆるキス待ち顔ってやつじゃないのか!?嘘だろ!そんな夢みたいなことがあっていいのか!?いや、そういうコトを考えたことがないわけじゃないが付き合ってないのにキスってしていいのか!?いや、良くないだろ。こういうのはもっと段階を踏んで……でもキスできるチャンスだろコレ!?同意ってことじゃないのか!?キスしたい!!!!馬鹿野郎!犯罪だろうが!!!!)
     脳内で喧々轟々の大騒ぎをしながらも、シライの表情は一切崩れることなく冷静さを取り繕っていた。
     しかし、沈黙があまりにも長すぎたのか瞼がピクリと動き、ゆっくりと開かれる。
    シライおじさん?」
     パチリと開かれた視線にドギマギとしながら、シライはクロノの真意を覗き込むように目を見た。
     一秒、二秒、静かな部屋で時が進む。
     永遠にも思えた時間は、不意に逸らされた視線によって終わった。
     だが、クロノの背けた顔に朱が差しているのを見た瞬間。シライは再び、時が止まってしまったかのような錯覚に取りつかれた。
    「お酒で体調が悪くなるなら飲まなければいいのに」
    「……大人には色々あるんだよ」
     いつもより早口のクロノに、シライは何とか言葉を絞り出した。けれど、逸る鼓動はいつまでも五月蠅いくらいに飛び跳ねており、シライから冷静さを徐々に奪っていく。頭の中で現実的で、理性に即したもっともらしい理由を浮かべながら、自分にとって都合の良い答えばかりが心を占めていた。
     それもこれも、原因は今、目前にいる[[rb:少年> クロノ]]のせいだった。
     クロノの態度が今までと明らかに違う。
    ──これではまるで、脈があると言わんばかりではないか!

    「あ、味噌汁冷めちゃう。ほら、早く食べてよ」
     グルグルと渦巻く疑念を他所に、クロノはどこかわざとらしい仕草で、いつの間にかサイドテーブルに置いていた味噌汁を持ち上げこちらに差し出す。
     湯気が立ち昇る味噌汁は、見た目は普通の味噌汁と変わらない。だが、明らかに不揃いな具材をみれば、それが出来合いのものや、インスタントではないことを証明していた。
     あまりにも睨みつけるように味噌汁を眺めていたせいか、頭上から「シライおじさん……?」と気に掛けるクロノの言葉が振ってくる。
    「あ、いや……お前、料理なんてできたんだな」
    「そ、それは……」
     誤魔化すように浮かべた質問に、クロノはピクリと肩を動かした。
    「何かあったのか……?」
    「あ、いや……たいしたことじゃないんだけど、何回か失敗しちゃって……作り直すより味を調整した方がいいてスマホンがいうから水を注ぎ足して行ったらさ……」
    「おう」
     話のオチがもうわかりながらも、シライはジッとクロノの話の続きを待った。
    「かなり作りすぎちゃって……鍋いっぱいにあるんだ」
    「はぁ……食べるの手伝えよ」
     イタズラをした子供でもないのに、クロノはバツの悪い顔を浮かべている。
     それに仕方ないやつだと思いながら、シライは無意識に笑みを浮かべていた。
     クロノの様子がおかしいのは気にかかるが、もしかしたら抜けきっていない酒のせいで思い込みが深くなっているのかもしれない。
     今は好きな人が不器用ながらも自分のために作ってくれた料理の味を噛み締めるべきだろう。
    「そ、そっか……じゃあ、シライおじさん
    「なんだ?」
     だから、もじもじとしながらもこちらを伺うクロノにも、たいして身構えることなくいたのだ。
    「あ、あーん」
     そういって味噌汁の具材を箸で差し出すクロノに、シライは三度固まった。
     照れながらも恋人のように手ずから差し出す破壊力のかくたるや。
     やっぱり、どこかおかしい!
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